『獣になれない私たち』『SUITS/スーツ』『下町ロケット』……秋ドラマ、注目必至の4作品
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今年も残すところ、あと3か月。夏ドラマもあっという間に最終回を迎え、いよいよ10月から新ドラマがスタートする。その中から、話題となりそうな4作品をピックアップ。あらすじと注目ポイントを一気にチェックしよう。
参考:脚本家・野木亜紀子は“小さな声”に耳を傾ける ドラマをヒットさせる、視線と言葉の鋭さ
■『SUITS/スーツ』(10月8日(月)21:00スタート/フジテレビ系)
フジテレビで再放送された『東京ラブストーリー』が、27年の時を経た今も注目を集めた。鈴木保奈美と織田裕二という組み合わせで、一時代を代表するドラマになった同作であるが、その共演を平成の終わりに再び目にすることができる。
10月8日からスタートする『SUITS/スーツ』は、アメリカで大ヒットを収めた同名ドラマを原作に、日本版として放送される。主演の織田裕二が務める甲斐正午は、東京大学、ハーバード大学で学んだ経験のある超エリート弁護士。ただ、勝つためなら法に触れるギリギリのこともいとわず、敏腕でありながらやや傲慢であるという一面を持つ。一方、正午のバディは、中島裕翔演じる鈴木大貴だ。驚異的な記憶力を持ちながらも、フリーター生活を続けていた彼は、ある事情がきっかけで正午と出会い、2人で様々な訴訟に挑んでいくことになる。
『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)が放送され、安定的な視聴率を残した前回の月9枠。『コンフィデンスマンJP』や今夏の『絶対零度』に続き、再び、恋愛要素が前面には出てこない作品が月9で放送されることになる。かつてはそれこそ、『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』『ロングバケーション』といった恋愛ドラマが放送された月9枠だが、平成という時代を通じて、カラーが着実に変わってきていることがうかがえる。もちろんこうした流れは最近になって始まったわけではなく、『HERO』や『ガリレオ』を生んだ本枠であるものの、昨今の場合では特に王道の恋愛ドラマではないジャンルの方が、より多くの視聴者を引きつけることができるのかもしれない。
■『獣になれない私たち』(10月10日(水)22:00スタート/日本テレビ系)
『重版出来』『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』(いずれも、TBS系)で知られる野木亜紀子が描く『獣になれない私たち』は、新垣結衣主演のラブコメディ作品。本能に身を任せて、野獣のような恋愛ができずにいる大人の男女の姿が、リアルに描かれる。ECサイトの制作会社に勤める深海晶(新垣結衣)は、周りの人々に気を遣いすぎることで、日々心身をすり減らす生活を送っていた。また、松田龍平演じる会計士の根元恒星も、人当たりが良いことで周囲からは好かれているものの、それはあくまで適当に取り繕っているだけのことだった。そんな2人がある日の仕事終わりにクラフトビールバーで出会ったことから、不思議な物語が始まっていく。
野木亜紀子がドラマの中に映し出す人々は、しばしば、現代を生きる私たちにも当てはまる悩みや、生きづらさ、あるいはわだかまりを持っていることが多い。例えば、『アンナチュラル』の中で言えば、解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)の口から、切実に、時にとめどなく溢れてくる言葉には異様な説得力があった。それは単に、ブラック企業、あるいは学校でのいじめといった要素が作中に取り入れられたからではない。私たちが普段、“見えていないもの”、あるいは“見たくないもの”に光を当て問いかける、野木作品の真髄である。今回の『獣になれない私たち』もまた、別のアプローチで“私たち”の物語が描かれるのではないか。
■ 『相棒 season17』(10月17日(月)21:00スタート/テレビ朝日系)
「暇か?」と言いながら、角田(山西惇)が特命係を訪れるとき。「警部殿!」と怒鳴って、伊丹(川平和久)が現場に訪れた右京(水谷豊)を叱責するとき。あるいは、「細かいことが気になるのが、僕の悪い癖」と右京が捜査で些細なことを尋ねるとき。
常連キャラクターのこんなシーンを観るたびに、相棒ファンはどこかホッと(?)するのではないか。いよいよ10月から、再び“相棒の季節”が始まろうとしている。今回で17回目のシーズンとなる本作は、4シーズン目の冠城亘(反町隆史)が右京の相棒を引き続き務めるほか、“3人目の特命係”として浅利陽介演じる青木年男が加わる。
さて、ここで青木が加わる経緯を復習しておこう。『相棒 season16』の最終話では、週刊誌記者(芦名星)がエスカレーターから何者かに突き落とされる事件が発生。容疑者として挙げられたのは、刑事部長の内村(片桐竜次)、警視庁広報課課長の社(仲間由紀恵)といった異例の面々。この話のタイトルで言うところの“アンユージュアル・サスペクツ”であった。右京らの捜査の結果、その中の1人に挙げられていた青木が犯人であると判明。ところが、警視庁副総監・衣笠(大杉漣)の“配慮”の結果、特命係への異動を処分とすることで落着した。
シーズン17でも、伊丹や内村といった“相棒ファミリー”は引き続き登場するほか、初回には大物政治家役として柄本明が出演。シーズンを増すごとに、壮大になっていく相棒ワールドでは、ふとしたきっかけで起こった殺人事件から、政治を巻き込む大がかりな事件に至るまで幅広く網羅する。右京の推理が冴え渡るのが待ち遠しい。
■『下町ロケット』(10月14日(日)21:00スタート/TBS系)
『半沢直樹』に始まり、『ルーズヴェルト・ゲーム』『陸王』など多くの池井戸作品がヒットしてきたTBSの日曜劇場であるが、2015年放送の続編として、『下町ロケット』が本枠に帰ってくる。主人公の佃製作所の経営者を阿部寛が演じ、土屋太鳳、竹内涼真、安田顕、立川談春、吉川晃司、杉良太郎らが引き続き出演。また、ベンチャー企業・ギアゴーストの社長役で尾上菊之助、同社副社長役でイモトアヤコが出演するほか、帝国重工の次期社長候補・的場役を神田正輝が務める。さらに、連続ドラマでは、NHKの連続テレビ小説『君の名は』以来27年ぶりに、古舘伊知郎がライバル企業の社長役を演じる。
大企業・帝国重工とともに、ロケットのプロジェクトに関わっていた佃製作所であったが、ある日、帝国重工の財前(吉川晃司)から次回でロケット開発計画は終わるかも知れないと告げられる。さらに、大口の農機具メーカーから取引削減を告げられるなど、佃製作所に暗雲が立ち込める。こうした危機的状況の中、どのように佃製作所が這い上がっていくのか。前作以上に波乱のストーリーが描かれていく。
池井戸作品に限らず、『小さな巨人』『ブラックペアン』など急転直下の逆転劇に胸を踊らすような作品が、近年の日曜劇場で好評を博してきた。もちろん、昨今の日曜劇場がこうしたジャンルの作品しかないというわけではないが、近年は『下町ロケット』のような作品は比較的多くの視聴者を獲得しているようだ。前回の『下町ロケット』も高視聴率を記録したように、平成という時代を通じて、日曜劇場のカラーも少しずつ変化を見せ始めているのかもしれない。日曜の夜ということもあり、きっと子供からお年寄りまで含めた家族で本作を観ることも少なくないはずだ。世代を問わず胸を熱くするようなドラマとして、今年最後の日曜劇場を盛り上げてほしい。(國重駿平)