大杉漣の最後の主演作「教誨師」公開初日、古舘寛治「漣さんも喜んでいると思う」
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「教誨師」初日舞台挨拶の様子。
大杉漣の最後の主演作「教誨師(きょうかいし)」の初日舞台挨拶が、本日10月6日に東京・有楽町スバル座にて開催され、キャストの玉置玲央(柿喰う客)、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川登、古舘寛治、光石研、監督の佐向大が登壇した。
2月21日に66歳で他界した大杉が初めてプロデュースを担当し、自ら主演も務めた本作。受刑者の心の救済に努め、彼らが改心するよう導く“教誨師“の主人公・佐伯が、教誨室という閉ざされた空間を舞台に、世代も境遇も異なる死刑囚6人と会話を繰り広げるさまが描かれる。
心を開かない無口な男・鈴木役の古舘は「漣さんも喜んでいると思います」と挨拶。気のいいヤクザの組長・吉田役の光石は、ドラマ「バイプレイヤーズ」の撮影中に本作のオファーを受け、役柄を知らないまま引き受けたことを明かす。そして「とにかく大杉さんと1対1で対峙できることが、ものすごい魅力だと思った。胸を借りるつもりでやれたのが本当によかった」と振り返った。
おしゃべりな中年女性・野口役の烏丸は、自分との共演シーンでは聞き役に徹していた大杉に関して「私と一緒のときだけ、漣さんはちょっと楽そうでした(笑)」と回想。自己中心的な若者・高宮役の玉置は、本作が映画初出演であったことから「右も左もわからず緊張していたのですが、大杉さんが大きく温かく受け止めてくださったので、ものすごく居心地がよかったです」と感謝を述べた。
お人好しのホームレス・進藤役の五頭は、今年70歳になったことから「これをいただいたんです」とシルバーパスを取り出す。「僕が劇団に入ったのが1973年、大杉さんが74年。そして僕が劇団を辞めたのも、大杉さんの劇団が解散したのも88年。なんだか因縁みたいなものを感じます」と同世代としての思い入れを語る。また佐向の中学と高校の同級生であり、普段は俳優ではなく会社員として生活している小川は、家族思いで気の弱い父親・小川役を演じた本作の現場を「戸惑いだけでなく、緊張、恐怖、焦り、さまざまな感情がありました。撮影当日はとっても緊張したんですが、『よし、やってやろう』と思った」と述懐した。
ほぼ全編、教誨室での1対1の会話劇で構成される本作。佐向はその制作意図を「シンプルな設定の中で、ある意味格闘技のような1対1のやりとりを、言葉と役者さんの佇まいだけで表現できないかなと思った」と明かす。またプロデュースも務めた大杉との思い出を「この映画は大杉さんなくしてはありえなかった。現場で大杉さんは『僕の遺作にするから』とおっしゃっていたんです。それからこの『教誨師』を3部作にして、終わったら新しいシリーズを始めようと冗談で話されていました。大杉さんの役者としての覚悟が出ている作品だと思う」と語る。そして最後に、主演の不在を悔やみ「今日ここに一番立つべき方がいないのは本当に悔しいですが、きっとどこかで見ていらっしゃると思うので、がんばっていかなきゃと思っています」と述べた。
「教誨師」全国で順次公開中。
※古舘寛治の舘は舎に官が正式表記
(c)「教誨師」members