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『美味しんぼ』栗田ゆう子が恋敵への嫉妬をあらわに……やきもちエピソードを検証

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『美味しんぼ』のヒロイン、栗田ゆう子。彼女は作品初期から山岡士郎に好意を持ち、様々な場面で嫉妬心を見せることがあった。本稿では栗田が嫉妬心をあらわにした瞬間を検証したい。

君島さわこのボディタッチ

 栗田が山岡に好意を持つ様子を露骨に見せた初めてのシーンが、5巻の「味噌の仕込み」だった。お盆休み、栗田は教師だった祖母の教え子・君島良子の招待で祖母とともに花畑村を訪れる。翌日、キャンプをするため合流予定だった文化部の田畑と三谷が自動車に乗って村にやって来るのだが、運転していたのは田畑から金を借りたものの競馬で返済できなくなった山岡だった。栗田は「あら、山岡さんも」と嬉しそうな表情を浮かべる。

 そんな山岡に目をつけたのが、面識があった良子の娘・君島さわこ。山岡にビールを勧め、「良い飲みっぷりね」と笑うなどいい感じになる。すると栗田は「ま、さわこさんって馴れ馴れしい人ね」と口を尖らせる。その様子を見た田畑と三谷は意味深な笑み。この時点で、文化部の一部メンバーは、栗田が山岡に好意を持つ様子を認識していたようだ。

 その後、鯉料理を作って君島家を救った山岡に、さわこは「山岡さんありがとう、みんな山岡さんのおかげです」と抱きつく。栗田は露骨に不快感を示し「まあ、何よ」と叫び、山岡の腕を掴み「何をグズグズしてるの、鯉料理をどんどん作って頂戴」と引き離し、さわこを睨み付ける。

 山岡に思いを寄せるさわこは、次話「青竹の香り」で、山岡と田畑・三谷・栗田を食事に誘う。山岡へのボディタッチが多いさわこに栗田は「さわこさんたら山岡さんにベタベタして、山岡さんも何よ」と不快感を顕わに。結局食事中に山岡は周大人のもとに行ってしまい、栗田が追いかける。さわこもついていこうとするが、田畑と三谷が「あんな連中放っておこう」と止め、仲を引き裂いた。

 この後、君島さわこが作品に登場することはなく、消息不明となった。ここから結婚まで、山岡に恋心を持つ栗田が描かれていくことになる。

山岡のお見合い

 大原社主からお見合いをするよう業務命令を受けた山岡。お見合い相手の昭子も義理だったようで、安堵して食事をしていると昭子の元交際相手の広田が現れ、太り気味の昭子をなじるような発言をする。山岡が激しく反論すると、女性を引き連れて去っていた。

 数日後、東西新聞社を訪ねてきた広田にお茶を出す栗田。広田が「お膳立てでお見合いをしたと言うこと、失礼ながら調べさせてもらいました」と話すと、山岡にお茶を出そうとしていた栗田は「え、山岡さんがお見合い?」とショックを受けたような顔をして固まる。

 そして出そうとしたお茶を盆に戻し、立ち去ろうとする。山岡が「義理でお見合いいただけ」と弁解するが、栗田は「お義理だったのが残念そうね」と不快感を示した。

 山岡のお見合いにショックを受けた栗田。明確ではないが、「山岡と結婚したい」という気持ちが芽生えていることを伺わせた。

山岡の「ガールフレンドうじゃうじゃいる」発言

 友人が婚約者を紹介すると言っているが、1人で会いたくないので付き添ってほしいと山岡に頼んだ栗田。嫌々ながら付き合う山岡は「俺、関係ねえだろ。君も自分のボーイフレンド連れていけばいいじゃないか」と憎まれ口を叩く。

 「究極のメニュー作りが忙しくてボーイフレンドを作っている暇がない」と話す栗田は「山岡さんはガールフレンドいるの?」と聞く。すると山岡は「当たり前だろ。そんなもんうじゃうじゃいるよ」とうそぶいた。

 それを聞いた栗田は「まあ。そうでしょうとも!あれだけ仕事を怠けていたら、デートする暇もたっぷりあるわよね」と怒る。そんな栗田を見た山岡は「何怒ってんだ?」と驚いてしまった。

 「山岡に彼女がうじゃうじゃいる」と思いこんでいた栗田だが、8巻の「スープと麺」で山岡の大学時代の先輩から「栗田さんと言ったね、どうもありがとう」「こいつは女にもてなくてね、それなのによくあなたみたいな人を捕まえたもんだ」と言われると「ふうんもてなかったのか。じゃあこの前ガールフレンドがうじゃうじゃいると言ってたのは……」と笑う。山岡に彼女がいないことを察知し、ホッとしたのだ。

 その後、タクシーでおマチばっちゃんの鶏肉をわけてもらいに行くシーンでは先輩から「この男を見捨てないで」と言われたこともあってか、「るん」と鼻歌を歌うほど上機嫌に。さらにばっちゃんから「士郎さんのことよろしくお願いしますね」と手を握って懇願されると、山岡の顔を見て露骨にニコニコと笑った。この後、紆余曲折を経る2人だが、栗田はすでに山岡との結婚を心に決めているようにも思えた。

二木まり子の指輪

 栗田を大いに困らせ、嫉妬させたのが二木まり子だ。山岡にほぼ一目惚れした二木は、積極的にアプローチ。しかも二戸銀行会長の祖父も人柄に惹かれ、結婚をしようとあの手この手で迫ってくる。

 24巻のカレー対決ではスリランカに向かう飛行機の中で隣同士になり、座席で眠る山岡の手を二木が握ったことに「ま……」と栗田が不満顔。さらにインドでも山岡と二木、近城と栗田で車を分乗することに「二木さん、まるで当然のように山岡さんと……」と口を尖らせる。

 そして帰国してから、二木が「山岡さんにスターサファイアの指輪を買ってもらった」と見せびらかし、山岡も「スターサファイアはスリランカの特産だもの」と高笑いして2人が仲良く消えていくと、「冗談じゃないわよ」と怒り、後を追う。その様子は富井副部長が「ふううむ。山岡はついに二木まり子と決まりか」とつぶやくほどだった。

 その後、カレーショップで作戦会議をする山岡・二木・栗田。指輪を見せびらかして浮かれる二木に「二木さん、すっかり乗っちゃって」と口を尖らせ、「指輪を買ってあげるなんて。それがバレても山岡さんはしゃあしゃあとして……」と落ち込む。

 しかし、二木の指輪がスリランカの土産売りの少年から100円の価値にもかかわらず1400円で売りつけられたもので、二木のためにプレゼントしたものではないことが発覚すると、栗田は安堵。一方で二木は「100円の指輪でもいいの」と山岡の肩に頭を乗せる。栗田は露骨に「ムっ」とした。

 二木登場後、栗田を狙う団社長と近城カメラマンで、恋の綱引きが繰り広げられることになる。特に国内や海外の取材では、二木がことあるごとに山岡にボディタッチするなど気を引くよう仕掛けていき、その様子に栗田が怒りを見せるシーンが多く見られた。

山岡の心を掴んだのは一途な心

 山岡・栗田・二木・団社長・近城カメラマンの恋愛バトルは、山岡が生死をさまよう病に倒れた際、昼夜問わず介抱した栗田の行動が決定打となり、二木・団社長・近城が敗北宣言を行い、山岡と栗田が結ばれることになる。作品初期から山岡に思いを寄せ、様々な誘惑や向かい風を受けてもめげず、結婚にこぎつけた栗田。その一途な気持ちが、複雑な家庭で育ち「結婚はしない」とまで言っていた山岡の心を動かした要因かもしれない。