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橋本愛、『THE FIRST TAKE』が話題に 「木綿のハンカチーフ」の物語を紡ぐ祈るような歌声

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リアルサウンド

 世界に繊細に反応し続けることを強いられる今、人と繋がることを、これほど思い焦がれた季節はなかったかもしれない。そんな日々を慰めるように、橋本愛が『THE FIRST TAKE』で歌った「木綿のハンカチーフ」が昨年のクリスマスに投稿された。思わず、涙を拭った。その歌声と表現力は多くの人の心に届き、2021年2月時点で260万回再生を超える。そして、2月19日には『ミュージックステーション3時間SP』(テレビ朝日系)にて地上波で初披露されることになり、音源の配信も決定した。

橋本愛 – 木綿のハンカチーフ / THE FIRST TAKE

 『THE FIRST TAKE』は2019年11月よりスタートしたYouTubeチャンネル。様々なアーティストたちが、「一発撮り」で歌声を披露するというまたとない試みが反響を呼んでおり、DISH//北村匠海の「猫」やLiSAの「紅蓮華」は1億回再生を突破した。橋本は、武部聡志の美しいピアノ演奏にのせて、作詞・松本隆/作曲・筒美京平という昭和歌謡の黄金コンビが生み出した太田裕美の名曲を歌った。離れ離れになった男女の思いが、歌詞を追うにつれて少しずつすれ違っていく「一つの物語のような曲」。橋本は囁くような優しいトーンで、その物語を紡いだ。「この白い空間だからこそ、視覚の情報が極力入ってこないので、歌の世界観に没入して歌えたと思います」とコメントしたように、二人の感情の揺れをつぶさに見つめながら、心を込めて歌う。終盤に向けては涙を堪える様も見受けられ、視聴者側も世界観に引っ張られていった。二人が幸せでありますように、と祈るような柔らかさに包まれた歌声はスッと胸を撫でる。まるで、私たちそれぞれにとっての大切な人、そしてどこかで暮らす、まだ出逢えていない大切な人にも思いを馳せさせてくれるように。時代に忙殺され、忘れかけていたときめきを、奪い返すように。

 橋本愛の歌声を聴いたのは、連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK総合)や映画『PARKS』以来だった、という人も多いかもしれない。しかし、最近の彼女は自身のInstagramのインスタライブにて、アコースティックギター片手に歌を届けることもあった。また、彼女が敬愛するシンガーソングライター・大森靖子の「堕教師」に歌唱参加。(インスタライブでも、大森の楽曲を幾度も歌った)当サイト(※1)にてコロナ禍中の2020年6月にインタビューした際には、「俳優じゃなくて創作者にならなきゃいけない」と語ったことが、形になってきている。その志を持ったきっかけは、様々あったのだろう。前述のインタビューでは、コロナによって世界も自分も停止してしまった感覚になったこと、絶望の淵に立つ誰かの命を救える一つの可能性として、表現することを選択したと橋本は話す。自身も映画をはじめ表現に救われた経験者として、芸術への絶対的希望と信頼を持って挑戦していると感じる。

「堕教師」

 一方で、「私は歌が好きです。大好きです。」(※2)という真っ直ぐな思いも彼女は携えている。2年ものラブコールから念願叶って実現した大森靖子との楽曲「堕教師」は、『THE FIRST TAKE』とは違うポップな歌声で、懸命であり無我夢中な熱量が伝わってきた。ジャンルは異なるが、大好きな洋服に身を包むSPUR.JPの連載『武装MODE』では、写真からはみ出しそうなほどのエネルギーを放つ。かつて連載していた雑誌『POPEYE』でも、彼女がカルチャーに対して紡ぎ出す感情の豊かさに圧倒されていたが、勢いはますます解放の方向へと向かっているように思う。現実と夢の世界線が曖昧だった光ある頃を思い出させてくれる、力強い表現。まるで、私自身を取り戻していく一端を、見せてもらっているようだ。橋本は今年、「歌を歌う活動を切り拓いていきたい」と自身の連載で語っていた。彼女の歌が地上波の電波を通じて広がっていく一夜が、とても待ち遠しい。きっと、誰かにとって、鮮明な夜になるはずだ。

■羽佐田瑶子
ライター。映画会社、訪日外国人向け媒体などを経て、現在はフリーのライター、編集。関心事はガールズカルチャー全般。主な執筆媒体はQuick Japan、She is、テレビブロス、CINRA.NETなど。Twitter:https://mobile.twitter.com/yoko_hasada

<参照>
※1:橋本愛が考える、コロナ以降の表現方法 「固定概念や現状を少しずつ変えていければ」https://realsound.jp/movie/2020/06/post-573505_3.html
※2:大森靖子の新曲「堕教師」に橋本愛が歌唱参加、「大森さんはいつも、私の夢を叶えてくれる人」https://spice.eplus.jp/articles/279093