松尾太陽が語る、3カ月連続配信を通したソロとしての未来 「昔と今をインプットして、その間を表現するシンガーになりたい」
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昨年9月にリリースしたミニアルバム『うたうたい』でソロシンガーとしてデビューを果たした松尾太陽が、3カ月連続で新曲を配信リリースしている。2021年1月15日に配信リリースされた第1弾「Magic」では全編英語詞のブギーファンクに挑戦し、2月11日に配信リリースされた第2弾「体温」は3ピースのピアノバンド、Omoinotakeの楽曲提供となるR&Bバラードとなっている。そして、第3弾は、デビューミニアルバムに収録された「掌(てのひら)」に引き続き、松尾自身が作詞作曲を手がけた新曲となるそう。シティポップ=和製AORをテーマにしていた前作から一転し、洋楽的なアプローチでよりオントレンドなサウンドにチャレンジした彼がソロシンガーとして未来に望むものとは。(永堀アツオ)
いろんなエンターテインメントを届けたい
ーー3カ月連続で新曲を配信リリース中です。どういう意図で始めましたか?
松尾太陽(以下、松尾):普通に考えたら、シングルを出して、カップリングが2曲入っているっていう形でもいいと思うんですけど、1カ月に1曲リリースしていくことで、その月の楽しみをみんなに提供できたらいいなと思って。あと、今の状況下ということも大きいですね。不要不急の外出は避けて欲しいと言われている中で、デジタル配信であれば、手元に端末があればダウンロードしてすぐに聴ける。とにかくいろんなエンターテインメントを届けたいという気持ちがあったし、背中を押すとまでは言わないけど、少しでもみんなの背中を支えられるような活動ができたらいいなと思って決めました。
ーー第1弾「Magic」は初の全編英詞のブギーファンクになってました。これは、世界に向けていると言っていいですか。
松尾:大きく言うとそういうことですね。まずは国内で活動することが大前提ですけど、大きな目標に向けた自分からの熱意として、全編英詞でダンサブルな楽曲を出すことが大事だなと思って。
ーーソロシンガーとして歌うジャンルに関してはどう考えてましたか。
松尾:ソロの活動は始めたばかりなので、今はまだ吸収の時期だと考えていて。だから、まだはっきりと決める時でもないなって思っているんですね。いろんなジャンルをやってみて、意外と合うものがあったり、合うと思ったけど合わなかったものも出てくるかもしれない。いろんな楽曲に触れて、自分で楽曲を生み出すことがもっと増えてきたときに答えを出したいなと思っています。だから、今は、いろんな方の胸に刺さる1曲というか、とにかくジャンルレスで楽しめる楽曲をずっと作りたいという気持ちでいますね。
ーーそれにしてもファンキーな楽曲で驚きました。ほぼ洋楽ですし。
松尾:僕はこういう、思わず歌いたくなるような、衝動的に踊りたくなるような曲が好きなんですよ。だから、普段、僕の楽曲を聴いてくれている方にも同じような気持ちになって欲しいなと。お家にいることとか、自粛モードが長く続いている世の中で、やっぱり、楽しめる術をもっと作らないといけないなと思ったんですね。ちょっと恩着せがましい感じにもなるかもしれないけど(笑)、そのみんなが楽しむ術を自分から発信するっていう。自分が動かないと何も生まれないし、自分が行動しないと何も始まらないですからね。自分が楽しめる楽曲を歌うことで、その楽しさを共有できる人が増えればいいなって思っています。
ーー歌詞はどんなことを歌ってるといえばいいですか。
松尾:本当に簡単にいうと一目惚れですね。主人公と女性の方がいて。何もなかった世界にいきなりふわっと花が咲く感覚というか。真っ暗だった世界が一気に明るいパステルカラーに広がっていく様を聴いてもらえたらいいなと思いますし、主人公の高揚感もしっかり出ている楽曲なんじゃないかなと思いますし。
ーー踊りながらクラップしたくなりますね。
松尾:みんなで一緒にクラップしたり、〈Oh yeh yeh yeh〉とか、簡単なところを歌いたいですよね。この曲は、もちろん、まずは聴いてもらうことが一番いいんですけど、ライブでやりたいなという気持ちでいっぱいですね。だから、歌詞は一目惚れっていうテーマのラブソングではあるけど、違った方向というか、楽しい方向の高揚感をみんなで味わえたらいいなと思いますね。
ーーちなみに、太陽さんは何かに一目惚れした経験はありますか。
松尾:僕の場合は、音楽ですね。例えば、藤井風さんの「何なんw」を初めて聴いた時に、「この人、まじカッコええ!」と思って。自分の方言をちゃんとグルーヴに乗せて、違和感なくできるんやと思って。自分もいずれそういうことをやってみたいと思っていたから、マジで、何なんwって思いました(笑)。
ーー(笑)ありですよね。関西弁のR&Bとか聞いてみたいです。
松尾:本当ですか? 方言がある側からすると、自分も鼓舞されるというか。歌詞を書いている時も、正直、ちゃんとした言葉で描かないといけないってとらわれている自分もいて。でも、その曲を初めて聞いたときに、そういう定義ってないんやって。いい意味でどうでも良くなれるような感じがあったんですね。ええやん、カッコええねんからって。僕もいつか絶妙のラインのものを作れたらいいなと思いますね。
