坂道グループはなぜフォークソングを歌う? WHITE HIGH、花ちゃんズ……歴代楽曲で描かれたメンバーの成長
音楽
ニュース
乃木坂46の大園桃子と遠藤さくらによるユニット曲「友情ピアス」のMVが公開された。
今年2月上旬にライブハウス下北沢SHELTERで撮影された映像で、この日のために2人は数カ月間ギターの練習を行ない、ギターの弾き語りに臨んでいる。大園は昨年の『乃木坂46時間TV』で大きな感動を呼んだ奥華子「変わらないもの」のカバーを、遠藤は個人PV「わたしには、なにもない」で披露していた歌声を共に思い起こさせる透明感を持ち合わせている。MV公開前には“ももさく”コンビでのSHOWROOM『のぎおび』配信が行われていたが、「友情ピアス」のMVにも流れている2人のほんわかとした心温まる空気感と大園がお姉さんであり先輩として先導している姿は、改めて彼女の成長を実感させられる部分であった。
そんな「友情ピアス」は、大園と遠藤の初ユニット曲であり、乃木坂46の新たなフォークデュオの誕生とも捉えることができる。乃木坂46でアコギと言えば、白石麻衣と高山一実のユニットWHITE HIGHによる「渋谷ブルース」である。この曲は『乃木坂46 1ST YEAR BIRTHDAY LIVE』から披露されているグループ初期を代表するナンバーで、深川麻衣と橋本奈々未がサポートメンバーとしてアコギで参加。年を重ねる毎に、演奏の上達とパフォーマンス終わりのやり取りも徐々に形成されていき、卒業によるメンバーの入れ替わりから、現在では松村沙友理と向井葉月がその役割を担っている。ちなみにそれぞれの愛称は松村が「リンゴー」で、向井が「ボンバー」。ファンからも人気が高く、白石の歌唱力が存分に発揮される楽曲だった「渋谷ブルース」は、彼女の卒業コンサートでも披露された。さらに昨年末の配信ライブ『乃木坂46 4期生ライブ2020』でも、柴田柚菜と弓木奈於(しばゆみコンビ)が歌う「渋谷ブルース」に、掛橋沙耶香と筒井あやめ(おかけとおつつ)のアコギ伴奏がパフォーマンスされている。
坂道グループ全体に視野を広げると、欅坂46(現:櫻坂46)の小林由依と今泉佑唯による「ゆいちゃんず」、日向坂46の富田鈴花と松田好花による「花ちゃんズ」のフォークデュオがある。今泉の卒業、櫻坂46への改名によりその活動に幕を閉じたゆいちゃんずは、短い期間ながら「渋谷川」「ボブディランは返さない」「チューニング」「1行だけのエアメール」「ゼンマイ仕掛けの夢」と5曲もの持ち曲を与えられる人気ユニットだった。『欅坂46 THE LAST LIVE』では、小林が今泉の意志を継ぐ形で「渋谷川」を一人で弾き語りしている。
そして、花ちゃんズは、けやき坂46時代から富田と松田が組んでいたユニットで、日向坂46の3rdシングル『こんなに好きになっちゃっていいの?』で晴れて初の楽曲「まさか 偶然…」を与えられた。昨年3月には、弓木英梨乃(KIRINJI)をゲストに迎えたMTVによる招待制ライブイベント『MTV ACOUSTIC FLOWERS -Bell & Like-:富田鈴花・松田好花 (日向坂46)』の開催が決まっていたものの、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2021年に開催延期となっている。しかし、その間も『ギター・マガジン・レイドバックVol.4』の表紙を2人が飾ったり、昨年末の配信ライブ『ひなくり2020~おばけホテルと22人のサンタクロース』では活動を休止していた松田の復帰ソングとしてメンバーに囲まれながら「まさか、偶然…」が披露されていたりと、花ちゃんズの絆はさらに強固なものとなっている。
3坂道に共通して存在しているフォークデュオの存在。ライブ自体にバリエーションと緩急を持たせることができる上に、メンバーの努力と成長が分かりやすく反映されるという観点からも、グループ初期から組まれているのかもしれない。また、乃木坂46においては今年で結成10周年。4期生のみでの「渋谷ブルース」や大園と遠藤の「友情ピアス」は、また新たなタームに入ったと見ることもできるだろう。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter:https://twitter.com/AKI_W_