森七菜 「人を好きになったら棒立ち状態」映画『ライアー×ライアー』インタビュー
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森七菜 撮影:小嶋文子
松村北斗(SixTONES)と森七菜がW主演を務める映画『ライアー×ライアー』が2月19日より公開。
恋愛経験ゼロの地味な女子大生・湊(森七菜)は、両親の再婚で義理の弟になった透(松村北斗)と同居中。だが、透のだらしない女癖が原因で、関係はギクシャクしている。そんなある日、友人の頼みでギャルメイクをした女子高生の格好をして街に出た湊は、そこで透と遭遇。とっさに別人だとウソをつくと、それを信じた透は、湊が扮装した女子高生の“みな”に恋をしてしまい…。
湊とみな。2役のようで、実は同一人物というキャラクターを演じた森は、難しさも感じながら、楽しかったと笑顔を見せる。現実にはあり得なさそうな設定に、森自身とは共通するところは少なかったという湊を、なぜ森はあそこまで共感度の高いものにできたのか。その裏側も含め、今作については、森自身の恋愛傾向などを語ってもらった。
湊とみなを演じてみて、頭で考えるお芝居がすごく多くなった
――完成した映画を観ての感想を教えてください。
もともと原作漫画を読んでいて、それ自体が素敵で面白くて、大好きな作品だったんです。そんな原作ファンと言っても過言ではない私が観ても、『ライアー×ライアー』の世界観が出ていると感じました。
原作から私が感じていたのは、他のラブコメとはまた違う形の非現実的なテーマというか。正直、変装した義姉に義弟が恋をしてしまう、みたいなことは漫画ならではだと思いますが、金田一(蓮十郎)先生の描くイラストやコマの書き方で、そこに親近感が沸くのが魅力だと思っていたんです。
だからそれを表現するのが、私たちの役目だとも思っていて。そしたら、観た方から「切なくなった」と聞いて、映画も近寄りやすい形になれたのかな、と思いました。
――一人の人物ではありますが“湊”と“みな”という2つキャラクターを演じるのはどうでしたか?
2役に見えて同一人物でもあるので、塩梅が難しかったです。あまり2つを切り離し過ぎても透との距離を詰めるときに引っ掛かってしまうし、自分の中で相談する場面がすごく多かったです。
そんな中で、透とみなが一緒に夜景を見るというシーンの撮影あって。セリフがアドリブだったんですけど、気付いたら「あそこ、真樹(堀田真由)ちゃんが美味しいって言ってたカレーやさんだ」って言ってて。
みなの状態なので、本当は湊の友達の真樹ちゃんの話をしてしまうのはダメなんですよ。でもそのときに、湊って普段こういう気持ちでいるんだな、と気づいて。そこから役への理解がさらに深まりました。
みなのギャル姿は自分でも「誰?」って思えた(笑)
――みなのギャルメイクや衣装の印象は?
湊とみなの気持ちの切り替えをするためにはすごく助けになりました。みなになるときは、毎回、「これから透と勝負をするぞ!」というような気持ちなので、あの格好になると、「やるぞ!」と、気合が入りました(笑)。
あとは自分が金髪になったらどうなんだろう?という興味もあったし、ギャルってもう日本を代表する文化の一つだとも思うので、それを体験できたのは大きな経験にもなったな、と思いました。
――自分で変身した姿を見たときはどう思いましたか?
びっくりしました(笑)。この物語において、湊とみなをちゃんとわけることはすごく大事なポイントだと思っていて、メイクさんともたくさん相談したい、と思っていたんですけど、最初にみなのメイクをした姿を見たときに、自分でも「誰?」って思えたので(笑)。そこを納得して作れたのは、大きかったと思います。
――今作で初挑戦だったことは?
