ニューロティカ、通算2000回目のライブへ向け猛進中! 氣志團との“濃厚な愛に満ちた夜”
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2018年10月20日にZepp Tokyoにて通算2000回目となるライブ『Zepp de NEW ROTE’KA 〜祝2000本達成ライブ〜』を開催するニューロティカが、2000本目に向けてのカウントダウン『Way to 2000 2 MAN SHOW』と銘打った2マンライブ。これまで、フラワーカンパニーズ、人間椅子、グループ魂、四星球、と強者曲者揃いで、笑いあり、涙ありの熱いライブを繰り広げられてきた。
そして、最終日のお相手は氣志團だ。高校時代、コピーバンド経験もあるというニューロティカリスペクトの彼ら。イベントでの競演、トリビュートアルバムなど、その親交の深さは両ファンも知るところ。通算1998回目、2マンライブ最終日に相応しい相手である。
9月24日、渋谷TSUTAYA O-WEST。開演前のステージは黒づくめの4人の男たちに占拠されていたーー。
「俺たちがパンク界を悪の黒に染めてやる!」
「黒が好きなんだよ」と毎朝ブラックコーヒーを飲んでいるブラックアツシ率いる“ブラックロティカ”だ。「お前、白いTシャツ着てんじゃねぇぞ!!」「写真撮ってSNSに晒すぞ!」と罵詈雑言で会場を恐怖と笑いのどん底に落とし入れると、高笑いで去って行った。
メンバーそれぞれカラフルな学ランで登場した先行の氣志團。西園寺瞳(Gt)がセンチメンタルなアルペジオを奏でると、「スパトニック・シティ・ブビブビ」でライブをスタートさせた。
「Rock’n’Roll Graffiti」「ゴッド・スピード・ユー!」と続けざまに軽快なビートナンバーを畳み掛けていく。奇抜な出で立ちと悪ふざけが目立つ彼らだが、8ビートに乗せた甘くせつないメロディは絶品。正真正銘の硬派なロックバンドの姿でオーデイエンスを魅了していく。「そんなもんじゃねぇだろ! もっといけんだろ!」綾小路翔(Vo / DRAGON VOICE / MC / Gt)と早乙女光(DANCE / SCREAM)が右に左にステージを駆け回り、〈BAD DO-WAP BE-BOP DO-WAP〉のフレーズに合わせて横一列に並んだ「キラ キラ!」でフロアのボルテージは早くも最高潮。高速ナンバー「D×D×D」ではヒカルがタオルのヌンチャク捌きで観る者を圧倒し、くもの巣投げテープが放たれた。
「ニューロティカ、1998回目ライブおめでとうございます!」
『氣志團万博』を終えたばかりの彼ら。今日は大好きな先輩バンドとのガチンコ2マンだ。「オーライ! オムラーイス!」翔の妙なテンションによる“フリースタイル”コールアンドレンスポンスがエンドレスに響き、オーディエンスは少々戸惑っていたようだが、彼らがリラックスしながら、純粋にこのライブを楽しんでいることが伝わってくる。
「めちゃくちゃ尊敬する先輩だけど、やっぱりよぉ、いつまでもおっさんたちに居座られても仕方ねぇから、今日はニューロティカを引き摺り下ろしにやって来ました、ヨロシク!!」「俺たちがニューロティカの前にやるっていうのどういう意味かわかってるのかよっ! ぐっちゃぐっちゃにしろってことだろぉ?」
“後輩のものでも使えるものは全部使う”ニューロティカイズムを引き継いだという翔は、後輩の某ラウドロックバンドからいただいた挑発的なMCを披露すると、「次は、ちょっとバラードでございます」と紹介するものの、ステージにはタンクトップ姿の微熱DANJI & DANDYが登場。「スウィンギン・ニッポン」「週末番長」で会場を大いに沸かせた。
「ニューロティカと私!」翔が突如、祝辞を読みあげるようにニューロティカへの想いを口にする。見たこともないルックス、聞いたことのない歌詞に脳天を揺さぶられたこと。ユニコーン、JUN SKY WALKER(S)、レピッシュにTHE BOOM……、ラバーソールを履いてめかし込んだ男前のバンドがたくさんいた中で、なぜか1人だけピエロだったニューロティカ。パンクにピエロってどういうことなんだろう? 当時のイギリスには映画『時計じかけのオレンジ』のようなファッションに身を固めたTHE ADICTSというバンドがいて、その影響だと思っていたものの、20数年後、アツシにそのことを尋ねると「誰それ?」と言われたことーー。
笑いを誘いつつも、ニューロティカへの愛と想い出を確かめるように数々のエピソードを話す翔の表情はキラキラしていて、ロックに憧れた少年のままだ。
