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ぴあ 総合TOP > 30年に及んだ平成の現代美術を振り返る『平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989–2019』京都市京セラ美術館で開催中

30年に及んだ平成の現代美術を振り返る『平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989–2019』京都市京セラ美術館で開催中

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クシノテラスの展示風景より ストレンジナイト《無題(創作仮面館)》(制作年不明)

約30年間続いた“平成”という時代を振り返る展覧会『平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989–2019』が京都市京セラ美術館で4月11日(日)まで開催されている。バブル経済や二つの大震災、一連のオウム事件など大きな出来事の間で、現代美術はどのような変遷を遂げたのだろうか?
本展は、1989年1月から始まり2019年4月で終了した平成年間の現代美術を振り返るというもの。日本の現代美術を多角的な視点で捉えてきた美術評論家の椹木野衣が企画・監修を行い、14組のアーティストグループの作品群を展示する。

國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト《國府理「水中エンジン」redux》(2021)國府克冶蔵

椹木はバブル経済の崩壊と東日本大震災(福島原発事故)を念頭に、展覧会のキーワードを「うたかた(バブル)」と「瓦礫(デブリ)」と定めた。そして、平成全体を通じてグループや集団、ゆるやかなつながりをもって表現活動を行う芸術家たちの存在が多かったことから、本展では個人ではなくアーティストグループを取り上げるとしている。

年表「平成の壁」デザイン 松本弦人

展覧会場に入るとまず驚かされるのは入り口にある幅約15メートルにもおよぶ巨大な黒板「平成の壁」。平成年間に起きた社会的事件や、美術界に起きた出来事が細かく描き込まれており、上部に描かれた文字は読み取れないほどだ。この膨大な壁と描き込まれた文字により、約30年という時間の流れと重みを実感することとなる。

30年の歴史が1枚の巨大な平面にまとめられている

展示会場はゆったりと回遊できる構成になっており、作品はおおよそ3つの時代で区分されている。まず、平成が始まりバブル経済の崩壊した1989年から9.11と呼ばれるアメリカ同時多発テロ事件までの約11年間。ついで2001年から東日本大震災が起きる2011年までの10年間。そして、2011年から平成の終焉を迎える2019年まで。

それぞれの区分で、人々の価値観を揺るがす大事件や災害が起きており、作家や作品へ強く影響を与えていると考えられる。

Complesso Plastico《C+P 2020》(2020)

平野治朗と松蔭浩之によるユニット、「Complesso Plastico」による《C+P 2020》(2020)は、当時のインスタレーションの写真なども用いて、この展覧会のために再構築したものだ。

「突然、目の前がひらけて」で設置された階段の再現

2015年11月に開催された作品展「突然、目の前がひらけて」で設置された橋やアーカイブの展示は強い存在感をはなっていた。「突然〜」は、東京都小平市で、塀一枚で隣接していたものの、ほとんど交流のなかった武蔵野美術大学と朝鮮大学校の修了生と学生たちが企画したもの。

会場中央にある橋は、当時あった薄い壁もあわせて再現されている。
稲村米治《昆虫千手観音像》(1975)群馬県板倉町蔵

「クシノテラス」は広島県福山市にあるアートスペース。伝統的な美術教育を受けず、独学で自らの表現を模索し続ける表現者たちが制作した作品を専門的に紹介している。稲村米治は、自らが採集した昆虫で作品を作る。《昆虫千手観音像》は、2万匹以上の昆虫で作られた千手観音だ。
ガタロは、清掃員として30年以上勤務する傍ら、《雑巾の譜》のように、日々使用する掃除道具を描いている。

ガタロ《雑巾の譜》(2018-20)櫛野展正蔵

このほかにも、東日本大震災前からはじめられ、日本画家の三瀬夏之介と生徒たちにより開始された「東北画は可能か?」や、美術家の梅津庸一を中心とする、生活と制作が一体となった共同体「パープルーム」、森美術館の展覧会を控えた「Chim↑Pom」など、平成を俯瞰する上で欠かすことのできない集団の作品が展示されている。

東北画は可能か?《しきおり絵詞》(2013〜)
パープルーム《花粉の王国》(2020)

すでに令和も3年となった現在、平成という時代がどのようなものであったのかを、美術作品を通して振り返るにはちょうどよい機会。しっかりと見ておきたい展覧会だ。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989–2019』
会期:2021年1月23日~4月11日
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
https://kyotocity-kyocera.museum/
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124
電話番号:075-771-4334 
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:月(ただし祝日の場合は開館)
料金:一般 2000円 / 大学・専門学校生 1500円 / 高校生1000円 / 小・中学生 500円 / 未就学児

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