ギャルメイク以外で言うと、原作に沿ってお芝居をする、ということですね。原作のままのセリフもあるので、仕草も原作に近くなるようにもしました。
キスをしようとしてくる透に対して、「ダメっ!」って避けるシーンも原作のまんまなんです。そういうところは、原作をコピーして台本にも貼って、いつでも思い出せるようにしていました。
やっぱり動きは自分から出てくるものが一番やりやすいんですが、それではなくて他に優先させるものに自分をなじませるという作業は初めてだったので、難しかったですけど、楽しんで演じることができました。
透にウソをついてはいるけど、それでも憎めなくて、みんなから愛されるところを大事にしたいと思って演じていました。
松村北斗さんは未だにどんな方なのかはつかめていない(笑)
――透役の松村北斗さんの共演前と後の印象を教えてください。
今回の共演前に、一度、音楽番組でご一緒したことはあったんですが、普段どんなことを考えていて、何が好きか、とかは全然知らなくて。役の上で弟として何年も一緒に住んでいる、という間柄だったので、松村さん自身のことも理解して、ナチュラルな関係を作れたらな、と思っていたのですが、いろいろ調べたものの、全然見えて来なかったんです!
どの現場に入るときも、共演者の方々を事前に調べさせていただいているんですけど、ここまでわからない方は初めてだったので、私が人見知りというのもあって、逆に怖くなっちゃっいました(笑)。
でも現場に入ると、松村さんスタッフさんとも仲良くしていて、周りからも信頼が厚く、尊敬できる方だな、と思いました。正直に言うと、未だにどんな方なのかはつかめていないんですけど(笑)。
――現場ではどんな話をしていましたか?
お芝居の話をして、わりと熱い話もしました(笑)。アーティストとしても活動されていますけど、お芝居に対してもすごく熱のある方で、一緒にお芝居をしていて心地良かったですし、助けていただくこともたくさんありました。
――2人で泣きながらお互いの思いをぶつけるシーンもありましたよね。
あの現場はかなり緊迫していました。私自身、『恋あた(ドラマ『この恋あたためますか』2020年10月期/TBS)』はありましたが、撮影はこちらが先だったので、王道のラブストーリーの主人公を演じることが初めてで。撮影直前まで、「好きな人のために涙を流すってどういうことなんだろう?」って感情がわからず、本当に演じられるのか不安で仕方がなかったんです。
でも現場で何回かリハーサルや本番を繰り返していくうちに、透の仕草を見て、すごく悲しくなって。好きな人と離れたり、別れたりするのが寂しいというのは、こういう気持ちなんだ、って理解ができたんです。
それはやっぱり松村さんが演じた透のおかげだと思うので、あのシーンは本当に助けていただいたな、と思います。お芝居を通してぶつかれた気がしました。自分が用意してきたものではなくて、その場で感じられたものを大事にできたので、あのシーンは演じていて楽しかったです。
――烏丸役の小関裕太さんの印象を教えてください。
小関さんはすごく大人な印象でした。音楽が好きで、私とは好きなジャンルは違うんですけど、その話をしたり、ピアノを弾いたことがあるという共通の話題もあったり。あとはボディパーカッションを教えていただいたりもしました。すごく楽しい方で、一緒に現場に入るのが楽しみでした。
優しいところや、いろんなところに気が利くところなどが烏丸くんと重なって、原作ファンの私としてもうれしい気持ちになりました。だからこそ、湊が烏丸くんもだましていることが、心苦しかったです。
――親友の真樹役を演じた堀田真由さんとは、ドラマ『3年A組 ー今から皆さんは、人質ですー』(2019年1月期/日本テレビ)に続く共演でしたね。
当時は生徒役のキャストさんも多くて、ほとんど話したことがなかったですけど、今回ご一緒して、初めて堀田さんが関西弁(滋賀県出身)だということに気づいたんです。その瞬間、ずきゅんと来て、「ヤバっ!」って思いました(笑)。もう大好きです。
話し方がすごく落ち着くし、一緒にいて楽しかったです。『3A』のときはドラマの内容的に現場が緊迫していて、今回はあのときにできなかった会話もたくさんできて、距離が縮まりました。
人を好きなったら、棒立ち状態になってしまう
――森さんお勧めのキュンポイントはありますか?
