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西島秀俊、“支えるポジション”で生んだ『散り椿』の力強い画 岡田准一との殺陣は屈指の名場面に

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リアルサウンド

 日本が誇る名カメラマン・木村大作の監督3作目である『散り椿』で、木村組初参戦となった西島秀俊。名だたる映画人とともに仕事を重ねてきた木村率いる木村組への西島の参加は、期待をはるかに超えた、一つひとつの力強い画を生み出している。

 デビュー当時は『悪魔のKISS』(1993年・フジテレビ系)や『あすなろ白書』(同年・同局)など、西島がトレンディー俳優の1人として広く受け入れられていたことをご存知の方も多いだろう。一時はテレビに姿を見せなくなった時期もあるが、以降、作品の規模やジャンルを問わず多様な映画作品で映画俳優としての佇まいを見せ続け、テレビで見かけぬ日はないほどの現在でもそれは変わらない。

 シネフィル(熱狂的な映画ファン)としても有名な西島はこれまでに、諏訪敦彦や黒沢清、北野武といった、現代日本で最前線に立つ映画人との仕事を重ねてきた。『2/デュオ』(1998)、『ニンゲン合格』(1999)や一昨年映画界を賑わせた『クリーピー 偽りの隣人』(2016)、『Dolls』(2002)など、シネフィルである彼にこそ相応しいそれらの作品は、確実に映画史に刻まれている。そしてイラン映画界の鬼才アミール・ナデリ監督作『CUT』(2011)をはじめとした海外の監督たちの作品や、俳優の伊勢谷友介による監督2作目『セイジ -陸の魚-』(2012)などもまた、彼のバイオグラフィーに相応しい作品たちだ。

 ドラマに映画にと製作された『ストロベリーナイト』(2010-2013)や『MOZU』(2014-2015)などのエンタメ性の高い作品で爆発的に知名度を上げ、いまや国民的俳優といった印象もある彼は、CMで見せるキャッチーなキャラクター像も含め、常にイメージを一新させ続けている。近年は『風立ちぬ』(2013)や『ペンギン・ハイウェイ』(2018)で声優を務め、その姿は見せずとも声の芝居だけで私たちを魅了する。前者では職業俳優ではない庵野秀明演じる主人公を脇から支えるような存在であるし、後者では若手女優・北香那演じる主人公の少年の父親役に扮しており、これまた“支えるポジション”に西島が配されていることに納得だ。支えるというポジションこそ、演技者としてのキャリアがものをいう役どころだろう。

参考:美しい殺陣に息を飲む 『散り椿』の岡田准一はジャニーズであることを忘れさせる

 そんな彼が『散り椿』で対する相手は、類まれなる身体能力の高さに“アクション俳優”と見る向きも多い岡田准一だ。しかし西島もまた、“肉体派”としての魅力も兼ね備えた俳優である。20代の頃の作品を観ると線の細い身体が印象的であるが、役者としてのキャリア、年齢を重ねることで蓄積された貫禄、そして肉体改造で得た身体によって、役の幅は広がり続けている。

 思わずため息が出るほど四季の移ろいを美しく捉えた本作は、俳優に課せられたものが大きい。四季以上に、やはり主体となるのはあくまで武士の物語であるからだ。だが、監督(演出者)がカメラマンを務めているとあって、やはり俳優の立っている画面こそ美しく、西島と岡田の殺陣は本作屈指の名場面となっている。

 完成報告会見で、木村監督に「スピードに関して言ったら、三船敏郎、高倉健、仲代達矢、勝新太郎を上回るスピード」とまで言わしめた岡田だが、それに西島も互角に渡り合う。2人の殺陣はまるで舞のようであり、四季の美しさに勝るとも劣らない、息を呑まずにはいられないものである。前述した、キャリア・貫禄・身体、この三拍子を揃えた者だからこそ、岡田と作り出せたシーンなのだろう。

 今後は『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』や『人魚の眠る家』でメインキャストを務め、2019年公開の『空母いぶき』では主演を務める西島秀俊。その作品ジャンルは多岐に渡るが、彼の魅力はいずれも映画館のスクリーンでこそ味わいたいものである。

(折田侑駿)