武部柚那、SWEET REVENGEで世界へ発信 新たなスタートラインに懸ける想い
音楽
ニュース
武部柚那(ex.E-girls/スダンナユズユリー)が昨年末、新たなダンス&ボーカルグループ・SWEET REVENGEの一員として活動していくことを発表した。武部以外のメンバーは東京生まれのASAMI、オランダ出身のLARISSA、AGNES、ESMEEの4人。彼女たちは世界8都市で開催されたLDH EUROPEのオーディションで選ばれた精鋭である。グループとしてはコロナ禍の影響で本格始動に至ってはいないが、世界展開を視野に入れた活動が今後に予定されており、現在はその準備期間だ。
この日々を武部は、歌とダンスのレッスンや語学習得に費やしているという。渡米した時に「自分の知らない大きな世界がある」と思い至った彼女は、新グループへの加入のなかで自分を見つめ直し、次のレベルへ踏み出そうとしていた。彼女にとってのSWEET REVENGEはただのリベンジや再挑戦ではなく、新しいスタートなのである。そんな未来を見つめる武部に新プロジェクトと今後の展開について話を聞いた。(編集部)
「自分の知らない大きな世界がある」
ーーInstagramにラストライブの画像とともに「I’ll keep on singing」と綴られていましたが、E-girlsが落ち着いた現在の心境は?
武部柚那(以下、武部):今はレッスンを受けて、歌ったり踊ったりしてます。ですが、なかなかファンの方々に届ける場もないですし、準備もできていません。もっと成長した姿を見てもらいたいという気持ちがあるのでとにかく努力しかないですね。少しでも早くメンバーと一緒にSWEET REVENGEとして発信をしたいです。
ーーオランダのメンバーのみなさんはどんな状況ですか?
武部:オランダは現在、厳しいロックダウンの最中です。どんな曲がグループに合うのかを模索中なので、選んだ曲をオランダと日本で練習したりしていました。2月には仮で歌をレコーディングする予定です。ASAMIちゃんは年末に日本に戻って来て一緒にレッスンを受けています。彼女とLARISSAはラップもできるので、それを取り入れたSWEET REVENGEらしさを見つけられたらいいですね。
今は曲を作るのが目的というよりも、自分たちらしさを見つけるために作るという感じ。みんなが好きな音楽だったり、グループとして合いそうな曲を挙げて話し合って、そこから徐々に形にしている段階です。直接お互いを知っていく上でまとまってくるものもあるはずなので、早くみんなと直接会って話したりしたいです。
ーー今取り組んでいる曲などのビートメイカーも海外の方ですか。
武部:絞っているわけではありませんが、海外の方のものが多いですね。パート分けもバランスを見ながら決めていったりして。週に1度、リモート会議があるんですよ。オランダと日本、LAにいるスタッフさんも含めて3カ国から繋げてやってます。みんな英語で話すので、私は別のスタッフの方にテレビ電話で訳してもらいながら参加してます。
毎日、英会話を習っていて、ある程度の日常会話はできるようになってきましたが、スピードとビジネス単語が難点ですね。ただ、メンバーのみんなに直接会ったのが約2年前で、それから英語を約1年間学んだので、コロナ禍が落ち着いて再会したら前よりもコミュニケーションが取れるんじゃないかなと、楽しみでもあります。
ーーでは、SWEET REVENGEを立ち上げることになった経緯を改めて教えてください。
武部:2年前にHappinessのメンバーと人生で初めてLAに行って、アーティストとしての夢や視野が日本だけじゃなく世界にまで広がったんです。すでにE-girlsの先行きについての話も出ていて、これからどうするかを考えていた時でしたが「自分の知らない大きな世界がある」と痛感しました。
ちょうど帰国したら、今のSWEET REVENGEのメンバーが合宿に来ていたんです。その最後の日にEXILE HIROさんとVERBALさんが参加するお披露目会があって、私も生でパフォーマンスを見て衝撃を受けました。デビュー前の自分のパフォーマンスを考えると、彼女たちは完成されていたし、海外の子たちが日本でレッスンを受けてグループを作るというのが新しかった。海外を見てきたばかりの自分から見て、そこに可能性を感じたんです。
ーーなるほど。
武部:それから彼女たちとご飯に行ったり、コミュニケーションを取らせてもらったのですが「夢を叶えたい」という気持ちがあふれて、キラキラしてるんですよ。その真っすぐな姿を見て、もうこれは直接オランダに行くしかない、E-girlsの仕事も落ち着いていたので今なら行けるぞ、と。すぐに自分からHIROさんに「オランダに行かせてほしいです」と伝えました。返答は「行ってみんなと接してみて、感じたことを教えてほしい」というもので、3日後にはオランダに飛んでました。それから2週間余りを過ごして、自分の予感が確信に変わったんです。
「世界中に自分の今までも知ってもらえたら嬉しい」
ーーアメリカで感じたことについて、もう少し詳しく聞きたいです。具体的に何が衝撃だったんでしょう?
