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俊英・藤田貴大によるテラヤマワールド、再び

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舞台『書を捨てよ町へ出よう』が10月7日(日)に東京芸術劇場 シアターイーストで開幕する。寺山修司の代表作を、マームとジプシー主宰の藤田貴大が2015年の初演に続いて再び今によみがえらせる。

チャプターごとに異なる世界観を広げながら、全体でひとつの物語を構築していく手法。本人と役を行き来する役者たち。初演は虚構と現実の入り混じったつくりそれ自体によって、寺山修司という存在が表現されていたかのような作品だった。

また初演時、話題となったのは主人公を初舞台となる村上虹郎が演じたこと。今回の再演で主役に抜擢されたのは、モデルの佐藤緋美。浅野忠信の息子である彼は、舞台どころか演技初挑戦となる。鬱屈を抱えた「私」をまっさらな佐藤がどのように演じるのか、期待が募る。

映像出演として、藤田との親交も深い又吉直樹、穂村弘に加え、新たに詩人の佐々木英明の名もクレジットされている。演劇実験室天井桟敷で活躍し、寺山自ら手掛けた映画版『書を捨てよ〜』の「私」を演じた佐々木が加わることで、今作は寺山や1970年代という時代そのものとより深く、強くつながることになりそうだ。藤田が再演に寄せて語っている「あたらしい、というのは、じつは、もともとあるものがなくては、あたらしくないのではないか」という言葉の「もともとあるもの」として、佐々木の存在が大きく寄与するに違いない。

2015年以降、藤田は東京芸術劇場 プレイハウスで上演した『ロミオとジュリエット』や福島の高校生たちとつくる『タイムライン』など、さまざまな創作を重ねてきた。その間には共作を予定していた蜷川幸雄との別れもあった。この3年を経て、2018年の『書を捨てよ町へ出よう』はどんなかたちを私たちに見せてくれるだろうか。

公演は10月21日(日)まで。

文: 釣木文恵