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和田彩花が語る『MISS ミス・フランスになりたい!』 「もう一歩、先を進んでいる映画」

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リアルサウンド

 映画『MISS ミス・フランスになりたい!』の舞台はフランスのミス・コンテスト「ミス・フランス」。1920年から開催され、フランス各地の代表選手が美貌や個性を競い合う伝統ある大会だ。長い訓練と審査期間を経て、参加者は容姿だけでなく、所作やコミュニケーションなど、“その人自身”を開花し審査されることになる。

 美少年アレックスは、幼いころから「ミス・フランスになること」を夢見てきた。しかし、男の子で女性の大会の頂点を目指すことをクラスメイトは冷やかし、彼の夢は封印される。大人になった彼は、自信あふれる幼なじみの姿に触発され、男性であることを隠しながら「ミス・フランス」のコンテストに臨む。

 「何者かになりたい」と邁進するアレックスの姿が感動的な本作を、和田彩花さんは「すごく素敵だった」と絶賛する。自身も、既存の枠組みに疑問を投げかけ、自分らしい姿で音楽を中心にした表現活動やエッセイなどの執筆活動を続けている和田さん。2019年にアイドルグループ・アンジュルムを卒業し、アイドルの解釈を広げるべく前に立つ。社会問題やフェミニズムなど関心のある分野を発信する姿は、新しいアイドル像となっている。アレックスや和田さんのように、強く美しく、自分を豊かに生きるにはどうしたらいいのだろうか。本作からのヒントと和田さん自身の経験を交錯させながら、物語の魅力を紐解いていく。(羽佐田瑶子)

自分のなりたい心のままに動く

和田彩花(以下、和田):素晴らしい作品でしたね!

ーー近年、ジェンダーやフェミニズムといったジャンルの映画は増えてきましたが、この映画はまた違った作品でした。

和田:もう一歩、先を進んでいる映画だと思いました。主人公は、物語冒頭、男性という性を持ちながら、ミス・フランスになることを夢見ていることが伺われました。そういう物語だと、テーマとしてセクシュアリティやジェンダーなどの問題は、避けて通れません。けれど、この映画はそうした男女の枠組みを超えて、自分に基づいた物語だった。私からすると「未来だな」と思って。これからはこういう世界になったらいいです。

ーーアレックスを演じた主演のアレクサンドル・ヴェテールも、フランスで“圧倒的な美貌のユニセックスモデル”として活躍しています。インタビューで、自身の性別を問われた際に「僕は男性でも女性でもなく、自分だ」と答えたそうなんです。男女の枠組みは関係なく、自分自身であることの大切さを伝えてくれる映画でしたね。

和田:映画の中でも、アレックスは同じようなことを言っていましたよね。コンテストの審査で「将来は何になりたいですか?」と聞かれて、「何者かになりたい」という答えがすごく素敵だと思いました。LGBTQにさえもカテゴライズせず、いい意味の曖昧さがあって。「なりたいもの」を聞かれたら、性別や周囲の目が必ず入ってきてしまいます。でも、主人公はセクシャリティや内面の揺れ、日常の葛藤も含めて「何者かになること」を望んでいたように思って。自分のなりたい心のままに動く、というメッセージを映画全体から感じました。映画の中で、性別をはっきりさせないのは、意図的ですか?

宣伝担当:そうですね。あくまでも「自分だ」としか言いません。

和田:それは大切ですよね。ディスコで踊っているシーンの美しさと、(ミス・フランスの審査に向けて)ボクシングジムでトレーニングする主人公は全然違う顔つきで。会話の中でも「もしかしたら男性なのかな? 女性なのかな?」と推測はできるけれど、主人公自身が性を明らかにしないことが優しいし、あたたかいと思いました。「カミングアウト」という言葉があるけれど、それすらも必要のない未来があるなんて素敵。でも今はまだ議論することになります。難しいことだけれど、いろんな文脈や考える余地が交錯している物語が、こうして作品として残されることも素晴らしいですよね。

ーー印象的だったシーンやセリフはありますか?

