『呪術廻戦』禪院真希&真依の関係性はなぜ共感を誘う? 強く美しい双子姉妹の溝
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作品全体の流れはもちろん、章ごとのストーリーも魅力的である『呪術廻戦』。吉野順平が登場する「幼魚と逆罰編」や、五条悟と夏油傑らの高専時代が描かれた「過去編」などが人気を集めているが、「交流会編」の中で描かれた、禪院真希と真依の関係を描いたストーリーもグッとくる。
真希は主人公・虎杖悠仁の先輩にあたる、東京都立呪術高専の2年生。呪術界の御三家のひとつ、禪院家の出身だが、呪いを見ることも術式を使うこともできない。普段からかけている特殊な眼鏡を通さないと呪霊を見る事ができず、戦いの際には呪力がこもっている呪具を使う。その代わり、天与呪縛により人間離れした身体能力を有しており、武具を使った体術に優れている……というキャラクターだ。
そんな真希の双子の妹が、呪術高専京都校の2年生にいる禪院真依だ。彼女は呪力を持っているものの、使える術式は自分の呪力をもとに物質を0から構築する「構築術式」。そのため、リボルバー式の銃を武器としており、分かりやすく弾数でブラフを張り、構築術式で弾を作って相手の不意をつくという戦い方をしている。ただ、構築術式で作り出した物質は術式使用後も消えることがないため、呪力の消費が激しい。現在の真依には、1日1発の弾丸を作るのが限界というデメリットもある。
そんな2人の間には明らかな亀裂があった。交流会前、真依が東京校にやってきて釘崎野薔薇とやりあっている最中、真希が登場すると開口一番「おちこぼれ過ぎて気づかなかったわ」と言い放っていた。真希は「おちこぼれはお互い様だろ」と意に介していない様子であったが、“仲が良い双子の姉妹”ではないことは明らかだ。例えば『BLEACH』の四楓院夜一と砕蜂のように、漫画の世界の中にはままある設定だが、2人の間に何があったのかわからないからこそ、この亀裂が気になっていた。その背景が、第42話「京都姉妹校交流会ー団体戦9ー」で明らかになったのである。
真依が真希に突っかかっていた理由を簡単に言い表すと、寂しさの裏返しだ。平凡な毎日を大切にしたかった真依に反して、真希は不安を物ともせず、呪力がないことを障壁にもせず、ずんずんと未来へ突き進んでいってしまった。自分だけが置いていかれたように感じたり、現状維持を良しとする自分が暗に責められているように思えたり、その状況に耐えられなかったのだろう。「なぜ自分を置いて禪院家を出たのか」と、真希にきつく当たっていたのだ。そんな真依の心情は、「なんで一緒に落ちぶれてくれなかったの?」という台詞に詰まっている。「おちこぼれ過ぎて気づかなかったわ」と言った真依が、自分が落ちこぼれだと認めたに等しい台詞ではないだろうか。それ以降の2人がガッツリ絡んでいる場面が出てきていないため真相はわからないが、これを機に今までのわだかまりは解けた、と推測される。
『呪術廻戦』に出てくる呪術師たちは、(漫画ゆえ当たり前だが)人間であるにも関わらず人間離れしすぎている人物ばかりだ。だからこそ、こういった人間味溢れる心情と背景を知れたことで、禪院真希、真依というキャラクターにより感情移入できるようになったはずだ。いつの日か真依が構築術式で生み出した呪具を使って、真希が戦う……という妄想も捗るというものだ。禪院家の跡継ぎ騒動が始まった今、再び真希・真依姉妹の登場に期待したい。