AI、“ピースでありたい”という願い 海外アーティストとの制作秘話やAwichとのコラボも語る
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デビュー20周年を迎えたAIが、『IT’S ALL ME -Vol.2』を2月24日にリリースする。前作となる『IT’S ALL ME -Vol.1』は、日本語を噛みしめるような温かい歌モノ作品だったのに対し、今作は海外のプロデューサーとタッグを組んでヒップホップ色が濃くなり、鋭角かつ普遍的なメッセージ性が浮き彫りになるような作品だ。そしてリリックのタイプも様々でありながら、コロナ禍や“Black Lives Matter”など様々な社会問題を受けて、「ピースでありたい」という心からの想いが全体に通底している。Awichとコラボした「Not So DIfferent」のMVはその象徴的な作品だと言えるだろう。今回はAIへのインタビューを通して、『IT’S ALL ME -Vol.2』各曲の刺激的な制作秘話や、ライブに向けた想いなどを語ってもらった。(編集部)
「自分のすべてを見せるのは決して恥ずかしいことじゃない」
ーー昨年11月22日でデビュー20周年を迎えたAIさんですが、そこへの気持ちからまず聞かせてください。
AI:20周年ということで、こういった取材でメディアの方々がいろいろと活動を掘り下げてくれて。昔の懐かしい映像が出て、「ちょっとちょっと!」って恥ずかしくなる瞬間もありましたけど(笑)、でも感慨深いものではありますよね。去年は20周年イヤーでやろうとしていたことが多々なくなってしまいましたけど、自分としては「まあ、そういうときもあるよな」と思いながら、できることに対して取り組んでいってましたね。
ーーコロナ禍で、昨年9月から予定されていたツアーは延期されてしまいましたからね。
AI:そうそう。延期を重ねて、今ようやくできるタイミングにはなったんですけど。でもね、そうやってツアーができなかった分、曲の制作やレコーディングが進められたりとか、あとは子供たちと一緒に過ごす時間をたくさん作れたのは逆にありがたいことでもありました。
ーーその時々の状況を受け入れながら、しっかり前を向けていたんでしょうね。
AI:そうですね。世の中で起きてる状況に対して、「わー、どうしよう!」って焦ってばかりいてもしょうがないから。
ーー昨年7月にリリースされたミニアルバム『IT’S ALL ME -Vol.1』と、それに続く新作『IT’S ALL ME -Vol.2』には、海外の様々なクリエイターとともに作り上げた楽曲が多数収録されています。最近のAIさんはそういったコラボを積極的に行っていますが、そこにはどんな理由があったんですか?
AI:ひとつは2020年に東京でオリンピックが開催されるということで、私がずっと掲げている“世界が平和になって欲しい”“みんなが仲良くなって欲しい”というメッセージを、海外のクリエイターと一緒に作った楽曲で表現してみたかったんですよね。あと、私はニュースを見るのが好きなんですけど、今は世界中で本当に様々なことが起きているじゃないですか。なので、それを曲に落とし込むこともしたかった。そういったアイデアの中で世界の5大陸のアーティストをフィーチャーして曲を作るのもいいねっていう話も出て、そこで生まれたのが台湾のMJ116と一緒に作った「You Never Know」(2019年11月リリースの20周年記念アルバム『感謝!!!!! –Thank you for 20 years NEW & BEST-』収録)や、ドミニカ共和国のラッパー・Jenn Morel、Joeliiと一緒にやった「Kokoro」(『IT’S ALL ME -Vol.1』収録)といった曲たちなんです。
ーーなるほど。
AI:まあでもそういったプロジェクトもコロナでいろいろ変更せざるを得ない状況になってしまって。オリンピックまで延期になってしまったわけだから。本当であればアフリカのアーティストとコラボする予定もあったので、残念ではありましたね。とはいえ、当初の思いで作っていた曲たちはサウンドはバラバラだけど、どれもピースになってもらいたいというメッセージを込めて作っていたので、それをしっかり形として届けていく意味はあるんじゃないかなとは思っていますね。
ーーそれらの楽曲群を収録するシリーズ作品に「IT’S ALL ME」というタイトルを掲げたのはどうしてだったんですか?
