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『半径1メートルの君』は今こそ観たい作品に 豪華制作陣が伝える人の“温度感”

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リアルサウンド

 近くにいる誰かを大切にできているだろうか。つい忘れてしまう感謝の気持ち、ふと感じる愛情、誰かを慕う心。そんなかけがえのない想いを描いた作品が2月26日に公開される。『半径1メートルの君〜上を向いて歩こう〜』は、8組24名の人気俳優、吉本タレント、クリエイターが織りなすオムニバス作品だ。新型コロナウイルスの影響で撮影中断や公開延期が余儀なくされた映画業界に、「前向きで、世の中に元気を届ける」、「エンタメの炎を絶やさない」という想いのもと誕生した本作では、まさに“密”な人間関係が描かれる。各話約10分で紡がれた『半径1メートルの君〜上を向いて歩こう〜』は、昨今のピリピリとしたムードを吹き飛ばすがごとく、笑顔とハートフルな温かさを届けてくれるのだ。

 新型コロナウイルスが我々の生活にもたらした代償は大きい。人と接触できない日々が続き、コミュニケーションは徐々に疎遠に。本来人々に元気を与えるべくエンタメも、映画を筆頭にその勢いを失う経験をする。リモートワークでのコミュニケーション不足や、オンライン授業のせいで友人と遊べない辛さ、我々は改めて“人と人”が触れ合うことで感じる体温にどれだけ元気と勇気をもらってきたのかを気付かされる。『半径1メートルの君〜上を向いて歩こう〜』はまさに、そんな暖かさを、映画を通して再確認するかのような作品だ。各話ごとに2人の主人公が出演し、そのほとんどがワンシチュエーション。近距離での“心の濃厚接触”を描くハートフルな作品群からは、まるで乾いた心に水が染み渡るように、いきいきとしたエネルギーが感じられる。オムニバス作品は全部で8本。それぞれの演者は、人気俳優×よしもとタレントという掛け合わせ、脚本には『半沢直樹』(TBS系)の丑尾健太郎、ヨーロッパ企画の上田誠、ピースの又吉直樹など豪華クリエイター陣が揃い、作品を牽引する。

 さらに今回が映画初脚本となるジャルジャル・福徳秀介と3時のヒロイン・福田麻貴、そして映画初監督・脚本となる霜降り明星の粗品など、よしもとタレントの新たな才能を開花させる企画にもなった。ジャルジャル・福徳秀介は相方の後藤淳平を演者に迎え、白石聖との思わず“キュン”とする作品を描いた。3時のヒロイン・福田は、芸人の中でも特に演技力を評価される南海キャンディーズの山崎静代と、NHK連続テレビ小説『エール』でも活躍した松井玲奈を演者に迎え、温かい姉妹の物語を紡ぐ。それぞれが持ち味を生かした演出や脚本で挑み、「笑い」とはまた違ったアプローチで世の中に元気を届けてくれるのだ。

 そして、見どころはクリエイター陣ばかりではない。演者には今をときめく俳優やよしもとタレントが名を連ねる。ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)で新境地を開いた小池徹平が関西弁で、シソンヌ・じろう演じる芸人のマネージャー役を演じるなど、思いがけないコラボレーションがスパイスとなり作品を彩っている。さらにハリセンボン・近藤春菜と共演したのは水川あさみだ。プライベートでも親交のある2人は、Instagramでコラボライブ配信をするほどの仲。ふたりの生み出す“おっちょこちょい”な物語にも注目したい。他にも2019年に『PRODUCE 101 JAPAN』で101人中1位となりJO1のセンターを務める豆原一成とNHK大河ドラマ『麒麟がくる』で好演を見せた岡村隆史のタッグ、現在『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)に出演中の倉科カナとチュートリアル・徳井義実の「優しい」物語、ラッパーの般若とロバート・秋山の熾烈なMCバトルなど、それぞれの作品に個性と愛が詰まっている。8組のクリエイターと演者が「元気を届ける」ためにどんな作品で挑んできたのか。そして豪華俳優陣とよしもとタレントのテンポの良い掛け合いがどのようなハーモニーを生み出しているのかは、ぜひスクリーンで見届けてほしい。

 そんな8作の中で、特に触れておきたい作品がある。3時のヒロイン・福田が脚本を務める『とある家のこと』だ。初脚本にしては入念に練り上げられ、山崎演じる姉と松井演じる妹が生きてきた背景を、自然に、そして綿密に描き出す。これにより彼女たちが辿った人生に、目の前に流れている映像以上の存在感を感じさせてくれるのだ。そして描かれる思い出たちは色とりどり、華やかに脳裏に浮かぶ。そんな表現力に満ちた優しい言葉のセンスが光る作品であった。また、本作は山崎と松井の演じる姉妹の距離感も絶妙なのである。必要以上の仲良し姉妹というわけではないのだが、その奥底にある固い絆を感じさせる芝居が心にジンジンと響いてくる。体格にも、役の性格にも差のあるふたりが、どこから見ても本当に血の繋がった姉妹でしかないという不思議な感動をぜひスクリーンで味わってほしい。

 さらに『まわりくどい二人のまわりくどい気持ちの伝え方は大胆でむしろまわりくどい』にも思わぬ仕掛けがあり、つい心が高鳴る。白石とジャルジャル・後藤の演じるふたりを、この先もずっと見届けたいと思うほど濃密な作品だ。カフェの常連客と店主という間柄でありながら、少し“特別”なふたりは夜のカフェで他愛もない会話を繰り広げる。その会話の端々から伝わる柔らかい熱と少しの緊張感は、まさに「今」触れたい温度感だろう。緊急事態宣言で飲食店での出会いも少ない中、忘れかけていた温かさを取り戻したような気がした。

 「元気を届ける」のテーマの元に、明るく前向きになれるような作品が揃う『半径1メートルの君〜上を向いて歩こう〜』は、声を出して笑い、元気になれるような作品から、思わずじんわりと涙が溢れる温かい作品まで、多くの観客の気持ちに寄り添うオムニバス映画となっている。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■公開情報
『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』
2月26日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

『本日は、お日柄もよく』
出演:岡村隆史(ナインティナイン)×豆原一成(JO1)
脚本:丑尾健太郎
監督:山内大典

『同度のカノン』
出演:海宝直人×亜生(ミキ)
脚本・監督:粗品(霜降り明星)

『やさしい人』
出演:倉科カナ×徳井義実(チュートリアル)
脚本:高須光聖
監督:山内大典

『真夜中』
出演:小池徹平×じろう(シソンヌ)
脚本:又吉直樹(ピース)
監督:紙谷楓

『まわりくどい二人のまわりくどい気持ちの伝え方は大胆でむしろまわりくどい』
出演:白石聖×後藤淳平(ジャルジャル)
脚本:福徳秀介(ジャルジャル)
監督:山内大典

『戦湯~SENTO~』
出演:般若×秋山竜次(ロバート)
脚本・監督:品川ヒロシ

『とある家のこと』
出演:松井玲奈×山崎静代(南海キャンディーズ)
脚本:福田麻貴(3時のヒロイン)
監督:紙谷楓

『バックヤードにて』
出演:水川あさみ×近藤春菜(ハリセンボン)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
監督:紙谷楓

主題歌:「上を向いて歩こう」斉藤和義(SPEEDSTAR RECORDS)
企画・製作・配給:吉本興業
制作プロダクション:共同テレビジョン
(c)「半径1メートルの君~上を向いて歩こう~」製作委員会
公式サイト:https://hankei1m.official-movie.com
公式Twitter:@hankei1m_movie