デビュー前、ヒカルと2人でありとあらゆるニューロティカのグッズを持って、新宿LOFTまで会いに行ったら、アツシが「もしよかったら来週出る?」と言ってくれたという。その後、一緒にツアーも回った。ブッキングってどうやるのか? チケットの捌き方は? 打ち上げにおすすめの場所から女性の口説き方まで、ありとあらゆることをニューロティカから学んだ。悪いことは大体NABOから学んだ。そんな翔がアコースティックギターを手にした。「寝る前には必ず八王子の方向を確認する」と、絶対に足を向けて寝られない大先輩バンド・ニューロティカに捧げる歌ーー。
「1984年1月に結成、いろいろあって来月2000本目のライブを行う」というニューロティカの34年に渡る長い歴史を、端折りに端折って30秒に集約させた歌だった。
「One Night Carnival」からのラストスパート。オーディエンスによるサビの大合唱を受け、間奏で翔が口開く。
「俺たちは何もねぇロックバンドだよ…… グループ魂とか、四星球とか、きっといろんな楽しいことを考えて臨んだんだと思う。でも俺たちはロックしかできねぇ。でも、できねぇから、精一杯やるよ。届け、ニューロティカに!」
そう言うと、〈恋してるのさ ニューロティカに恋してるのさ〉とサビをしっとりと歌い上げる。場内はハートフルな空気に包まれ……と思いきや、「あっちゃんが、楽屋に手紙を書いてくれた。 ……氣志團の“氣”が間違ってた」と後奏にぶっ込んできた。ただでは終わらせないネタの引き出しとその手腕はさすがである。
ラストは、「思いっきり、ニューロティカの影響を受けて作った曲です!」と紹介された「鉄のハート」。演奏中、メンバー全員でステージをところ狭しと駆け回る。そう、これはニューロティカのお家芸だ。ブレイクのキメで翔が何度も何度も足を踏み込んでアンサンブルを指揮しようとするも上手くキメることが出来ない。「練習してないことをやって、失敗するのもニューロティカの影響です!」と最後の最後まで笑いを誘う、と思っていた矢先、大きく蹴り上げたヒカルの足から脱げた靴が宙を舞い、叶亜樹良(Dr)のところまで飛んでいった。ホントにいろいろ“持っている”バンドである。
「一生懸命頑張りました! いい汗掻いたか! バカになったか! ロックンロール最高! 氣志團最高! NABO最低! ニューロティカぁー?! 最高ーっ!!」
最後はお決まりのあのコールが会場内に響いた。
「俺達いつでもー?! ロックバカーー!!」
氣志團の媚びに媚び……いや、溢れんばかりのロティカ愛に満ちたステージを受けて、ニューロティカのお出ましである。
大五郎カットに目の周りを黒々と塗ったNABO(Dr)、白いラインがアクセントのセットアップをスタイリッシュに着込んだKATARU(Ba)、いかついハードロックスタイルのJAMES(Gt)、そして、
「そうです、私が初老の“ややうけライダー”です!」
よれた衣装、ではなく、7〜8年ぶりで人造人間にも関わらず筋肉が落ちて来た“ややうけライダー”に変身したアツシ(Vo)だ。まさに出オチ、「88ライダー」1曲歌い切ると怒涛のごとく去っていった。
楽器隊3人による「No.9」を挟んで、お馴染みの青いピエロ衣装で再登場したアツシを迎えて「五十の夜」。騒々しくも熱いビートと歌声が響き渡る。
「今夜もたくさんお集まりいただきまして誠にありがとうございます。氣志團ちゃんとはいつ頃出会ったのかなぁ、と昨日“曲順ノート”を見ていたら、平成13年7月1日『氣志團現象』でーー」
2001年7月にここ、当時の渋谷ON AIR WESTで行われた『氣志團現象~ハイウェイに乗る前に~』に出演し、神輿に担がれたことをアツシが口にする。先の翔の話から「“気”志團」と間違えたことをKATARUに問われると、「……お、お袋が書いたんだよっ!」としどろもどろに応えながら、「お、氣志團、並じゃねぇな」と「並みじゃねぇ」へ。曲中4人で絶妙なアカペラ“高円寺中年合唱団”を披露すると、吉川晃司顔負けのシンバルキックを高らかにキメた。
「Fight ! ~BEST FIGHT~」ではサビをオフマイクでストロングに歌い上げると、「歌の中に〈Come on〉という言葉があって、みなさんと一緒に連呼して歌っていただいたんですけど、」とアツシ。「なんか受け継がれているのかな? 誰かも歌ってるよね? 〈Come on〉っていう歌」と言いながら金色のジャケットを羽織る。俺が〈Come on〉っていうのを30年前に作ったんだけど、なんかこう髪の毛ツッパってるバンドで歌ってるヤツ居ない? おかしいな…… かかってこいや 喧嘩上等!」突如始まった氣志團の「喧嘩上等」で場内は興奮の坩堝と化した。
