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kemio、東海オンエア、QuizKnock……ベストセラー続々のYouTuber本 決め手は書籍ならではの企画性?

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リアルサウンド

 2019年は、YouTuber業界にとって、ひとつの節目にあたる年だった。

 HIKAKINらのお茶の間への進出も進み、カジサック、中田敦彦ら人気芸人がYouTubeに進出し人気を獲得した。そんなふうに「YouTuber」という職業が市民権を得る一方で、へきトラハウス、カリスマブラザーズ、よさこいバンキッシュの解散、パオパオチャンネルの活動休止といった寂しいニュースも続き、レペゼン地球(※本人たちはYouTuberを自称していないが)が「パワハラやらせ」で、世論をゆるがす大炎上をおこしドーム公演が中止に追い込まれるなど、ここ数年のYouTuber人気を牽引したグループに大きな動きがあった。

 大きな事件がネットニュースを飾る一方で、地味に(?)今年は「YouTuber本」の当たり年なのではないか? と筆者は考えるのだ。こちらの記事(“炎上仮面”ラファエル、著書『無一文からのドリーム』で明かす半生とその生存戦略)ではラファエルの自伝『無一文からのドリーム』(宝島社)を紹介したが、他にも今年出版され注目を集めた「YouTuber本」を紹介したい。

カリスマYouTuber書籍のヒットが相次ぐ

 vineで注目を集め、現在はYouTubeやSNSにて自身の日常からファッション、哲学を発信し、若者世代から圧倒的な人気を誇るkemioの『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』(KADOKAWA)。彼の持ち味である軽妙なマシンガントークを、そのままエッセイに落とし込んだ本書は、老若男女問わず「すべての悩める人」をエンパワメントする内容に仕上がっている。「朝日新聞」書評に掲載されるなど幅広い世代の支持を獲得し、15万部を越えるヒットになった。

  チャンネル登録者数350万人のモンスターグループ、東海オンエアの虫眼鏡による『続・東海オンエアの動画が6.4倍楽しくなる本 虫眼鏡の概要欄 平成ノスタルジー編』(講談社)は、昨年発売された『東海オンエアの動画が6.4倍楽しくなる本 虫眼鏡の概要欄』の第二弾となる。タイトルの通り、東海オンエアの動画の概要欄の中から、虫眼鏡が執筆したものを元に構成されている。「概要欄のテキストをなぜ?」と思う人もいるかもしれないが、グループ随一の理屈屋である彼が些細なことで理屈をこねくり回すさまは、ひとつのエッセイとして完成度が高いのだ。学生が多い東海オンエアのファンに向けてか、学校にも持っていきやすいシンプルなデザインも特徴で、二冊累計で10万部を突破。

 厳密には書籍ではないが、水溜りボンドの特集を組んだ『Quick Japan』も見逃せない。元々お笑い出身である彼らにとって、『Quick Japan』は憧れの雑誌。動画やTwitterで掲載を喜ぶ姿はファンならずとも、グッとくるものがあった。

「専門家YouTuber」の書籍に注目!

 近年、「専門家」によるYouTubeチャンネルが人気だが、YouTuber本もそういった専門家にフォーカスしたものがヒットを生み出している。たとえば、元美容部員 和田さん。は百貨店の美容部員を経てYouTuberとなった異色の経歴をもち、プロの知識をわかり易く解説することで人気を博しているが、彼女が上梓した『メイクでなりたい私になる #自分映えメイク』(KADOKAWA)も本人のTwitterによると2度の増刷が決まった(10月24日時)という。

 そして、『QuizKnockファンブック』(クラーケン)は、東大クイズ王の伊沢拓司が率いる知識集団・QuizKnockのオフィシャルブック第2弾。テレビのクイズ番組でもおなじみの伊沢氏だが、YouTubeチャンネルも先日登録者数100万人を突破。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのQuizKnockメンバーの素顔から、オフィスの図解、そして動画にメンバーがコメントで振り返る「平成全動画振り返り」や、はなおやでんがんを迎えた座談会など、ファンならマストバイな内容となっている。ちなみに学研ステイフルと共同制作したノートやルーズリーフ、付箋などの文房具も「親にねだれるYouTuberグッズ」として人気となっており、もはやQuizKnockの多大な影響力に唸らざるをえない。

 最後に紹介したいのは、1GAME・てつの『パチスロ馬鹿が動画配信を始めたら再生回数が1億回を超えました』(ワニブックス)だ。パチンコ・パチスロ実践動画で人気を博しているグループ・1GAMEののリーダーである、てつ自身がどのようにしてYouTubeで勝ち上がってきたかを自己分析しながら振り返る内容となっている。遊び半分で始めたパチスロ動画チームが巨大化していく中、動画制作、営業、スタッフのマネジメントについてを詳細に語っている。「ダークナイト」のジョーカーを模した姿からは想像できないほど(だからこそ?)の冷静さ、そしてパチンコ・パチスロというジャンルへの危機感、そして愛を持ってチャンネルを運営していることが伺える好著。YouTuberだけでなく、「好きなこと」で会社を立ち上げたクリエイターには、一読をおすすめしたい「ビジネス書」だ。

 今後も有名YouTuberの書籍は増えていくだろう。早くも12月には、そらちぃ(アバンティーズ)&てつや(東海オンエア)主演映画の写真集「映画『明日、キミのいない世界で』OFFICIAL PHOTO BOOK」(講談社)や、チャンネル登録者数約50万人のYouTuber・シイナナルミ初の書籍『自己肯定感低すぎて嫉妬してる時の自分マジで化け物みたい』(KADOKAWA)が発売される。

 自己啓発書、ビジネス書、エッセイ、写真集etc……ジャンルは多岐にわたるものの、支持者数を当てにした安易な企画ではない、書籍ならではの企画、切り口が求められているように思う。安易な企画本に対しては、ファンは正直だ。僭越ながら「物申す」をさせてもらうと、YouTuber本の作り手には、安定した数字が予想できるからこそ、出版のプロとしてのスキルを生かした冒険をしてほしいのだ。

■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。8月6日に市川哲史氏との共著「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)を上梓。Twitter