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サザン、安室奈美恵やSMAPを彷彿とさせる新曲「壮年JUMP」が大反響 歌詞にある普遍性を考察

音楽

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リアルサウンド

 この夏、サザンオールスターズはデビュー40週年を迎えた。大きな節目ということもあり、彼らの活動も非常に活発になっている。8月1日には、彼らの活動期間の半分であるこの20年間の軌跡をまとめたプレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』(海の“オヤー”)のリリースが決まり、来春にはドームツアーも控えているというから、ファンにとってはとにかく嬉しい1年になるはずだ。

 こういった様々な活動の中でも、やはりいちばんの話題となっているのが新曲だ。『海のOh, Yeah!!』にも収録される予定ではあるが、「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」と「壮年JUMP」という2曲が発表され、早くも大きな反響を呼んでいる。

 「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」は、6月15日から公開が始まった映画『空飛ぶタイヤ』の主題歌であり、同日に初の試みとして配信限定でリリースされた。映画は池井戸潤原作の社会派エンタテインメントともいうべき内容で、この主題歌もサザンオールスターズの楽曲の中でも深みのあるテイストだ。映画は大ヒット公開中であるが、この楽曲はまた違う角度で独り歩きし始めている。というのも、歌詞が映画を超越した現代社会の闇や苦悩を描いているからだ。特に、先日アニメで描かれたミュージックビデオが公開されてから、さらに反響が大きくなっている。

 とくに、〈自分のために人を蹴落として 成り上がる事が人生さ〉や、〈しんどいね生存競争(いきていくの)は 酔いどれ涙で夜が明ける〉といった歌詞に、自身を重ね合わせるリスナーが非常に多いようだ。企業戦士や社内派閥なんていう言葉がいまだに使われ、ブラック企業が次々と明るみになり、働き方改革関連法案が国会で可決してしまうというご時世だけに、現代社会は疑心暗鬼の塊。サザンオールスターズのコアファンは勝手な推測ながら40代以上も非常に多いだろうということもあって、この歌詞はダイレクトに刺さるのは当然だろう。しかし、映画やラジオ、歌番組からの流れでこの曲を聴いた就職活動中の学生や新入社員からの反響も、非常に大きいのには驚かされる。YouTubeのコメント欄を見るだけでも、それは伝わってくるはずだ。ここまで伝播するという状況を見る限り、これまでにも数々の社会的なメッセージを発信してきた彼らの真骨頂といえる名曲なのは間違いない。

 一方で、「壮年JUMP」の方もまた違う角度から話題が一気に沸騰中である。この曲は、桑田佳祐自ら「太川陽介の『Lui-Lui』みたいでしょ」というように、いわゆるアイドル賛歌のような内容になっている。三ツ矢サイダーのタイアップ曲ということもあって、爽やかな夏らしいサウンドも魅力だ。いかにも彼ららしいポップな一曲ではあるのだが、このアイドルとは誰なのかというのは、様々な憶測を呼んでいる。歌詞を見る限りでは、なかなかその答えは出しづらい。しかし、〈旅立ちの日さよならステージよ 青春の陽は燃え尽きたんだ〉や、〈夢とロマンのスーパー・ヒーローは 未来のドアを開け去ってった〉といったフレーズからは、現役を去った、もしくはこの世を去ったアイドルに向けて歌っているようにも捉えられる。

 このような歌詞から真っ先に想像するのは、5月16日に逝去した西城秀樹だ。実は、桑田佳祐と西城秀樹は同い年で、1995年のサザンオールスターズのライブに、西城秀樹がサプライズ出演したこともある。桑田は自身のラジオ番組でも追悼のメッセージを語っていたし、楽曲制作のタイミングも考えると、ここでは「アイドル=西城秀樹」と推測するのは自然なことだろう。〈虎や狼がブルーになって悲しい時は〉なんていうフレーズにも、西城秀樹のイメージが付きまとう。

 しかし、それとは別に、安室奈美恵説も急浮上している。これは実際に、桑田佳祐がテレビ番組で安室奈美恵の引退についてコメントしたことが理由だし、事実インスパイアされたことは間違いないだろう。〈夢とロマンのスーパー・ヒーローは〉という歌詞の「ヒーロー」も、安室の「Hero」とかけているという推測も見受けられる。

 ただ、だからといって西城秀樹や安室奈美恵だけに歌っていると考えるのも早計だ。この曲のAメロはジョン・レノンを思わせるし、〈未来のドアを開け去ってった〉という表現にはデヴィッド・ボウイのイメージを重ねることもできる。〈闘魂の炎〉はアントニオ猪木を彷彿とさせるし、〈なんてったって最強なのはアイドル〉といえば、キョンキョンこと小泉今日子のキャッチフレーズそのままだ。他にも、元SMAPの3人、関ジャニ∞の渋谷すばる、AKB48の渡辺麻友など様々な憶測が飛び交っており、リスナーの受け取り方次第で多様な解釈ができるのも面白い。それほどに普遍性のある傑作が誕生したということだろう。

 デビューから40年経った今もなお、これほどまでに話題を作り、社会に影響力を持つ楽曲を発表するサザンオールスターズの力は凄まじい。これから『海のOh, Yeah!!』のリリース、そして大規模なツアーへと続いていくが、まだまだ新たなトピックを提供してくれることだろう。今後の展開が楽しみであり、その期待を煽るのが、「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」と「壮年JUMP」という新曲なのである。(栗本 斉)