水木しげるの世界観を丸ごと舞台へ。『ゲゲゲの先生へ』開幕
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『ゲゲゲの先生へ』が10月8日(月)、東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕する。
原作は水木しげる ──といっても、特定の作品を舞台化するわけではない。水木作品全体の“世界観”をもとに、オリジナルのストーリーが展開する。主宰するイキウメの作品では日常と地続きのSFを生み出す一方、〈奇ッ怪〉シリーズでは小泉八雲『怪談』や柳田国男『遠野物語』を題材に演劇作品を立ち上げてきた前川。原作の空気をすくいとり、その中で新しい物語を紡ぎ出すのは彼の得意とするところだ。
主演の佐々木蔵之介と前川はこれまでも5度にわたってともに作品を作り上げてきた仲。前川の並々ならぬ水木作品への思い入れも、佐々木は前々から理解していたという。今回、“平成60年”という少し先の未来の日本を舞台に佐々木が演じるのはあのねずみ男をモチーフとした"半妖怪"、根津。さらに松雪泰子、白石加代子、手塚とおる、池谷のぶえら手練れのキャストが人ならざる者を演じるとなれば、それだけでも見る価値がありそうだ。
現実にはありえないことを題材にして、いまを生きる私たちが忘れてしまっていること、目をそらしていることを提示し続けてきた前川。彼が満を持してもっとも影響を受けたクリエイターである水木しげるに挑むこの機会を、見逃す手はない。
公演は10月21日(日)まで。
文: 釣木文恵