和田:たくさんありますよ! 何から話そう……一番印象に残っているのは、家族との関係です。父親・母親・兄弟という一般的な核家族ではなく、いろんな人種・性的指向・言葉の人たちが集まった下宿先を、家族としている。トランスジェンダーのローラ(ティボール・ド・モンタレンベール)も、インド人のお針子さんも、いろんなところから集まっているじゃないですか。バラバラだった人たちが一つの家族として、アレックスを応援する姿がいいなと思いました。母のような存在である家主のヨランダ(イザベル・ナンティ)も、とても素敵。「ミス・フランス」が女性の抑圧的なものに対して前向きであることに否定的だった彼女が、自分の人生を回顧し、立ち直れない過去や心にあることを打ち明けるシーンにグッときました。理解するにも、いろんなグラデーションや葛藤を経て知っていくことがありますよね。


ーー「自分の価値を他人に決めさせない」というヨランダの台詞も素晴らしかったです。

和田:いい台詞がたくさんありましたけど、特にその台詞は私も好きでした。あとは、動画撮影で運営側の指示による台詞を、ヨランダは「言うな」と伝えるじゃないですか。彼女自身、変わっていきながらも本質的なところではバシッと自分の意見を言える。ヨランダは、未来的な人だと思いました。あとは、予選での「全ての女性のために」という、アレックスのスピーチですね。あの言葉は、性別のカテゴライズを越えてあらゆる人のためのスピーチだと思いました。

 あと、幼なじみのエリアス(クエンティン・フォーレ)にレストランで出場を相談した際に「(ミス・フランスなんて)美人コンテストだろ?」と言われて、「それだけじゃない!」とアレックスが返すじゃないですか。作品を観ていると、外見だけじゃ判断できないことが色々あるなと思って。今のコンテスト問題についても、ヒントになるかなと思いました。

自分の好きはここにある

ーーアレックスが、ミス・フランスを目指す理由について「女でいると強くなれる」と語るシーンがあります。なりたい自分になるためには、そうした自分の「核」が必要に思うのですが、和田さんにとっての核はなんでしょうか?

和田:私の場合は、美術ですね。10代の後半にエドゥアール・マネをきっかけに、美術を通して見る世界は広くてカラフルだと気づきました。自分が当てはまらなきゃいけない枠組みは、どうしてもあるじゃないですか。そういうものを越えて、自分らしくあることの大切さや肯定感を、美術作品や作家から学んだと思います。

ーー心をグッと持っていかれたのは、美術のどういった点だったのでしょうか。

和田:美術作品のテーマ自体に、関心を持ったことは大きかったです。美術では当然のように社会問題や、女性の生きづらさ困難さを取り扱っています。作品にしていなくても、画家の人生にそうしたことが付きまとっていることもある。そこが、自分は何が好きなのか、どこに向かいたいのか、見つける指針になったと思います

 最近グッときた作品は、東京都庭園美術館で行われている『20世紀のポスター[図像と文字の風景]』に展示されていたポスターです。戦後に作られたスイスやドイツ、ロシアのポスターは、色や形と文字の単純な組み合わせだけで仕上げられていて。現代のポスターは様々な情報が詰め込まれていてコラージュ的なので、すごくシンプルに感じるかもしれません。だけど、私としてはその色使いや文字の配置、幾何学的なモチーフの組み合わせやバランスなど単純な造形美に惹かれるんです。あまり難しい話ではなくて、単純に「かっこいい!」と(笑)。自分の好きはここにあるんだ、と思いました。

ーー“好き”センサーが働いたんですね。

和田:そうですね。「これは好き」、「これは違うかも」という心の動きに敏感に反応するようにしているのかもしれないです。展覧会や作品だけでなく日々触れるものから、自分の感覚を読み取るようにして、違うと思うものにも、積極的に接するようにしています。心の動きを整理する時は、話したり文字に書いたり、アウトプットすることが大事ですね。

ーー先ほど、「なりたい自分になる」時には周囲の目が入ってきてしまう、という話がありました。和田さんはそのフェーズを乗り越えたように思うのですが、自分の意思を貫く上で大切なことは何だと思われますか?

和田:まだ乗り越えていないかもしれません。単純に、自分の好きだけでどれくらい動けているのかと悩むこともあるし、自分の好きがどれかわからなくなることもあります。でも、私の場合は、意志を強く持ってしまうタイプなので、やると決めたらやります。……って、これじゃ誰のヒントにもなりませんね!(笑)

ーー(笑)。身近なヒントはありますか?

