サザンオールスターズ、最も輝かしくポップな新曲誕生! 本日テレビ初披露「壮年JUMP」の魅力
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デビュー40周年を迎え、再び音楽シーンの最前線に舞い戻ってきたサザンオールスターズ。8月1日にはプレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』がリリースされる。日本のポップス史上に燦然と輝く「TSUNAMI」を筆頭に数々の名曲を収録した一枚なのであるが、この記事で書こうと思っているのはそれより何より「新曲が最高!」ということだ。
6月25日、26日にはキックオフライブ『ちょっとエッチなラララのおじさん』がNHKホールで開催された。筆者も会場に足を運んだのだが、そこで実感したのも同じことだった。40周年の感謝はキーワードとしてあったけれど、ただファンと懐かしさを共有するような場ではなかった。むしろバンドがこの先に突き進むエネルギーを見せつけるようなステージだった。
その象徴が、6月15日に配信限定シングルとしてリリースされた3年ぶりの新曲「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」。池井戸潤原作の映画『空飛ぶタイヤ』主題歌として書き下ろされただけあって、企業社会に翻弄されながらも自らの意志を貫くサラリーマンの熱いエモーションが胸に響く一曲だ。この曲はライブでもビジョンに歌詞を映し出し、スーツ姿のダンサーたちをバックに従えて披露。沢山のクライマックスがあったライブの中でも強く印象に残るシーンのひとつになっていた。
そして、さらなる驚きをもたらしてくれたのが新曲「壮年JUMP」だった。
「三ツ矢サイダー2018」CMソングとしてもオンエアされているこの曲。CMにはメンバー自身も出演している。高原のコテージにリハーサル合宿に訪れたサザンのメンバーが新曲をセッションするという内容だ。
この曲は本当にすごい。CMで公開されている30秒の尺だけでも「いい曲!」と直感的に思ったが、実はフル尺で聴くと、その奥に込められたメッセージが伝わってくる。そして震撼する。そういう二重の仕掛けになっている。先日桑田佳祐がMCを務める『ニッポンハム ムーンライト・ミーティング 桑田佳祐のやさしい夜遊び』(JFN系列38局ネット)の6月30日の放送で、桑田自身による歌詞の朗読と共にこの曲が初オンエアされたのだが、それを聴いて心底感じ入ってしまった。
曲の歌い出しは〈いろんな歌 ありがとう ステージで〉。描かれるのは数々のスターたちの輝かしい姿、そして〈夢とロマンのスーパー・ヒーローは 未来のドアを開け去ってった〉という別れの情景だ。さらに〈こんなにお別れが辛いとは 僕はひとりで歩くのさ〉と、惜別の念を抱えながらも自分自身は歩みをとめない決意表明の言葉が歌われる。
サビでは〈誰にだって胸トキメキのアイドル、アイドル〉〈ブルーになって悲しい時は シュワーっとサイダー 闘魂の炎(ひ)が燃え上がる〉というフレーズが歌われる。ここがCMでもフィーチャーされているので、30秒だけ聴いたリスナーは「サザンらしくキャッチーで清々しいポップソング」と受け取るだろう。それはそれで全く間違ってない。しかしフル尺を聴くと、この曲が「避けられない悲しい別れと、それでもなお自らを奮い立たせる情熱」を描いた曲であることが伝わってくる。直接的に誰かを指し示すような言葉はないが、聴いた人はきっと、第一線から退いてしまった、もしくは亡くなってしまった自分にとっての大事なアイドルやスターを思い浮かべるだろう。
曲調もとても印象的だ。ベースになっているのはオールディーズのアメリカンポップス。エレクトリックピアノを主体にしたアレンジで、Aメロはやさしく語りかけるように歌う。淋しげなムードのBメロから、サイダーの泡が一気に弾けるようにサビで明るくなる。コード進行はオーセンティックなものだけれど、ここのポイントに転調が仕込まれているのが心憎い。
そういうところから「壮年JUMP」というこの曲のタイトルにもすごく深いものを感じてしまう。もちろん『少年ジャンプ』に掛けたダジャレだろう。でも「しょ」と「そ」の一文字が違うだけで、指し示すものは大きく異なる。きっと、タイトルの言葉は曲が伝えてくる「それでもなお自らを奮い立たせる情熱」の象徴なのだろう。
さらに深読みを続ければ、この曲が三ツ矢サイダーのCMソングであるということにも、不思議な巡り合わせを感じてしまう。これまで数々の名曲を生んできた三ツ矢サイダーのCMソングだが、なかでも有名なのは大滝詠一が手掛けた「サイダー’73」。コマーシャルソングの歴史に残るこの一曲では、シュガーベイブのデビュー前、まだ無名だった時代の山下達郎と大貫妙子がコーラスに参加している。この「サイダー’73」も「壮年JUMP」もアメリカンポップスを軸にした清涼感たっぷりのポップソングで、どちらも〈サイダー〉と歌うハーモニーがキモになっている。
7月7日に、サザンオールスターズは夏の大型音楽特番『THE MUSIC DAY 2018 ~伝えたい歌~』(日本テレビ系)に出演する。そこで「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」と「壮年JUMP」の2曲の最新曲がテレビ初披露となる。サザン40周年イヤーとして初のテレビ出演となるこのタイミングでも、この2曲は大きな反響を呼ぶだろう。
「懐かしのあの曲」ではなく「まっさらな新曲」が最も輝かしく、最も話題を呼び、最もポップである。そういうバンドが40周年のアニバーサリーを迎えている。そのことは本当に奇跡的なんじゃないか、と思うのだ。(柴 那典)