幸福とは何か?瀬奈じゅんが振り返る、現代能楽集X「幸福論」
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瀬奈じゅん(撮影:宮田浩史)
2月14日にCS衛星劇場で「現代能楽集X『幸福論』~能『道成寺』『隅田川』より」が放送される。オンエアに先駆け、キャストの瀬奈じゅんが取材に応じた。
昨年11月から12月にかけて東京・シアタートラムで上演された本作は、東京・世田谷パブリックシアターの芸術監督である野村萬斎が企画・監修を務める「現代能楽集」シリーズの第10弾。長田育恵作「隅田川」、瀬戸山美咲作「道成寺」が瀬戸山の演出により2本立てで上演され、いずれの作品にも瀬奈、相葉裕樹、清水くるみ、明星真由美、高橋和也、鷲尾真知子が出演した。なお同作は、本日2月9日に発表された第28回読売演劇大賞で選考委員特別賞を受賞した。
「隅田川」では運命的に出会った3世代の女性たちの物語が、「道成寺」では幸福な家族がさらなる幸福を求めた結果、起こった悲劇が描かれる。「隅田川」で瀬奈が演じたのは、家裁調査官の真鍋夏帆。この役について瀬奈は「夏帆は私自身と重なるところがあり、『似たような人生を送っているのに、なぜ彼女と私はこれほどまで考え方が違うのだろう?』と不思議に思うことが多かったです。同じ現代の中で、私も夏帆も同様に不妊治療という経験を積んでいる。けれど、彼女が感じていることや考え方が私とは全然違っていて。『私がこれを演じる意味はどこにあるのだろうか?』と悩んだこともありました」と率直な思いを述べつつ、「“役者は必ずしも役に同調しなくてもいい”と私は思っていたんです。でも、夏帆に関しては自分と違う感覚の役を演じることに抵抗があって。ただ同時に、だからこそ演じる意味があるとも思えましたし、こうして公演を終えた今は、役者としてとても勉強になったなという気持ちでいっぱいです」と思いを明かす。一方、「道成寺」で演じた作家・安藤千佳に関して、「お話の中心となる家族の闇を横から無理やり引き出していくような存在で、出番はそれほどないものの、考えさせられることも多く、楽しく演じさせていただきました」と振り返った。
また瀬奈は、本作のタイトルになっている「幸福論」についても言及。「まず、コロナ禍のこうした状況で無事に舞台を上演できたことが奇跡であり、幸福だなと感じました。それに、舞台をご覧になったお客様から、『自分の幸福ってなんだろう?とすごく考えさせられた』という感想をいただけたことが何よりもうれしかったです。というのも、今回のこの『幸福論』はこちら側から『幸福とはこういうことです』と提示するのではなく、『皆さんで幸福について論じましょう』と投げかける作品だと思うんです。何が幸せかは1人ひとり違っていて、それぞれに正解がある。そのことを、この作品を通じて感じていただきたいなと思っていたんです」と真摯に語る。
さらに、「現実的ではありますが、私にはすごくファンタジーに感じるところもありました。きっと、それが『能』の部分なのかなと思うんです。というのも、歌舞伎にしても、能にしても、狂言にしても、いわゆる伝統芸能と呼ばれる作品には、実はファンタジックなものが多いんです。一見、難しく思われがちですが、物語自体はとてもシンプルで、展開や結末を知るとおとぎ話のような内容だったりする。今回の作品にもそうした魅力や要素が詰まっていて、かつ現代劇に置き換えられている。私自身、この作品に参加しながら、『なるほど、現代における能楽集とはこういうことなのか』と改めて感じることができましたね」と、大きな学びがあったことを明かした。
「現代能楽集X『幸福論』~能『道成寺』『隅田川』より」の放送は2月14日13:00にスタート。なお衛星劇場では、本編終了後に瀬奈と相葉のインタビューもオンエアされる。
CS衛星劇場「現代能楽集X『幸福論』~能『道成寺』『隅田川』より」
2021年2月14日(日)13:00~
作:長田育恵(弐「隅田川」)、瀬戸山美咲(壱「道成寺」)
演出:瀬戸山美咲
監修:野村萬斎
出演:瀬奈じゅん、相葉裕樹、清水くるみ、明星真由美、高橋和也、鷲尾真知子