和田:たとえば、毎日の服選び。私はアイドルだけれど、一般的なアイドルらしさよりも、シンプルな造形美が好きです。なので、選ぶ格好もシンプルになります。でも、最近は私服の撮影も増えてきて、カメラの前に立った時に「これでは地味かな?」「見ている人を不快にさせないかな?」と考えてしまって。かといって柄物を着るかというと、私は全然好きじゃないから選べない(笑)。結局は、シンプルな自分らしい服装を選びますね。私の場合は表に立つ人間として、自分であることがやるべきことだと思っているけれど、全部好きなことだけで動けるわけじゃない。なので、隙をみて挑戦するのがいいと思います!

ーー大胆にいきなり変えるのではなく、インナーカラーを入れたり、アイシャドウを変えたり、隙あらば“好き”を実践していくのはいいですね。

和田:私は八重歯がコンプレックスだったんですけど、歯の矯正をちょっとずつやったんですよ。そうしたら全然バレなくて(笑)。八重歯を好きだと言ってくれる声は嬉しかったけれど、自分は気になっていてどうしても治したかったんですね。治った時はスッキリしました。

ーーアレックスの場合は、服装やメイクなど大胆に変化しなければならず、その過程で後悔することもありましたね。

和田:人が変化する時には、傷つけるつもりはなくても見落としてしまうことやノーマルにその思考にたどり着いてしまうことがありますよね。辛かったけれど、そういうこともあると思いながら観ました。

ーー和田さんは、無意識に誰かを傷つけてしまったとしたら、どうされますか?

和田:そういうことはありましたね……その時は、何年もそのことについて考えて、反省して、自分の中で整理できたタイミングで相手に謝りました。すごく辛い過程でしたけど、それを乗り越えないと人として変われないし、相手にとっても辛い出来事で終わってしまうので、勇気を振り絞って伝えました。

ーーそうした人との関わりも経て、なりたい自分になれるのかもしれません。周りの人の支えがアレックスにとって大きかったように、和田さんの活動においての周りの存在というのはいかがですか?

和田:とっても大きいです。特に心の支えになっているのはファンの方々。ツールを使って直接コミュニケーションをとることも多いのですが、私の意見に肯定的な人もいれば、別の視点を意見してくれる人もいて。互いに否定せず、すごく素敵な場所なんです。あとは、バンド活動を通して、楽器を演奏くださる方々が自分の思いや考えを音で返してくれるんです。そうすると、私の考えも変わることもあって。キャッチボールというのは、今の自分を形作っていると思います。

ーーこれからさらに広がっていく渦中にいらっしゃいますが、和田さんが今思う「何者かになる」には、何が大切だと思われますか。

和田:やっぱり、好きな気持ちは大切ですよね。すごく単純で純粋なものだから、自分で守らなきゃいけない。ただ、好きだけでは成り立たないこともあります。私の場合、ジェンダーやフェミニズムといった社会問題への考えも伝えたいけれど、それは好きという感情よりも「未来のため」だと思って発信したりエッセイを書いたりしています。自分が心の中で強く願っている未来につなげていくために、動いている“状態が好き”ということもありますよね。

■公開情報
『MISS ミス・フランスになりたい!』
シネスイッチ銀座ほかにて公開中
監督・原案・共同脚本:ルーベン・アウヴェス
出演:アレクサンドル・ヴェテール、イザベル・ナンティ、パスカル・アルビロ、ステフィ・セルマ
撮影監督:ルノー・シャッサン
プロデューサー:レティシア・ガリツィン、ユーゴ・ジェラン
音楽:ランバート
配給:彩プロ
2020/フランス/フランス語/スコープサイズ/107分
(c)2020 ZAZI FILMS ‒ CHAPKA FILMS ‒ FRANCE 2 CINEMA ‒ MARVELOUS PRODUCTIONS
公式サイト:https://missfrance.ayapro.ne.jp/

■和田彩花

アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバー、のちにリーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月にアンジュルム、およびHello! Projectを卒業し、アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術に強い関心を寄せている。
公式サイト:http://wadaayaka.com/

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