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『おちょやん』千代の弟・ヨシヲを演じる倉悠貴とは? “空白の時間”をどう表現するのか

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リアルサウンド

 『おちょやん』(NHK総合)第12週目は、「たった一人の弟なんや」というサブタイトルの通り、主人公の竹井千代(杉咲花)と弟のヨシヲ(倉悠貴)の再会が描かれる。

 そもそも父親・テルヲ(トータス松本)が連れてきた後妻の栗子(宮澤エマ)と反りが合わず半ば追い出される形で奉公に出された千代だったが、弟のヨシヲとはそれっきり音信不通。

 母親が亡くなった際にまだ幼く実の母の記憶のないヨシヲは栗子に懐いたため、千代が頭を下げて「ヨシヲのことは追い出さんとったってください」と土下座して頼み込む姿も胸が痛いものがあった。

 ただ千代は、奉公先に現れたテルヲの口から、ヨシヲは家を出て行ってしまったことを聞かされる。快活な千代の後ろを連いて回り、いつもお腹を空かせ、千代が奉公に出る際には「姉やん! 姉やん!」と大声で叫んでいたヨシヲだったが、朝ドラ史上最悪のダメ親と名高いテルヲの下で過ごすのはさぞ大変で苦労続きだったことだろう。

 そんな安否不明だったヨシヲの再登場にネットも歓喜に沸いている。さらにその再登場に注目が集まっているのが、青年になったヨシヲを演じる新人俳優・倉悠貴という新星の存在。どこかアンニュイな雰囲気を纏いながらも射抜くようにこちらを眼差す視線に惹きつけられた人も少なくないだろう。時に、中性的にも感じられる佇まい、とても“今”っぽいのに、どこか“懐かしさ”も感じさせる独特な空気感を放っている。

 2018年に芸能界入りし、2019年に『トレース〜科捜研の男〜』(フジテレビ系)で俳優デビューを果たし、『his〜恋するつもりなんてなかった〜』(メ〜テレ系)ではW主演を務め、初主演にしてLGBTを題材に扱った繊細な男子高校生の恋物語を見事好演した。年相応の“子どもっぽさ”とふとした瞬間に見せるとてつもない色香を漂わせる“大人っぽさ”を共存させ、印象的な瞳で語りかけるその「アンバランスさ」がとても魅力的だった。

 さらに、女優の池田エライザの初監督作品『夏、至るころ』で倉は映画初主演に抜擢される。凄まじい躍進である。進路や自分のやりたいことに悩み揺れ動く高校3年生の“あの時”“あの瞬間”にしか見られない“自分一人が世界から置いてけぼりにされている”かのような焦燥感や、まだ“何者でもない”不安定さと“何者にでもなり得る”真っさらさ、そしてどちらにも転がることができる危うさをよく投影させられていた。

 これまでも本当に繊細で瑞々しい感情描写を特に必要とされる役どころが多かった倉が、本作で見せてくれるヨシヲは、千代と会っていない間、どこでどんな風に過ごし、何を想ってきたのか。ある意味、親元を離れることができ「出ていく側」だった千代に対して、「残される側(置いていかれる側)」だったヨシヲは実際のところ千代に対してどんな感情を抱いているのか。会えなかった“空白の時間”のヨシヲの境遇をきっと凝縮して魅せてくれるのではないだろうか。

 また成田凌との共演は『おちょやん』だけでなく、間もなく公開される映画『まともじゃないのは君も一緒』でも観られるようだ。倉悠貴が残していってくれるだろう余韻に期待しかない。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/