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東野絢香が体現したみつえのわがまま 『おちょやん』第11週が描いた“母親の無償の愛”

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 “母親の無償の愛”という、一言では到底説明しきれない『おちょやん』(NHK総合)第11週。母親との記憶がほとんどない千代(杉咲花)と一平(成田凌)にとって、それを理解することは難しかったが、鶴亀家庭劇の新作公演「マットン婆さん」で思いがけぬヒントを得る。

 それはマットン婆さんを演じる千之助(星田英利)の「ほんまのお母ちゃんの代わりに無理聞いてあげるんが、マットンの生きる喜びです」というアドリブだった。どんなに無理を言われても、わがままな我が子の願いを叶えてあげたい。そんなマットン婆さんの思いは、かつて娘のみつえ(東野絢香)に新しい着物をねだられ、可愛さ故にあつらえてしまったシズ(篠原涼子)の心情と重なる。

 そのことに気づいた千代は、福助(井上拓哉)と駆け落ちしたみつえを追いかけ、何度でも無理を言い続けたらいつかシズは許してくれると説得した。なぜなら、シズはみつえのことが可愛くて仕方がない、子の幸せを願う“お母ちゃん”だから。もし駆け落ちしてしまったら、気持ちがすれ違ったまま、二度と会えなくなってしまうのだ。

 みつえは千代の言葉に心動かされると、そこにやって来たシズに福助との結婚について許しを請う。

「お母ちゃんを困らします。堪忍な、うちわがままな娘やねん」

 地面に膝をついてそう願うみつえの着物は泥だらけだった。どんなに成長して結婚するような年になっても、シズにとっては着物をねだってきた幼い頃からみつえは何も変わっていない。わがままを言って困らせ、心配ばかりかける。でも、マットン婆さんと同じようにそれがシズの生きる喜びなのだろう。

 シズは2人を連れて福富に乗り込み、みつえを嫁がせてもらうため菊(いしのようこ)に頭を下げた。菊もシズと同じように、ついつい子を甘やかしてしまう福助の“お母ちゃん”だ。無事にみつえと福助の結婚は認められ、福富で2人の祝言が挙げられた。そこではハナ(宮田圭子)と、疎遠になったまま亡くなってしまった母の代わりにと菊が盃を交わし、永きに渡って岡安と福富の間にあったわだかまりが溶ける。

 そんな幸せな風景を切なげに見つめる千代と一平。2人は芝居と今回の騒動を通じて“母親の無償の愛”を知ったが、マットン婆さんは千代たちが演じる子供たちと「血が繋がったお母ちゃん」ではないことを忘れているようだ。

 マットン婆さんが本当のお母ちゃんの代わりに子供たちの無理を聞いてあげたいと願ったように、千代と一平の周りには2人の幸せを願うたくさんの“お母ちゃん”がいる。千之助はぶっきらぼうだが、そのことを伝えるために台本を書き換えたのではないだろうか。千代と一平にしか理解できない孤独を癒すのは、ひと癖もふた癖もある不器用な愛情なのかもしれない。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/