AI:「Vol.1」を作ったとき、収録曲に統一感がないなって思ったんですよ(笑)。そこには海外のクリエイターと作った曲もあれば、CMや映画のタイアップで作ったものもあったので、サウンドの方向性や曲の雰囲気が全然バラバラで。自分としてはね、すべてが自分の好きなものであるからまったく違和感はないんですけど、聴いてくれる人がどう感じてくれるかはわからないじゃないですか。なので、タイトルで「IT’S ALL ME」って言っておこうかなっていう。いろんな曲が入ってるけど、全部が私なんだよって。
ーー確かにミニアルバムを聴いていて浮かび上がってくるのは、紛れもないAIさんの強い個性ですからね。
AI:あとはもうひとつ。こういうタイトルを掲げることで、自分のすべてを見せるのは決して恥ずかしいことじゃないんだよっていうことをメッセージしたかったところもありましたね。聴いてくれる人にそういう部分も感じてもらえたら嬉しいです。
「海外クリエイター陣との作業は本当に刺激的」
ーーでは改めて、今回リリースされたミニアルバム『IT’S ALL ME -Vol.2』の仕上がりに関してはどんな手ごたえを感じていますか?
AI:前作以上に、自分の趣味が思い切り入ったアルバムになりましたね。メッセージ的にも自分の言いたいことがいっぱい詰め込まれているし、サウンドにも自分の好きなR&Bやヒップホップな感じの音も多いんですよ。今回はタイアップ曲として作ったものがなかったので、自分勝手な感じで作れたところがあったんだと思います(笑)。
ーー歌詞はどれも前を向いた内容になっている印象ですが、そのテーマは幅広いですよね。女性の本音を歌う「Off You」や、ワナビー的なことを歌う「Expectations」なんかはかなりおもしろかったんですけど。
AI:その2曲に関しては、実はほとんどが海外のライターが考えた内容になってるんですよ。「Expectations」はコライトした部分もあるけど、「Off You」はもう完全にもらったもの。でもね、それを聴いたときにすごくかっこいいなと思って気に入ったんです。「Off You」のような陽気な曲が入っていることでアルバムとしてのバランスもよくなるし、聴いてる人も和むんじゃないかなって。今回収録するにあたって、元々なかったDメロをつけ加えたりはしましたけどね。恋愛してる相手に対してちょっと怒ってる女性の気持ちを描いた曲を歌うのはけっこう久しぶりだったので、自分としても楽しめました。
ーーゼロベースでコライトしていく曲がある一方で、ご自身が気に入れば提供曲に素直にのっかれるっていう柔軟さもまたAIさんらしいところですよね。
AI:もらった曲を自分なりに歌う楽しさもありますからね。「Off You」はデモの段階では男性が歌ってたんですよ。オートチューンばりばりで、すごくダルダルな感じで歌ってて、その雰囲気がおもしろかった。まあ自分が歌ってみたらデモよりはシャキッとした雰囲気になっちゃったんだけど(笑)、それはそれでいいかなっていう。
ーー「JUMP」はどう作られたんですか?
AI:この曲は先にトラックだけもらって、その上に自分でリリックとメロディを書いていきましたね。ラップでもしてみようかなと思ってやってみたんですけど、久しぶりすぎてちょっとサビついてる感じが自分ではしましたけど(笑)。でも最終的にはいい形に仕上がったと思います。
ーー海外のクリエイター陣との作業は刺激的なものですか?
