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現代に蘇る復讐とやり直しの物語。木ノ下歌舞伎『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』

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木ノ下歌舞伎『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』(2016年)より 撮影:bozzo

さまざまな視点から歌舞伎の演目を捉え直し、新たな演出でいまを生きる人々に届ける木ノ下歌舞伎。そのレパートリーのひとつ、『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』がこのたび上演される。2012年に初演、2016年に再演され高い評判を得た演目が5年の歳月を経て蘇る。

「義経千本桜」といえば、18世紀に人形浄瑠璃をもとに誕生して以来、人気の歌舞伎の演目。源氏と平氏の戦いが終わり、兄・頼朝に追われて都落ちした義経と、実は生き延びていた平家の残党を描いている。

全五段あるなかの二段目にあたる「渡海屋・大物浦」は、源平合戦で海に身を投げて自害したはずの平知盛が船宿の主人に姿を変えて源氏への復讐を狙う物語。一度は敗け、全てを失った者の悲哀と、その復讐劇がダイナミックに描かれる話だ。

今作の演出を担当するのは、東京デスロックの多田淳之介。古今東西のさまざまな名作を手がけてきた彼は、常に現代を感じさせる要素を巧みに取り入れ、一見遠いものに思ってしまいがちな古典を、今の私たちが触れられる場所に差し出す。

義経も知盛も、時にジャージやスニーカーなどの現代の服装で登場し、若者言葉でしゃべったりもする。観る者は今を生きる人々と同じ感覚で登場人物のやりとりを受け取る。その中にさし挟まれる古典らしい着物姿、歌舞伎ならではの節回しが際立ち、描かれたテーマの大きさをいつの間にか肌で感じることとなる。

歌舞伎を新しい形で伝えるという難しい演技に挑むのは、2016年の上演時と同じメンバーの佐藤誠、大川潤子、立蔵葉子、夏目慎也、武谷公雄、佐山和泉、山本雅幸、大石将弘、さらに今回初参加となる三島景太(SPAC)という、いずれ劣らぬいずれ劣らぬ小劇場界の手練れたちが揃っている。

主宰の木ノ下は、再演にあたっても毎回新たに作品にあたり、補綴を繰り返す。そもそも、「渡海屋・大物浦」はシンプルな1対1の復讐ではなく、源氏が勝って平氏が敗けるという大きな歴史をやり直そうという企みであり、知盛は平家全体を背負って義経へと襲いかかる。 コロナという未曾有の敵に遭遇し、2020年という年を喪ったままのような私たちは、いま知盛の「やり直し」を観てどう感じるだろうか。

文:釣木文恵

木ノ下歌舞伎『義経千本桜-渡海屋・大物浦-』
作:竹田出雲 / 三好松洛 / 並木千柳
監修・補綴:木ノ下裕一
演出:多田淳之介
出演:佐藤誠 / 大川潤子 / 立蔵葉子
夏目慎也 / 武谷公雄 / 佐山和泉 / 山本雅幸
三島景太 / 大石将弘

【東京公演】
2021年2月26日(金)~2021年3月8日(月)
会場:シアタートラム

【愛知公演】
2021年3月13日(土)・14日(日)

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