ヒトリエ、indigo la End……バンドにしかできない表現突き詰めたアーティスト 新譜5作をピックアップ
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3人体制となって最初のアルバム『REAMP』をリリースするヒトリエ、結成10周年を経て新作『夜行秘密』を作り上げたindigo la End。バンドにしかできない表現を突き詰める5つのバンドの新作を紹介します!
精密かつ奔放に構築されたビートともに、オルタナティブロックの進化型と称すべきバンドサウンドが鳴らされ、感情剥き出しのボーカルがリスナーの胸に感動と興奮を刻み込む。3人体制となって初のフルアルバム『REAMP』によってシノダ(Vo/Gt)、イガラシ(Ba)、ゆーまお(Dr)は、新しいヒトリエの姿をダイレクトに提示してみせた。作曲はシノダが6曲、イガラシ、ゆーまおが2曲ずつ作(作詞はすべてシノダ)。鋭利なギターリフを軸にした「curved edge」(作曲:シノダ)、ドラマティックな旋律に胸を打たれる「イメージ」(作曲:イガラシ)、煌びやかなピアノロック「YUBIKIRI」(作曲:ゆーまお)など、3人の作曲家としての魅力が実感できるのも本作の魅力だ。wowakaの音楽的DNAを自らのフィルターを通しながら制作された本作は、“3人のヒトリエ”の未来を切り開くことになるだろう。
昨年10周年を迎えたindigo la Endのニューアルバム『夜行秘密』。ギターロック、ネオソウル、ファンク、歌謡などのテイストを吸収しながら、洗練と生々しさを共存させた楽曲に昇華させてきた彼ら。配信シングル「チューリップ」「夜漁り」「夜風とハヤブサ」「フラれてみたんだよ」「左恋」「夜光虫」「夜の恋は」を含む本作は、indigoの新たな高みを実感できる充実作だ(個人的ベストトラックは、80’sオルタナを想起させるギターサウンドが秀逸な「晩生」)。人と人との脆くて切ない関係性を描いた詩的なリリックもさらに深みを増し、ポップスとしての精度も向上している。バンドの絆、一体感といった曖昧なものに頼らず、優れた演奏家が集まり、純粋に良い音楽を目指す。そんなスタンスを貫きながら4人は、バンドという形態の音楽的価値を高め続けているのだと思う。
2021年にバンド結成10周年、メジャーデビュー5周年を迎えるSHE’S。アニバーサリーイヤーに向けた第1弾リリースとなる6thシングル『追い風』は、ピアノロックを軸にスタートしたこのバンドの音楽性が、さらなる多様性を帯び始めていることを告げる作品だ。表題曲「追い風」(ドラマ『青のSP(スクールポリス)ー学校内警察・嶋田隆平ー』主題歌)は、EDMとバンドサウンドを組み合わせたトラックとともに、〈生きていく者だけに吹く 追い風〉というラインが響き渡るアッパーチューン。繊細さと強い意思を共存させた歌、豪快なギターソロなど、SHE’Sの特徴がしっかり刻まれていることもこの曲の強さだ。カップリングには、ソウルミュージック、ゴスペルの雰囲気をたっぷり含んだミディアムチューン「Mirai」、生配信番組『SHE’S Room』のなかで視聴者と一緒に制作した「In Your Room」を収録。
〈悩みがあれば 僕をごらんよ/大抵の悩み バカバカしくなるよ〉(「トレジャーハンター」)。コミックバンドであることを自認し、プライドを持って活動してきた四星球の姿勢をわかりやすく示したこのフレーズから、本作『ガッツ・エンターテイメント』は幕を開ける。関わりのあるバンドマン、ライブハウス関係者、イベンターなど総勢100名以上がコーラス参加した「ライブハウス音頭」、ビクターロック祭りに捧げた「名犬ニッパー・ドッグンロール」、フラワーカンパニーズの名曲を大胆にパロった「早朝高速」、“予想していなかったことも楽しみながらやっていこう”と聴く者を鼓舞する「おもてたんとちゃう」。大笑いし、ときに涙がしながら、聴き終わったときには“いろいろあるけど、まあ、やるか”と思える。コロナ禍をタフに生き抜く、四星球にしか実現できないエンタメがここにある。
デビュー曲「Stay With Me」(TVアニメ『GRANBLUE FANTASY The Animation Season2』オープニングテーマ)、シングル曲「Maybe I」(TVアニメ『BORUTO-ボルト-NARUTO NEXT GENERATIONS』エンディングテーマ)を含むSeven Billion Dotsの1stフルアルバム。「HOPE」とタイトルされた本作には、硬質なギターサウンドと解放感に溢れたメロディを軸にしたポジティブソング「Dive!!」、キャッチーなギターリフとともに突き進むロックチューン「What Was That!?」、〈“ 希望 ”も居場所もここにある〉と真っ直ぐに歌うタイトル曲「HOPE」などを収録。生楽器とエレクトロを自然に融合させた音像、英語と日本語を織り交ぜたリリックなど、自らの独創性をポップに描き出している。Masafumi(Vo)のボーカルもきわめて魅力的。ネイティブの英語の発音、歌を丁寧に紡ぐ表現力を内包したスタイルからは、邦楽・洋楽の壁を超えるポテンシャルがはっきりと感じられる。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。