『おちょやん』が描く親子の在り方 後半の物語にもつながる一平の母親とは?
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長年いがみ合ってきた岡安と福富は、まさに水と油。その家の一人娘と一人息子が恋をした。菊(いしのようこ)から「あんたはうちにふさわしない」と拒絶されるも、ハナ(宮田圭子)から「幸せになり」と背中を押されたみつえ(東野絢香)は福助(井上拓哉)と駆け落ちをする。『おちょやん』(NHK総合)第54話では、鶴亀家庭劇の新公演「マットン婆さん」が上演となる。
先日、『おちょやん』が全115回、5月15日で最終回を迎えるという一抹の寂しさを覚えるニュースとほぼ同じくして、後半の物語のキャストが発表された。その中の一人が、一平(成田凌)の母親・夕(板谷由夏)。第54話には母親の無償の愛をトリの演目で描くことにこだわる一平に、千代(杉咲花)が「お母さんの話は聞いたことあれへんな。どないな人やったん?」と疑問に抱くセリフがある。一平はいつものようにうやむやにするが、このことが後のエピソードに繋がっていくのであろう。
「マットン婆さん」の稽古に臨むも、明らかに棒読みで上の空の千之助(星田英利)。「どうせまた無茶苦茶にして、一人だけ笑いとるつもりやろ」という一平の予感は、虚しくも的中してしまう。
台本にない芝居を始める千之助が展開していった物語は、しっかり笑いを交えつつも、一平が描きたかった母親の無償の愛を伝える泣き笑いのエピソード。
「ほんまのお母ちゃんの代わりに無理聞いてあげるんが、マットンの生きる喜びです」
それは「お前に親のお気持ちの何が分かるんじゃ」と一平の台本を否定していた千之助が、芝居で伝える親としての心情だった。
シズがみつえの着物をぎゅっと抱きしめ、娘を今でも宝物のように思っていることを千代は聞いていた。子を思う母親の姿。「悔しいけどこの芝居おもろいわ」と千之助の芝居を認める一平。ハッとした表情を浮かべ、千代はえびす座を勢いよく飛び出していく。
千代は舞台衣装を着たまま、道頓堀を疾走する。「スッスッハッハッ」の呼吸法……ではなく、千代が向かう先は、その思いを伝えるべき相手、みつえの元だ。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00~8:15、(再放送)12:45~13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30~7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/