この映画は透が見せるツンとデレの対象が実は同じ人というのが良くて。映画を観ている人は湊とみなに同じように感情移入できると思うので、ツンとデレを両方味わえて、キュンキュンできるんじゃないかと思います。それはこの映画にしかない感覚だから、ぜひ味わっていただきたいです。
――森さん自身がキュンとした場面は?
予告編にも入っているのですが、透がみなに両手で手を振るところは、松村さんのアドリブで。松村さんにはクールなイメージを持っていたので、「こんなこともできちゃうの!?」という驚きもあり、キュンとしました。ただ、その意外な一面でより松村さんのことがわからなくなった、というのもありました(笑)。
――森さんにとってギャップはキュンポイントですか?
私は男女問わず、ナチュラルな雰囲気がある方に対して、仲良くなりたいな、と思うので、そういうギャップをナチュラルに見せられる人は、不思議で、面白い方だな、と思います。
――湊の恋愛傾向を森さん自身はどう思っていましたか?
ちょっと驚きというか……。結果的に流されることで、恋が動いていくんですが、私としてはあんなふうに流されてしまうのも、その果てに自分から歩み寄っていくことも驚きでした。私自身とは違うのかな、と。
――湊と同じ状況に陥る、ということは考えづらいと思いますが、自分を偽って出会ってしまった相手を好きになることはあるのかな?と思いました。その場合、森さんだったらどうすると思いますか?
私は人を好きになったら、そこから何かができるとは考えられないです。本当に棒立ち状態になってしまうので(笑)。好きになったら何もできずに、自分の気持ちが消えるまで、放っておくことしかできないです。
だから自分を偽って出会っていたとしても、そこから本当の自分を見せていこう、ということもできず、何か新しく着飾ってよく見せようということもできず……。なので、相手にとっては、そのときに出ていた私のままの印象で終わるんだろうな、と思います。
――計算する、なんてことはできない?
とてもそんなことはできないです。
――そうすると、そのときに出ていた森さんを好きになってもらうしかないですね。そんなことがあれば、超ラッキーだなっていう感じです(笑)。
――透のツンとデレはどちらの方がタイプですか?
あんなにツンとするのも「えっー」って思いますし、デレもあそこまでいくとさすがに重いとも思うので、中間がいいです(笑)。
ツンは、私は相手の気持ちに気づいて、愛想笑いをすることも素敵だと思うので、そのくらいはしてほしいです(笑)。
デレも携帯を買ってくれるとか、ちょっとびっくりしますよね。ただ透がやるとかわいいなとは思いますし、湊は結果的にツンもデレも両方経験できるので、ある意味中間で、あれがいいな、とは思います。
――烏丸くんのような気遣いタイプはどうですか?
素敵だと思います。ただ私が好きになる男性がいるとしたら、ドラマ『カルテット』(2017年1月期/TBS)で、松田龍平さんが演じていらっしゃった別府さんのような人です。ちょっと変人なんだけど、常識人。白いワンピースを着て、ナポリタンを食べていたら、さらっとエプロンをかけてくれるような人。つまり、別所さんがいいんです(笑)。ただあれは完全に(脚本家の)坂元裕二さんが精密に作り上げたキャラクターなので、幻想を抱いています。
――最後に今作の見どころを教えてください。
とにかく、楽しむ気持ちを持って劇場に来ていただければ、と。予告編からも感じるテンポの良さや、面白さをそのまま信じていただければ、きっといい意味で期待を裏切られてお帰りいただけると思います(笑)。
変装した姉と義理の弟の恋なんて、あり得ない!と思う一方で、森さんが言うように「親近感が沸く」のが今作の魅力。そんな親近感は、森さん自身が本来持つものに、原作を参考にしながら緻密につくられた演技によって実現できたのだと、改めて話を聞いて感じました。ぜひ劇場で自分のことのようにキュンキュンしながら観てほしいです!
取材・文:瀧本 幸恵
撮影:小嶋文子
ヘアメイク:池田ユリ(eclat)
スタイリスト:申谷 弘美(Bipost)/Hiromi Shintani
『ライアー×ライアー』
2021年2月19日(金) 全国ロードショー
フォトギャラリー(15件)
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