AI:そうですね。特に海外に行って一緒に作業すると、ものすごく刺激になります。彼らがどうやって楽曲を作っているのかが直接見られるわけだから。世界のトップアーティストを動かして、いい歌を歌わせているのは今回一緒に仕事をしたようなクリエイターやプロデューサーたちなんですよね。そういう意味ではアーティスト以上に重要な人たちだったりするわけで。だから私は彼らのことをものすごくリスペクトしていますね。
ーーその人ごとに曲の作り方は様々でしょうから、そういった部分でのおもしろさもありそうですよね。
AI:そうそう。今回の曲はほとんど自分の好きなように歌っちゃいましたけど、「Expectations」のトラックを作ってくれたバーナード“ハーヴ”ハーヴィーだけはがっつりディレクションまでやる人だったんですよね。現場にはCherishっていうグループをやってた双子の女の子もいて、彼女たちもまた「Singing like this」みたいな感じで、歌の雰囲気を伝えてくれたりして。それがほんとに上手くて最高なんですよ。だから私は変に自分の色を出そうとせず、言われたままに歌うことができるんです。そういうやり方もまた楽しいものだし、ものすごく勉強になりますよね。海外に行くと、本当にいろんなことを吸収できます。
「Awichとの出会い・共演はものすごく感動的だった」
ーーMatt CabさんとToma Love Childさんと共に作られた「HOPE」は未来に向けた希望をストレートにメッセージするナンバーです。1月30日に行われた『deleteC 2021 -HOPE-』のオンラインイベントでは、AIさんもアンバサダーとして登場し、この曲を披露されていましたね。
AI:この曲は1番だけ、けっこう前に作っていたんですよ。当時、私は妊婦だったので、生まれてくる子供のことも含め、世の中のいろいろなことをじっくり考えるようになっていて。そこで出てきたのが“HOPE”というテーマだったんです。やっぱり“HOPE”がないと不安な世の中ですからね。で、そこでできたものは一旦ストックにしてあったんだけど、コロナが流行り出した時期にうちのマネージャーがこの曲を引っ張り出してきて、「最近、何回も聴いてるんだけど、この曲すごくいいんだよね。リリースしようよ」と言ってきたんです。そこから2番を作っていった感じなんですけど、そのタイミングで『deleteC』のこともあったから、そこへの思いも歌詞に込めたりしたところはありました。
ーーそういった生い立ちのある曲だから、今の世界の状況にマッチしたメッセージソングになっているんですね。
AI:そうなりましたね。私は自分の作った曲たちはどれもかわいいから、いつ出そうって言われても全然OKではあるんだけど、でもこの曲は出すべきタイミングに出せることができた実感がありますね。言っちゃえば「Not So Different」もそうやって世に出ることになった感じではあるんですけど。
ーー「Not So Different」は、「人はみな、違いはない」「世界中に愛を分かち合う時代」というグローバルなメッセージを投げかける、本作における最重要楽曲だと思います。
AI:この曲も2019年の夏ごろにはできていた曲で。LAのプロデューサーであるスコット・トーチと一緒に、東京オリンピックを強く意識して作ったんですよね。海外から日本にやってきた人たちがみんな仲良くなれる曲にしたいっていう思いで。でも、これをリリースすることになったきっかけは、“Black Lives Matter”やコロナをはじめとする世界の様々な出来事だったんですよ。これもまたストックだった曲を、世界の動きによって引きずり出してもらった感じなんですよね。
ーー曲に込めた思いに対し、世の中の流れが新たな意味を与えてくれたということですよね。しかもこの曲はAwichさんをフィーチャーしたリミックスが作られたことで、よりメッセージがリアルで鮮烈なものになった印象もあります。
AI:はい。私なりに世の中に言いたいことを詰め込んで作りましたけど、それじゃまだ足りないパワーみたいなものをAwichさんがものすごく足してくれました。彼女との出会い、そして曲を通して共演できたことはものすごく感動的な出来事でしたね。初めて一緒にスタジオに入ったときなんかは、彼女の書いた歌詞に涙が出そうになっちゃって。
ーーものすごく強いストーリーを持った方ですからね。
AI:そうですね。ただ、これまでのストーリーだけではなく、彼女は今をどう生きるか、そしてここから何をしていくのかみたいなこともものすごく考えているし、それをしっかり表現してもいるんです。だからこそ彼女の歌には感動があるんですよ。私とは初めてのコラボレーションでしたけど、歌詞にはプライベートなことまで書いてくれましたからね。彼女ほど何事にも恐れずチャレンジをして、でもしっかり自分にしかない心を持っている人ってなかなかいないと思います。