武部:私は子どもの頃からずっと日本で活動していたので、「洋楽」という文化に触れることが少なかったんです。歌だけではなく音も深いし、私が聴いてきた邦楽とはまた世界観が違いました。ボイストレーニングも日本だとスキルやそもそもの発声を学ぶことが多かったですが、LAではパッションや自分らしさを重視した教え方で、それも自分の概念を覆してくれましたね。自分が知らないことがこんなに多いんだなと。
ーー武部さんはE-girlsのなかでも洋楽好きなイメージがあったので、それは意外です。
武部:スダンナユズユリーもやっていましたからね。あの時は(須田)アンナ、YURINOに補ってもらいながら、ふたりが聴いているものを共有してもらっていたんです。ダンスは昔からヒップホップをやっていたので触れることはあったのですが、プライベートでは聴くことが少なかったです。TikTokで流れている曲くらいは知っていましたが、アメリカにいるとそれ以外にも人気の音楽がラジオから流れてくる。私にとっては未知の世界でした。
ーー昨年、E-girlsとして発表していたプレイリスト「夕暮れ時の散歩」には、ケラーニ「HONEY」やティナーシェ「Faded Love (feat.Future)」も入っていました。今現在の好きなアーティストは?
武部:ケラーニは以前から好きですが、新曲を出すたびに“好き”が更新されていきますね。ティナーシェは日本でのダンスの先生が流していて、聴いたりしていたんですよ。あとは88risingのNIKIちゃんの曲も抽象的で良いし、声も好き。最近のものだとH.E.R「Damage」が良かったです。Spotifyでいろいろと聴いてます。
ーーグループ名の由来についても教えてください。
武部:3週くらいかけて、みんなでキーワードを出しながら考えたんです。基になるアイデアはHIROさんからいただいて、女の子っぽいけど力強さもある「SWEET REVENGE」にみんなで決めました。でも私個人の視点で考えると「再挑戦」ではなく「新しいスタート」なんだという気持ちだったので、少し違和感もあったんですよね。
でも「REVENGE」という言葉は英語だとポジティブな意味だとメンバーが教えてくれたんです。世界に発信するわけだし、個人的なバックグラウンドに縛られるのはよくないなと思って、私も納得しました。世界中に自分の今までも知ってもらえる日が来たら、それはそれで嬉しいですし。
ーーちなみに今後の拠点はどうなるんですか?
武部:SWEET REVENGEはLDH USA所属なんです。コロナが落ち着いたら移住という形で、LAでメンバーと生活しながら制作をしていく予定です。
「これからの大変なことさえも楽しもう」
ーーそれは期待ですね。では各メンバーそれぞれについて、紹介してもらえますか。
武部:みんな、ほぼ同年代ですけど私が一番上ですね。今までは自分が年下だったので不思議な感じ。ASAMIちゃん以外はダンスを始めたのが最近なのですが、見せ方がすごく上手なんですよ。みんな自分のことをよく知っているんです。
ESMEEは以前『The Voice Kids 2016』でグランプリを獲得していて、めっちゃくちゃ歌が上手いんです。シャイなので自分の意見を前のめりに言うタイプではないですが、自分の考えを持っている。ダンスがまだ苦手ではあるんですが、その分、取り組む姿勢はすごい。内に情熱を秘めている子です。
LARISSAは低めの声が魅力でラップも得意。私がオランダに滞在していた時に同じ部屋で過ごしていたんですが、いつも笑ってましたね。一緒にサッカーの中継を見ながら、つたない英語の私にも分かるようにかみ砕いて話してくれるんです。LARISSA、AGNESは当時から日本語も勉強していて吸収しようとする姿勢がすごいなと思いました。
AGNESは年が近いです。大人っぽいけど、感情もしっかり伝えてくれる子。自分に一番似ているのが彼女じゃないかな。歌声がパワフルで自分のスタイルを確立しています。みんな本当に優しいんですよ。分からないことは1から説明してくれるし、毎日コーヒーを淹れてくれる。
ーーASAMIさんとはもともとお知り合いですか。
武部:そうですね。彼女は私がE-girlsのメンバーから抜けていた2015年の時にEXPG STUDIOに入ってきて、一緒にボーカルレッスンを受けていました。認識はずっとしていたのですが、まさか同じグループになるとは思いませんでした。
当初は歌もダンスも、自分の殻を破れずにいる印象もあったのですが、その後にE-girlsのサポートメンバーとして入った時は、ダンスがすごく成長していて。歌は先ほどのメンバーのお披露目の時に久しぶりに聴いて一番衝撃でしたね。英語が話せるのは知っていたのですが「こんなに力強く歌えるようになったのか」と。
ーーその優秀なメンバーのなかで、ご自身についてはどのように考えていますか?
