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オムニバス映画「十年」釜山映画祭で國村隼と柳英里紗が思い語る

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左から早川千絵、柳英里紗、木下雄介、國村隼、津野愛、藤村明世。

是枝裕和が総合監修を担当する「十年 Ten Years Japan」のワールドプレミアが、10月7日に第23回釜山国際映画祭で行われ、上映後のQ&Aに監督の早川千絵、木下雄介、津野愛、藤村明世、キャストの國村隼、柳英里紗が出席した。

2025年の香港を描いた「十年」の日本版となる本作は、“10年後の今”をテーマに、早川の「PLAN75」、木下の「いたずら同盟」、津野の「DATA」、藤村の「その空気は見えない」、石川慶の「美しい国」で構成されるオムニバス作品。

「いたずら同盟」で主演を務めた國村は会場に集まった多くの観客に感謝を述べ、「『十年』という映画は香港で始まったムーブメントですが、実は私は香港とは縁があります。香港が中国に返還される前、2、3年ほど滞在して5、6本の作品に出演しました。そのため『十年』という企画は自分にとって身近に感じることができ、木下監督にオファーをいただいたとき、ぜひ参加したいと思いました」と語る。

木下は「個人的なことですが、自分の息子が生まれて3日後にこのプロジェクトの話をもらい、そのときに10歳の子供を描こうと決めました」と明かし、「『十年』というのはあまり遠くない未来だと思うので、技術的なところも、自分の考えうる範囲で描いてみました。映画の中では、これが正しい、これが間違っているという価値観を決めつけず、行動していくことが未来を作り上げるということに重点に置いて表現しました。國村さんにはその手助けをしていただき、とてもうれしく思っています」と話した。

「美しい国」に出演している柳は「釜山国際映画祭は憧れの映画祭だったので、この場に立つことができてうれしく思います。『十年』というのは30年、40年離れた遠い未来よりも想像するのが難しいテーマで、でも面白く感じました。未来のことを深く考えられていない若い女性の役だったので、等身大で演じました」と笑顔を見せる。

早川は「『PLAN75』という安楽死を推奨するかのような制度ができて、命の価値が揺らいでしまうという10年後の未来を描きました。架空の世界ではありますが、今私たちが生きている世の中にも、その兆しを感じることがあります。高齢者に限らず、社会の役に立たない人は生きている価値がないという思想に対して恐れと憤りを持って、この作品を作ろうと思いました。映画の中では、そういった社会がいいか悪いかは提示していませんが、観た方がどういうふうに感じるかが大切だと思っています」と思いを吐露した。

津野は「『DATA』は記録と記憶のお話です。主人公の少女は母親の記憶をあまり持っていません。そんなときに、記録を信じていいのか、記憶を信じるべきかを迫られます。今私たちは情報や記録にまみれて生きていますが、これから先、記録というデータが多くなったとき、曖昧な記憶の存在を忘れてしまうのではないか、目に見えず残らないものを忘れてしまうのではないかという危機感を持ち、この作品を作りました」と説明し、「映画を作り、国境を越えてここに来て、皆さんに観てもらえたことは私の未来への希望です。映画を作り続けていきたいと思いました」と決意を表明した。

藤村は「その空気は見えない」について「2011年に起こった東日本大震災と原子力発電所の事故により放射能で空気が汚染され、私はそれを経て『空気が怖い』と思うようになりました。10年前は『空気が怖い』と思うことなんて想像できませんでした。もしかしたら、10年後は、空気から逃げて、地下に住む未来が来ることもあるのではないかと思い、このお話を作りました」と振り返り、「原子力による発電がよいことか悪いことか、自分の中では白黒はっきりできません。ただ、その事故のことは忘れないで生きていきたいと思っています」と真摯に述べた。

杉咲花、池脇千鶴、太賀も出演する「十年 Ten Years Japan」は11月3日より、東京・テアトル新宿、大阪のシネ・リーブル梅田ほか全国にて順次公開。

(c)2018 “Ten Years Japan” Film Partners