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『青天を衝け』巧みな時間変化の演出 笑顔の吉沢亮、無表情の草なぎ剛の対照的な姿も

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リアルサウンド

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第2回「栄一、踊る」では、数年の歳月が経ち、キャストの多くが子役から青年役へと成長を遂げる。

 全編43分の放送時間の内、30分ちょうどに時が過ぎ去る演出が来るのにもこだわりを感じさせたが、栄一であれば小林優仁から吉沢亮へと自然な流れでバトンタッチしていったのも美しかった。それは晩年まで栄一が愛し、現在も「血洗島獅子舞」として地元の人々に引き継がれている獅子舞を踊るシーン。

 藍の刈り取りに養蚕、お代官の命により人足仕事も加わり多忙を極めた6月。栄一自身、疲れているのにも関わらず、みんなを楽しませたいという一心で喜作(石澤柊斗)と一緒に「五穀豊穣」「悪疫退散」を願ってステップを踏む。それは「あんたが嬉しいだけじゃなくて、みぃんなが嬉しいのが一番なんだで」という、母・ゑい(和久井映見)の教えからの行動。その年はできなかった祭りが、数年後にはめでたく開催。そこには栄一と喜作の姿が。彼らの表情が分かるように獅子舞の中を映し出し、小林優仁から吉沢亮へとシームレスに移り変わっていくのも見事だ。

 栄一だけでなく、ほかのキャストもすくすくと成長し、喜作は高良健吾、千代は橋本愛、長七郎は満島真之介とメインキャストがずらっと顔を揃える。剣術に読書にと励む栄一らの元に、千代と一緒にやってきた平九郎(高木波瑠)は後に岡田健史が演じることとなる尾高家の末っ子だ。また、ここでは栄一、喜作、千代の三角関係も仄めかされている。「器量よし」と千代を褒める喜作に、千代をじっと見つめる栄一。千代を目の前にして幸せにすると誓っていた幼少期を考えると、栄一も思春期を迎えたと捉えるべきか。

 一方、慶喜(笠松基生)も家慶(吉幾三)から実の息子のように可愛がられながら、青年へと成熟していた。笠松基生から草なぎ剛への入れ替わりは、栄一の獅子舞を彷彿させながらも慶喜の二面性を映し出した演出。家定(渡辺大知)ではなく、ゆくゆくは壮健な慶喜が徳川家の跡継ぎとなることを家慶から遠回しに告げられ「ありがたき幸せに存じ上げまする」と頭を下げる慶喜と、能を舞い面を外した後の表情は対照的だ。能面を外しながらも、さらに仮面を被った表情を浮かべる草なぎの演技は、いまだ得体の知れない慶喜の恐ろしさを際立たせている。

 そして、第2回のラストを飾ったのはペリー(モーリー・ロバートソン)。幕府に開国を迫り、後に日米和親条約を締結させるアメリカ海軍の司令官である。「向かうは江戸。日本よ、待ってろよ」と黒船から遥か島国を望むペリーと同じくして、栄一も市郎右衛門(小林薫)と江戸へ向かうことが決まり嬉々としていた。

 第3回「栄一、仕事はじめ」では、ペリー来航と将軍になることを拒む慶喜、さらに慶喜の側近として第1回冒頭にも姿を見せていた平岡円四郎(堤真一)が本格登場となる。“日本資本主義の父”と呼ばれることになる栄一が、念願の初仕事で体得したこととは。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『青天を衝け』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00~放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00~放送
出演:吉沢亮、小林薫、和久井映見、村川絵梨、藤野涼子、高良健吾、成海璃子、田辺誠一、満島真之介、岡田健史、橋本愛、平泉成、朝加真由美、竹中直人、渡辺いっけい、津田寛治、草なぎ剛、堤真一、木村佳乃、平田満、玉木宏ほか
作:大森美香
制作統括:菓子浩、福岡利武
演出:黒崎博、村橋直樹、渡辺哲也、田中健二
音楽:佐藤直紀
プロデューサー:板垣麻衣子
広報プロデューサー:藤原敬久
写真提供=NHK