氣志團からの愛をたっぷり受け取ったニューロティカからの答酬はまだまだ続く。「富士山には雪、渋谷にはTSUTAYA O-WEST、ニューロティカには「路薫’狼琉狂走曲(ロックンロールクレイジーラン)」。氣志團「鉄のハート」における“走り芸”を受け、急遽セットリストを変更して本家披露。アツシが走る、KATARUが走る、JAMESが走る、……NABOもドラムを放棄し、ところ構わず走り回る。「よく『何で走るんですか?』と訊かれるんですけど自分でもよくわからない。楽しいから走る」とのアツシの言葉通り、観ている側もよくわからないけど、とにかく楽しい。ニューロティカのライブの楽しさは理屈じゃないことを表す光景である。
「あのでっかいZeppで、速いニューロティカを体験してください! でかいところでこんなに速いビートを聴かせるバンドはいないと思うので」
そう、ニューロティカのバカスカ打ち鳴らされる2ビートはとにかく速い。それでいて本当に気持ちよく心地よく響く。騒がしいのにやかましくはないから不思議だ。シンプルなビートとアツシの歌、長年止まらずに走り抜けてきたロックバンドの生き様を見ている気分になる。決して器用なバンドではないが、ロックバンドのカッコ良さは音楽性の幅、技術やテクニックだけでないことを彼らは教えてくれる。
翔が好きだという歌、「悲しきピエロ」を久々に披露。つづく「絶対絶命のピンチに尻尾を高く上げろ!」では、ぐるぐるぐるぐる周り続けながら一糸乱れぬグルーヴを紡ぐKATARU。「あっちここっち走りながらあっちこっちのマイクで歌いながら、あなたのために一生懸命ベースを弾いています! 村田語52歳!!」とアツシ。そして、先日のフラワーカンパニーズの鈴木圭介(Vo)を受け「チョイスで会おうぜ」ならぬ、「Zeppで会おうぜ」だ。途中のブレイクで、ディスコ調のビートに変わると「Zeppに来ないか?」とアツシのキメ台詞で氣志團「One Night Carnival」がはじまった。予想外の畳み込みにステージもフロアも場内一丸となって踊りに踊った。変幻自在のアンサンブルで再び「チョイスで会おうぜ」に戻ってくると、アツシ、本日2度目のシンバルキック。しかし、わずかに足が届かず失敗。実は1度目の後、スタッフがシンバルの位置を高くしていたのだ。「違うの、高さは届いてるの! 老眼、距離の問題!」と最前にいたお客さんから眼鏡を奪うと、今度は見事にシンバルを蹴り上げた。そして、スタッフはシンバルをまた高くセッティングするのだった。
「元ニューロティカのギタリスト、トミーちゃんカモーン!!」
ステージに“トミー”こと、西園寺瞳が呼び込まれる。5年前、ギタリスト脱退に見舞われたニューロティカが真っ先に連絡し、決まっていたライブへの参加を快諾してくれたのがトミーだった。サポートという形で数本のライブであったものの、後日飲みの席にてアツシの前で「自分、元ニューロティカのギタリストです」と自ら名乗っていたことが嬉しかったという。
新旧ニューロティカのギタリストで送られる「COME ON」「ATKT」、そしてトミーからのリクエストだという「ア・イ・キ・タ」でステージもフロアもすっちゃかめっちゃかのバカ騒ぎ状態に。その様子を2階関係者席から嬉しそうに眺める氣志團の他メンバーが印象的だった。
「氣志團ちゃんカモーン!!」
アツシの一声で氣志團全員がステージへ。この2バンドが揃えば、演奏する曲はもちろんあの曲。アツシの「34年間歌ってます!」ではじまったのは、DJ OZMAもカバーしたニューロティカが誇る不朽のキラーチューン「ドリンキン・ボーイズ」。印象的な掛け声のコーラスは、ニューロティカVer.「Ya Ya Ya〜」とDJ OZMA Ver.「Na Na Na〜」が交差するスペシャルバージョンで問答無用の大団円。最後のシンバルキックはキまらずも、客席から祝砲の巨大クラッカーがステージ目掛けて放たれた。
「いい汗掻いたか! バカになったか! ロックンロール最高! パンク最高! お前ら最高! 氣志團最高! ニューロティカ、せーの、最高ーーっ!!」
お互いがリスペクトし合い、濃厚な愛に満ち溢れた最高の夜が終わった。「2000回ライブで会いましょう!!」とステージを後にしたアツシ。2000本目以降のライブ予定は入れていないという。そこまで想いを馳せて挑む10月20日のZepp Tokyoは、とてつもない速いビートに乗って、とんでもない景色が広がることだろう。
(撮影=中島たくみ)
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter