長瀬智也×宮藤官九郎『IWGP』のオマージュも 『俺の家の話』明らかになった一家の秘密
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覆面レスラーの“スーパー世阿弥マシン”として期せずして人気を集めてしまった寿一(長瀬智也)は、家族にバレたら破門になるとひやひやしていた。そんななか、寿三郎(西田敏行)のエンディングノートの中に「寿限無のおとしまえ」という意味深な項目を見つける。一方で息子の秀生(羽村仁成)は、舞(江口のりこ)の息子・大州(道枝駿佑)と一緒に定期公演で舞台に立つことが決まるのだが、筋の良い秀生と比べられることに嫌気がさしていた大州は稽古をさぼりがちになってしまう。
2月12日に放送された『俺の家の話』(TBS系)第4話は、これまで“プロレス”“介護”“能”の三本柱が良い塩梅で絡み合って成り立っていた物語の流れを変えるかのように、“能”に大きな比重が寄せられたエピソードとなった。序盤から寿限無(桐谷健太)が語る、寿三郎がガールズバーで出会った女の子に「浮舟」の謡を送ったというエピソードしかり、「道成寺」の「鐘後見」についての解説もしかり。さらには寿限無が実は腹ちがいの兄弟であることを寿一が知るというメインエピソードも、「小袖曾我」が兄弟の物語であるということに器用に重ねられていく。
もちろん先週のエピソードから見られるようになった、登場人物の回想を能の舞台上で演目のようにして描くというスタイルも健在だ。寿一の母が里帰り出産で家を離れている間に、寿三郎は女中の栄枝(美保純)との間に子供をもうけ、それが寿限無であったという彼の出自の秘密が明らかになるのである。寿一と舞と踊介(永山絢斗)の三人きょうだいと寿限無の関係性に明確な変化が訪れたことは言うまでもなく、これは今後のエピソードに大きな影響をもたらすことになるのではないだろうか。
ところで今回の劇中、大州が能の稽古をサボって仲間たちと踊っている公園は、長瀬と宮藤官九郎の初タッグとなった『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)の舞台となった池袋西口公園だ。同作で長瀬演じるマコトが常にたむろしていた西口公園は、数年前に再開発で様相が一変。当時の面影はすっかりなくなってしまったわけだが、今回の劇中で大州を探しに寿一がやってくるシーンで、あえて『IWGP』のBGMを使われてしまったら、どうしたって鮮明に蘇るものだ。
しかも寿一は「カラーギャングに囲まれたら」とG-Boysの存在を示唆するセリフを発し、大州に「何年前の話だよ」と苦笑いされるときた。小ネタはそれだけにとどまらず、G-Boysを連想させる全身黄色い衣装を身につけた大州のチーム名は「YELLOW ANGELS」。これは明らかに『IWGP』の後半、西口を拠点とするG-Boysに対抗するために東口に出現した「BLACK ANGELS」を連想させるネーミングである(考えてみれば、O.S.D.のラーメン屋のシーンも『スープの回』を思い出させる小ネタかもしれない)。
おそらく長瀬の演技者としての花道になるであろう今回のドラマ。寿一が鐘後見として稽古中に目を開けたまま寝ているシーンは『うぬぼれ刑事』の第2話のクライマックスを連想させるものがあり、今後も宮藤とのタッグ作のオマージュがどしどし盛り込まれていくことに期待せずにはいられない。
■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
金曜ドラマ『俺の家の話』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村仁成(ジャニーズJr.)、荒川良々、三宅弘城、平岩紙、秋山竜次、桐谷健太、西田敏行
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未、佐藤敦司
編成:松本友香、高市廉
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS