Kis-My-Ft2 玉森裕太、多くの視聴者ときめかせる『ボス恋』での好演 主題歌「Luv Bias」の魅力と共に紐解く
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毎週火曜の23時少し前、堰を切ったかのようにSNSが動き出す。『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系、以下『ボス恋』)の感想や、胸キュンシーンの反芻……面白いドラマは、放送終了後からが忙しい。誰かと分かち合わなければ、語り合わねば眠りにもつけないほど、『ボス恋』は今、多くの視聴者をときめかせている。
昨年、同枠で放送され、社会現象を巻き起こした『恋はつづくよどこまでも』(TBS系、以下『恋つづ』)のスタッフが再集結した本作。主演には『恋つづ』に引き続き上白石萌音を起用し、共演には菜々緒と、同性からも絶大な支持を集める魅力的なキャストが揃った。
必然的に揃えられたいくつものピースが、運命的にカチッとハマる。そうして生まれた『ボス恋』旋風。なかでも大きなピースを握っているのが、Kis-My-Ft2の玉森裕太演じる宝来潤之介の存在だ。
潤之介は、玉森のパブリックイメージに近い役どころ。愛らしいルックス、醸し出すふんわりとした雰囲気、憎めないマイペースな部分……一般視聴者はもちろん、玉森をよく知るファンから見ても、玉森と潤之介には重なる部分が多いと感じているだろう。しかし自身のイメージに近いキャラクターを演じるというのは、難しい作業だ。
なぜなら、玉森裕太ではなく、宝来潤之介の言動が視聴者の目に愛おしく映らなければならない。そこをうまく演じているのは、やはり役者・玉森裕太の力量によるところが大きい。視聴者はちゃんと「潤之介」に振り回され、ときめいている。それでいて、その飛びぬけた透明感と純度は、さすがKis-My-Ft2のエース。その求心力にはたびたび驚かされる。
おおらかな性格の潤之介だが、大企業の御曹司として、きっとこれまでいろんなことを受け止め、咀嚼し、我慢もしてきたことだろう。だからこそ潤之介が放つ言葉は、まっすぐで深い。
「夢ってさ、なきゃいけないのかな? 夢を持ってる人を否定しないけど、別になくたっていいんじゃないかな?」
奈未(上白石萌音)がこの言葉に救われたように、潤之介にとっては何気ないかもしれない言葉のひとつ一つが、視聴者の心をも温める。そんなところも、玉森が持つ芯の強さと言葉の力に重なる。
劇中では、玉森が犬の耳やしっぽを身に着けて演じるコミカルなシーンも。気のせいか、最近ではそれらを着けていないときでも、潤之介が喜べばピンと立つ耳が、いじけたときにはシュンと折れた耳と下がったしっぽが見えるようになってきた。
子犬系男子とは言い得て妙。くるくる変わる表情、奔放で優しい性格、心許したときの人懐っこさ……そんな愛らしさが心をくすぐり、ふとしたときに見せる男らしさに胸が高鳴る。玉森が愛される理由を存分に落とし込んだ役こそ、潤之介であると言えよう。
人が人を好きになる。その過程と瞬間こそ、ラブストーリーの要である。現実では、多くの場合「いつの間にか」育まれている“好き”という感情を、第三者に分かる形で、なるべくロマンチックに、なおかつ自然に描かなければならない。脚本、演出、なによりキャストの力量が試される。『ボス恋』第3話では、潤之介が恋に落ちる、まさにその“瞬間”が美しく描かれていた。
雪のちらつく帰り道。奈未は、潤之介の作品を「変なのばっかり」と屈託なく笑いとばす。潤之介にとってそれは、誰も言ってはくれなかった言葉たち。“宝来家の御曹司”という、逃れようのない肩書きに隠されてきた本当の自分を、奈未は見つけてくれた。
〈僕の前に現れた君は 日々の空のようにただ青くて 美しくって〉(Kis-My-Ft2「Luv Bias」歌詞より抜粋)
快活な奈未の遠慮のなさが嬉しくて、可笑しくて、潤之介は笑う。自分の言葉がどれほど潤之介に響いたかなど、奈未にはまるで分からない。
「どうしよう……」
今まさに芽生えた感情に戸惑う、印象的な潤之介の言葉。それでも奈未を見つめる瞳には愛しさが宿っていた。奈未の手を包む大きな手から、額に触れた唇から、想いがこぼれている。まさに「人が人を好きになる」、その瞬間が映し出されていた。
ストーリーが大きく動くこのシーンをより美しく印象づけたのが、Kis-My-Ft2が歌う主題歌「Luv Bias」だ。潤之介が駆け出す瞬間、心が動くその瞬間に、想い溢れるサビが重なる。煌めく映像と音楽、すべてがマッチした名シーンだった。
劇中では「Luv Bias」のピアノ&ストリングスアレンジも、キャラクターの心情に寄り添う。切なく美しいインストゥルメンタルから、力強い歌声に切り替わるそのとき、視聴者の心は物語の奥深くへと誘われる。
ヒット作と名主題歌は、いつの時代もワンセットだ。それこそ『恋つづ』を思い出せばOfficial髭男dism「I LOVE…」が頭の中に流れ出すし、逆もまた然り。主題歌は、作品を盛り上げ彩るだけでなく、いつまでも、誰かにとっての宝物であり続ける力を持つ。
『ボス恋』旋風は本物だ。「Luv Bias」も、人々の記憶に残り続ける1曲になると確信しているし、本作の主題歌を務めた経験は、Kis-My-Ft2にとっても大きな財産となるに違いない。
■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter(@akino_ippo)