ーーそれは楽しみに待ってます。楽曲の話に戻りますが、英語歌詞のレコーディングはいかがでしたか。
松尾:楽しくやらせてもらいましたね。英語の確認をしたりはあったんですけど、不安な気持ちはあまりなく挑めました。
ーーマイケル・ジャクソンやザ・ウィークエンド、ブルーノ・マーズを思わせるシャウトも入ってます。
松尾:今、名前が上がった方々は学生の頃からずっと聴いていますね。でも、この楽曲を歌うときにイメージしたアーティストはいなくて。ということは、自然に、染み付いているものもあるのかな。それはそれで嬉しいんですけど。
ーーどんなイメージで歌いましたか。
松尾:高揚感あふれる洋楽で、ベースラインがすごくカッコよくて。グルーヴのしっかりしている楽曲だっていうイメージを反映して、自分の中から自ずと出てきたものを歌った感じですね。レコーディングは本当に楽しかったんですよ。その一言に尽きるくらい。レコーディングでいいものを残さなきゃいけないっていう気持ちが取っ払えたし、いつの間にか、レコーディングが終わっていた感じで。本当に不思議な楽曲で、新しい気持ちにもなりましたね。
ーー1曲目にしたのは何か理由がありましたか。
松尾:去年の9月にミニアルバム『うたうたい』を出してから、超特急の活動の方に重きを置いていたので、2021年は松尾太陽として、挑戦的で、楽しい曲で始めたいなっていう気持ちがあったんですね。それに、1月2月3月と段々と春に近づくにつれ、季節の意味が深くなっていく部分もあるので、まずは、季節感とかじゃなくて、いろんなタイミングで聞いてもらえるような曲でありつつ、1月はまだ寒いので、少しでもみんなの中でじわっとあったまるものが残ればいいなと思っていましたね。
今伝えたいこととか、リアルに思ってることが、歌詞の中に入っている
ーーそして2曲目「体温」ですが、ピアノバンド、Omoinotakeにとっては初の楽曲提供になってます。
松尾:僕の近いところで言うと、(超特急のメンバーの)タクヤが出演していたドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のオープニングテーマを歌われていた方々なんですけど、デモを聴いた時に、こういう楽曲に初めて出会った! と感じて。
ーーこういう楽曲というのは?
松尾:ざらっとしたところから始まって、サビになったら気持ちが一気にぐいっと上がって。昂っている気持ちを表すような歌がありつつ、2A2Bの後に、2サビじゃなく、Dがくる。すごくイレギュラーな構成で、自分はすごくカルチャーショックを受けたんですね。これは、J-POPじゃなく、洋楽だなって。ブラックミュージックのテイストだなって思いましたね。
ーーメロディラインや構成は、本当に洋楽のR&Bバラードですよね。歌詞はどう捉えました?
松尾:「Magic」は高揚感あふれる曲だったけど、「体温」は、あの時は楽しかったね、幸せな日々が続いてたよねっていうことを頭の中で回想していて。そういう日々が続いてる中で、だんだんと君と離れていく。君の温もりが段々と感じられなくなっていく。もっと感じたいのになっていう葛藤もありながら、さっきのDメロ(落ちサビ)がくると、また違った主人公の決意表明があって。新しい道に歩いていこうって吹っ切れて。
ーー別れちゃってますよね。
松尾:ちょっとそういうふうに感じるなって思ってて。そう考えると、より人間性あふれる曲だなと思いましたし、「体温」っていう言葉をタイトルにしているのがまたいいですよね。
ーータイトルからだと温もりを感じるけど。
松尾:僕もそう思いました。いい意味で裏切られたなって。レコーディング当日は、Omoinotakeのみなさんも来てくださって。直接、いろいろとアドバイスをくださって。世界観が強い上に、歌詞もしっかりと書いてくださっているんですけど、言葉の運び方もこと細かく教えていただいて。あと、洋楽っぽい要素の一つとして、リズムの取り方もちょっと後ろの方が、歌った時にカッコいいなって思って、「Magic」と比べるとBPMもかなりゆっくりですし、自分の中で新しいグルーヴ感を模索しましたね。
ーー先ほどから上がっているDメロですが、ここは本当に歌もドラマチックですよね。
松尾:ここから一気に切り替わりますね。頭の中では、手を握っていたけど、Dメロでいきなり引き離された感じがして。切なくなりますね。
ーーピアノとスナップとボーカルだけになるから、一人になったことを音で表現しているようですね。
松尾:それぞれの解釈があると思うし、あんまり言葉にするのも難しいんですけど、体感的にはそういう風に感じる部分が大きかったですね。とにかく、僕にとっては初めての世界観だったし、今までやってきた楽曲のイメージとは全然違ったりするので、初めて聴いた方は驚くかなと思います。でも、本当に自分が今伝えたいこととか、リアルに思ってることが、かなりこの歌詞の中に入っているので、聴いてくれる方に汲み取ってもらえると嬉しいです。
ーー今、伝えたいことというのは?