武部:それが最近の悩みです。E-girlsの時はボーカル3人のなかでバランスを取っていくことで、自分の立ち位置が見えていたのですが、いざグループを離れてみると「自分って本当は何が得意で何が強いんだろう?」と考えてしまいました。自分が一番自信を持てる部分を探しているところなんです。歌に関しては自分よりもはるかに長けているメンバーばかりだし、語学も全然追いついてない。まずは洋楽ならではのグルーブやノリを感じられるようにしていきたいです。
少し客観的に考えてみると、私にとっての原点は「歌って踊れるアーティストになりたい」ということなんですね。これから活動を続けていくためには、もっと自分がレベルアップしたり、追い込まれて「変わらなきゃ」と思わせられる場所に自分を置かないといけません。それで挑戦しようと決めたのがSWEET REVENGEなんです。これからが大変だと思いますが、それさえも楽しもうと今は考えています。
「自分たちが作ってきたものを認めてもらいたい」
ーー日々鍛錬ということですね。今もレッスンを受けられているそうですが、ダンスや歌の練習、学習に終わりはあると思います?
武部:ないですね。今の自分の年齢になると余計に終わりがないような気がします。10代の時は体も動くし、何でもアグレッシブに吸収しようとするので終わりを気にしている余裕もありませんでした。でも、改めてレッスンを受けながら考えてみると、やっぱり終わりはないなと。
ダンスの先生も上手い人はたくさんいるし、その人たちももっと上を目指し続けているじゃないですか。「自分で終わりは決めなきゃいけないよ」「時は金なり」と昔はよく言われましたね。2個下のASAMIちゃんとレッスンを受けながら、2年前の自分は何でも吸収するハングリーさがあったなと考えたり。もちろん得意不得意はありますし、まだまだ足りないことは多いですが、今は自分の得意な部分を伸ばして積み上げたいと思っています。
ーーでは、改めてご自身の長所はどこだと思いますか?
武部:身長があって大きく動けることかもしれません。歌う時も身振り手振りが小さいと伝わらないですから、それをダンスではない時も活かしていければと。SWEET REVENGEはみんなが歌えるグループですから、より表現を求められると思うんです。そこは自分の武器にしていきたいですね。
ーー世界発信に際して、思い描くビジョンなどはありますか。
武部:メンバーが並ぶだけでもインパクトがありますので、音楽はもちろんファッションなどのカルチャーも同時に発信していきたいです。もちろん最前線にいるEXILE TRIBEの先輩たちに追いつけるように、日本でも活動できたらという気持ちもありますが、まずは世界に発信するのを第一に考えたいです。
ーーアジアから世界に出て行った成功例としてK-POPのグループが連想されますが、そこを意識したりは?
武部:同じアジアなので近い存在に感じます。特にBLACKPINKは『a-nation 2019』で一緒になったりもしていますし、夢が広がりますね。闘争心も掻き立てられますが、ライバル視というよりは勉強になる、という感じかもしれません。私はもともとK-POPが大好きでいろいろなグループが世界に挑戦していく歴史を見てきました。今はそれを踏まえて「世界から注目を集めているのはなぜなんだろう」という目線で考えることが多いです(笑)。最近のK-POPではHeizeが好きですね。先ほどのケラーニに通じる要素があるし、ヒップホップ感もK-POP感も混じり合っているのが良いなと。
ーーでは改めて目標にしているアーティストはいますか?
武部:始めたての頃は安室奈美恵さんや倖田來未さんをイメージしていたのですが、最近は自分がそういう目標になりたいと思うんです。海外に発信するにはオリジナルであることが大切なので、自分をもっと作っていきたいですね。大きく言えば、グラミー賞を獲る、コーチェラに出る、といった目標設定をしていくべきなのかなと考えています。自分たちが作ってきたものを認めてもらいたいんです。日本で活動してきたグループではなく、また1から始めたグループとして世界で活躍するというのは聞いたことがないし、そのひとりに私がなりたい。うん、ますます楽しみになってきました。