Kis-My-Ft2、『ボス恋』主題歌「Luv Bias」は新たな代表曲に 7人による豊かな表現を紐解く
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2月24日にリリースされる、Kis-My-Ft2のニューシングル表題曲「Luv Bias」。玉森裕太が出演するドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)の主題歌として、早くもこの冬を代表するラブソングになっている。雨や雪、青い光が映える幻想的なサウンド、焦燥感やもどかしさ、あるいは胸の高鳴りを反映するビート、切なさを帯びたメロディ。サビから始まるドラマティックな展開が、ドラマのクライマックスをより印象づける。およそ3分という短いサイズのなかに、変則的な起承転結を落とし込んだ斬新で挑戦的な楽曲だ。「Luv Bias」はただ美しいだけではなく、何度でも聴きたくなる中毒性を持っている。
“オラオラ系”とも称される、挑発的でセクシーな楽曲を真骨頂とし、代名詞ともいえるローラースケートでのパフォーマンスとダンスが映える、軽快なポップチューンでヒットを重ねてきたKis-My-Ft2。いまだやんちゃなイメージも残る彼らだが、3月には最年少の千賀健永が30歳になり、8月10日にはCDデビュー10周年を迎える。これからも積み重ねていくグループの歴史において、それらはひとつの通過点に過ぎないかもしれない。だが、2021年はやはりキスマイにとって節目の年であることに違いはない。
そんなアニバーサリーイヤーの始まりに、彼らが世に放つのはミディアムナンバー。キスマイのシングル表題曲としては新機軸でありつつ、彼らの真価を発揮するベストな楽曲であると思う。
これまでにもアルバムやカップリングを中心に、歌唱力と表現力を必要とするエモーショナルなスローナンバーを収録し、ファンから高い支持を集めてきたキスマイ。だが、今まさに「Luv Bias」を通じ、これまで世間にあまり知られていなかった、アーティストとしてのキスマイの魅力が広まりつつある。彼らにとって新たな代表曲にもなり得る、そんなポテンシャルを「Luv Bias」は秘めている。
「Luv Bias」の作詞・共作曲を担当したKOUDAI IWATSUBOことイワツボコーダイは、キスマイとは何度もタッグを組んできた。これまでにも「メガ☆ラブ」「WANTED」といったハイテンションな作品から、「NOVEL」「君のいる世界」など優しい温度が伝わる作品まで、実に幅広い世界観を表現するアーティストだ。
本作「Luv Bias」では、自分では手に負えない、戸惑うほどの恋をした主人公の想いを、〈君のことしか考えられない〉ーーそんなロマンチックな言葉で綴り、恋から愛へと移りゆく穏やかな日々と未来を、楽曲の世界に大切に閉じ込めている。
眠れない夜があるように 新しい朝も来るし
君の好きなミルフィーユも一緒に食べに行ける
たいしたことじゃないけど
今日は君の為に花を選んで帰るから
(「Luv Bias」歌詞より抜粋)
このブリッジは、一度耳にすれば忘れることのない印象的なフレーズ。夜と朝、何気ない日常、そしてささやかな思いやりを描くことで、2人の日々がずっと続いていくことを想像させる。
また、曲の冒頭と終わりに、わずかに異なる歌詞を乗せているのもドラマティックだ。「未来」とは何を指すのか、それは2人にしか分からない。だが、この恋は終わることなくきっと永遠に続いていく、そんな予感と余韻を残す。
すでに複数の音楽番組で披露されている「Luv Bias」。今回はマイクスタンドを使ったパフォーマンスも新しい。さらに注目してほしいのは、7人それぞれの表情、そして仕草だ。まさに「大人」の魅力をたくわえた、表現力豊かなキスマイを堪能してほしい。
キスマイに関して何度か述べてきたことだが、彼らはパフォーマンスを通じてメッセージを伝え、ストーリーを語るグループだ。経歴、個性、重ねた年齢も含め、彼らの存在そのものに、不思議な説得力と希望がある。
ちょうど10年前の2011年2月12日。コンサートのMC中に突如、手元に届けられた一通の茶封筒。それを開いた瞬間から、キスマイの夢は走り出した。
“あの”TBS火曜夜10時枠のヒーローに玉森裕太が抜擢され、日本中が玉森=宝来潤之介に恋をする。そしてKis-My-Ft2が歌う主題歌に、視聴者の心が震える。グループが迎えた10回目の2月に、そんな未来が待っていた。幻想的なイントロを経て、耳に届く“7人”のユニゾン、その美しさと力強さ。ただもうそれだけで涙があふれてくるストーリーが、キスマイにはある。
Kis-My-Ft2のアニバーサリーイヤーは「Luv Bias」によって最高のスタートを切った。そして、それはまだまだ始まったばかりだ。Kis-My-Ft2の船に乗るそのタイミングは、今かもしれない。
■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter(@akino_ippo)