松尾:ライブもできないし、ファンの方と直接会うこともできないじゃないですか。さっき言ったのは楽曲の解釈だったんですけど、見方を変えると、今は離れているけど、だからこそ、お互いの存在をより大切に感じることに気づけたっていうふうに伝えられる気もしてて。この曲を聴いて、自分もそうですけど、聴いてくれる方も、いつか会えることを楽しみにできるような、期待を胸にしっかり持てるような楽曲にもできるんじゃないかなと思っていますね。
ーーそう言われると、手をぎゅっと握り直してるようにも聴こえますね。ブギーファンク、R&Bバラッドときて、3曲目は?
松尾:僕が作詞作曲をやらせてもらうんですけど、今、構想としてあるのは、ミディアムバラード寄りかなって。大きなテーマで言うと、3月に出すものなので、春や桜をイメージしながら、これから新しいことに挑戦する人とかを強く励ます応援歌にしたいなと思っていて。今、作曲からやっているんですけど、本当にああでもないこうでもないってやっている最中で……。やっぱり、いいものを作りたいなっていう欲が出れば出るほど、すごく楽しくなりますね。曲ができたら、今度は、歌詞を書き出す時が本当に楽しくて。とにかく、今、考えているもので言うと、誰かを応援したりとか、段々と温かくなってくる季節に差し掛かる月といったものをしっかり反映した作品にしたいなっていう気持ちはありますね。
ーーその先の未来は何か考えてますか。
松尾:松尾太陽として、もっと色んな表現をしていきたいなと思います。超特急の方でも言っていることではあるんですけど、とにかく僕の2021年は、いろんな挑戦をする年にしたいなと思っていて。2020年、自粛期間を経て、僕はあそこまで活動を止めたのが初めてだったんですね。正直、何をやるべきか、あの時期にあまりピンとこなかった部分はあって。でも、そんな中でも、ソロでオンラインライブをやったり、ミニアルバムを出したり、アカペラ動画をアップしたりとか。自分の中では何かいいものと出会えるように、暗中模索の状態でやっていたんですよ。だから、2021年はこういうのがいいんじゃないかと思った欠片をいろいろと探して、集めて、パズルとしてバチっとはめていける年にしようと思って。これ苦手だな、嫌だなと思っていたこともやってみようって思っていて。
ーー苦手だなというのは?
松尾:できる/できないは置いておいて、作曲をギターでやっているんですよ。今まではどうせできないだろうと思って、やっていなかったんですね。でも、なんでもそうだけど、やってみないとできるようにもならない。だから、まずは、ギターを練習しようと思うし、歌詞ももっと書いていきたいから、言葉に深みを持たせたい。そのためには本を読んだりとか、いろんな引き出しを増やしていかないといけない。そういう意味では、本当にこの活動をする上で初歩的なことばかりですね。ギターと読書。あと、この仕事をしていて言うことではないかもしれないんですけど、パソコンを持ってなくて。
ーー意外ですね。作曲はDTMでやってるかと思ってました。
松尾:いや、ずっと携帯の録音機能を使ってやっていたんですよ。でも、それだとやれることが限られちゃうから。もっといろんな曲を作りたいなら、ギターだけじゃなく、パソコンもないといけない。とにかく2021年は色んなことに挑戦していこうと思っている年ですね。
ーー音楽活動以外では?
松尾:25歳になるので、20代の折り返しになってくるんですよね。……はっきりとは浮かんでいないけど、趣味を広げたい気持ちがあります。今、英語の勉強もしているので、もっと時間を費やしたいなと思いますね。あとは、レコードプレイヤーも欲しいな。流行っている曲も聴くけど、過去の曲も好きな曲が多いので、レコードを買って、アーカイブとして残しておきたい。僕、昔と今をインプットして、その間を表現するシンガーになりたいなと思うんですよね。そうすれば、より幅広い層の人に刺さる曲を作れるんじゃないかなって思うから。
ーー最初にもおっしゃってましたが、いろんなものを吸収するインプットの1年になりそうですね。
松尾:このお仕事ってすぐに身につくことはないし、一回入ったら底無し沼みたいに奥が深くて、なかなか抜け出せなくなるんですよね。それに、作詞作曲やソロ活動を始めた以上、音楽的な要素や知識、修行のようなことも、時間の合間を縫ってやっていく必要性もあるなって思っていて。もうプロジェクトとしては始まっている状況なので遅いんですけど、今からでもコツコツとやれることをしっかりとやっていきたいなと思いますね。そして何より、2021年はみんなの前でライブがしたいです。ソロでもみんなと直接会えるライブができることを強く願っていますね。
■リリース情報
「Magic」
2021年1月15日配信
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「体温」
2021年2月11日配信
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