aiko、スカパラ、Sexy Zone……J-POPの可能性広げた洗練アレンジ 最新5作品をレビュー
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3人のアレンジャーが奥深いラブソングを彩るaikoのニューアルバム『どうしたって伝えられないから』、川上洋平、アイナ・ジ・エンド(BiSH)、長谷川白紙などが参加した東京スカパラダイスオーケストラの新作『SKA=ALMIGHTY』。アレンジ、サウンドメイクに注目して聴いてほしい5作の新作を紹介します!
シングル曲「青空」、「ハニーメモリー」を含むaikoの2年9カ月ぶりのニューアルバム『どうしたって伝えられないから』は、人を好きになることの切なさ、苦しさ、愛しさを丁寧に綴った歌詞、心地よいグルーヴと深いメッセージを同時に放つボーカルなど、aikoの音楽性がさらに深まっていることを示す1枚。彼女の歌を際立たせ、質の高いポップに仕立て上げたアレンジャー陣にもぜひ注目してほしい。本作に参加しているのは、トオミヨウ(M1、M2、M6、M7、M9、M11)、OSTER project(M3、M5)、島田昌典(M4、M8、M10、M12、M13)の3人。いなたさと現代的なポップネスを共存させるトオミ、ボカロPとしての発想を活かしたOSTER project、60~70年代のポップス、ロック、ソウルなどのテイストを織り込んだ島田。三者三様のサウンドメイクがこのアルバムの多様性につながっているのはまちがいないだろう。
デビュー30周年を超えても精力的に動き続ける東京スカパラダイスオーケストラのニューアルバム『SKA=ALMIGHTY』は、タイトル通り、“スカという名のオールマイティなサウンド”の無限の可能性を示す作品だ。そのことを端的に表しているのが、多彩なゲストアーティストを招いたコラボ曲。サイケデリックな音像と鋭利なギターリフに導かれた「JUMON feat.アイナ・ジ・エンド(BiSH)」、最新鋭のエレクトロニカと鮮烈なスカビートが混ざり合う「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。 feat.長谷川白紙」、ジャズ、スカ、ロック、歌謡を肉体的に融合させた「多重露光 feat.川上洋平」、ラテン音楽のエッセンスをたっぷり注ぎ込んだスペイン語詞「Ribbon feat.Moral Distraída」。一つのジャンルを追求し続けることで、ジャンルと国境を超越してきたスカパラの現在地がここにある。
デビュー曲「Sexy Zone」(2011年)から最新シングル曲「NOT FOUND」(2020年)まで、Sexy Zoneの全シングル曲・23曲をコンパイルしたデビュー10周年記念アルバム『SZ10TH』。これまでのキャリアを網羅すると同時に、2曲の新曲からはSexyZoneの最新スタイルが実感できる。レコードノイズから始まる「RIGHT NEXT TO YOU」は全編英語詞によるダンスチューン。ネオソウル以降の潮流を捉えたトラック、ラップを交えたボーカルからは、彼らの音楽性のさらなる進化を証明している。そしてメンバー自身の作詞による「Change the world」は、グループの10年の軌跡、ファンへの感謝、“これからも一緒に歩いていこう”という思いに溢れたミディアムチューン。アタックの強いビート、華やかなストリングスなどADM的なテイストを感じさせる楽曲だ。
“Amusia(失音楽)”“Amusement(娯楽)”“A music(音楽)”を合わせた『AMUSIC』をタイトルに冠したsumikaの3rdフルアルバム。「願い」(ドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』主題歌)、「イコール」(アニメ『MIX』オープニングテーマ)などのタイアップ曲からは、彼らが日本のメジャーシーンで確固たる存在感を得ていることが伝わってくる。アルバムのために制作された新曲にも、ポップミュージックの楽しさ、奥深さがたっぷり。アイリッシュ風のサウンドとともに“あなたの日常を照らしたい”という思いが広がる「Lamp」、古き良きAORを想起させる音楽性、メンバーの個性的な演奏センスが込められた「Jamaica Dynamite」、攻撃なギターとハイトーンボイスがぶつかり合うロックナンバー「白昼夢」。自由に音楽を楽しんでいる姿がありありと感じ取れることも、このアルバムの大きな魅力だろう。
「ミルクとシュガー duet with 上白石萌音」を含む大橋トリオの通算15作目となるオリジナルアルバム。オーセンティックなジャズの風味を感じさせる「Favorite Rendezvous」、70年代のソウル、ファンクのエッセンスを捉えた「Butterfly」、ワウギターの心地よい響き、眩いホーンセクションを軸にしたシックなダンスナンバー「Paradise」など、ルーツミュージックに根差した音楽性、高度に洗練されたアレンジメント、質の高い演奏が一つになったポップアルバムに仕上がっている。しっかりと抑制を効かせ、メロディの良さや楽曲に込められた思いを伝えるボーカルも絶品。たとえば〈暗い夜のその先には/必ず陽は昇る〉(「何処かの街の君へ」)というフレーズにおける、強い感情が滲む歌声にも惹かれる。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。