ーーリミックスのMVではAIさんとAwichさんが抱き合うようなシーンもあったりして。お二人が高い次元で共鳴し合っていることが伝わってきて、見ているこちらも感動しました。
AI:撮影の合間にもいろんなことをしゃべったんですけど、彼女のことを知れば知るほど好きになっちゃうんですよ。しかも、そこでプライベートなことを聞いた上でまた撮影に戻ると、この曲の中に私たちはいるんだなってものすごく実感できたんですよね。なんか上手く表現できないですけど(笑)、本当に素敵な気持ちになれる時間でした。
ーーAwichさんとともに、「Not So Different」はテレビでもパフォーマンスされましたよね。強いメッセージを持つこの曲が地上波に乗ったことは本当に大きな意味があることだと思いましたが、いかがですか。
AI:テレビではなかなかこういう曲って歌わせてもらいづらいんですよ。それ自体が偏見みたいなものなんだけど(笑)、でもそう判断せざるを得ないのもすごくわかる。だからこれを歌わせていただけたのは、本当にありがたかったですね。
ーー〈銃〉とか鋭いワードが使われているからちょっとインパクトがありますけど、最終的に伝えられるのはものすごく普遍的なメッセージですからね。
AI:そうそう。世の中で起きていることに対して、自分に感じるものがあるのならそれはやっぱり言うべきだと思うんですよ。そこを濁してもウソっぽくなってしまうし。せっかく歌として届けることができるならば、私はしっかりメッセージにしたいんですよね。だってね、別に変なこと書いてないでしょ。よく聴いてもらえば、ほんとにポジティブなことしか歌ってないですから。
ーー今回のリリースによって、さらにたくさんの人に響くといいですよね。
AI:そうですね。私はただハッピーなことを歌う曲も作ったりするし、そういう曲も必要だとは思うんですよ。でも、ずっとそればっかりだと、そこで歌っていることを信じられなくなってしまうんです。だって「ハッピーハッピー言ってるけど、こっちはハッピーじゃねぇんだよ!」って場合もあるじゃないですか。私もそういうときって実際にあるし。だから作る曲のタイプでバランスを取っているところはあるんだと思います。前作には「ギフト」とか「僕らを待つ場所」のようにちょっとキラキラした雰囲気の曲が入ってましたけど、今回はウエストコースト寄りのサウンドを持つ「Not So Different」みたいな曲が入っているっていうのが、自分にとっていいバランス、いい流れなんでしょうね。そこを行ったり来たりする繰り返しなんだと思います、私の音楽活動は。
ーー延期されていたライブもついにスタートしています。ここからはどう活動していきたいですか?
AI:コロナはまだまだまだ大変な時期が続くので、安全対策はしっかりしていかないといけないですけど、私たちはもうとにかくやる気満々になってます(笑)。なので、まずはライブを楽しみたいですね。たぶん会場でみなさんに会えたら、きっと感動して泣いちゃうと思うなあ。で、制作も引き続きやっていますので、そこも楽しみにしてもらえたら嬉しいですね。ストックに関して言えば、「IT’S ALL ME」があと2枚出せちゃうくらいはすでにあったりして。まあそれもね、どういう形になるかわからないけど、いつかお届けできる日が来るんじゃないかなって思ってはいます。今回の曲たちがそうだったように、出すべきタイミングが来るかもしれないので、それを楽しみにしたいですね。
■リリース情報
AI『IT’S ALL ME – Vol.2』
2021年2月24日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)¥2,000+税
通常盤(CD)¥1,600+税
<CD内容>
1.Not So Different
2.JUMP
3.Off You
4.Expectations
5.HOPE
6.Not So Different Remix feat. Awich
<初回限定盤特典DVD収録内容>
・Not So Different(MV)
・Not So Different(Extended Behind the Scenes)
・ギフト(MV)
・ギフト(Extended Behind the Scenes)
・Kokoro feat. Jenn Morel, Joelii(Lyric Video)
『IT’S ALL ME – Vol.2』特設サイト
AI Official Site