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『美味しんぼ』栗田ゆう子は”あざとかわいい”? 山岡を困らせる小悪魔的一面を検証

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リアルサウンド

 『美味しんぼ』のヒロイン、栗田ゆう子。優しい女性というイメージを持つ人が多いようだが、実はかなり小悪魔的な一面も持つ。今回そんな栗田が持つ「小悪魔的な行動」を検証してみたい。

団社長とデートに行って……

 山岡への想いを随所に出していた栗田。29巻では山岡と腕を組むなどして、かなり積極的なアプローチを見せる。そんな栗田だったが、ある日、団から東西新聞社に食事に誘う電話が入る。栗田は戸惑うが、勝手に出た荒川が承諾してしまう。電話の後、山岡からデートと同じ日に「演奏会がある」との誘いが入る。「先約を断って」と話す栗田だったが、荒川が「取り消せない」と勝手に突っぱねてしまった。

 結局「あんなグータラと団社長とどっちがいいのか判断できないの?」と荒川に諭され、団社長とのデートを取った栗田。高級レストランで「個人的な付き合いをしてほしい」と懇願する団に満更でもなさそうな顔をしていると、山岡と二木まり子が登場し、鉢合わせになる。

 二木まり子は団社長の「キャヴィアの食べ方」を咎め、「所詮成り上がり」とバカにする。翌日、文化部で栗田は、喧嘩については当事者ではない山岡に「卑怯者」「なぜ止めなかった」「私が演奏会に行けなかったからって二木さんを誘うなんて」と怒りをぶつけた。(30巻)

 腕を組むなど積極的な様子を見せておきながら、荒川のおせっかいがあったとはいえ、演奏会の誘いを断り、団社長と食事をしたうえ、「二木と団社長の喧嘩を止めない」「二木とデートした」と責める。山岡としては、かなり戸惑ってしまう行動と言動だったのではないだろうか。

団社長を手助けしない山岡に激怒

 二木まり子の「所詮成り上がり」発言ですっかり自信をなくした団社長は、二木会長発案の政財界の大物を招いた重要なパーティーを中止すると言い出す。まり子の祖父である二木会長とその息子で父の二木頭取は山岡に協力を要請するが、団社長を面白く思っていない山岡は断りを入れる。この件を知った栗田は山岡を会社の屋上に呼び出し、「お願い、団社長を助けてあげて」と懇願した。

 山岡は「アレくらいのこと言われて自信を失うなら大した人物じゃない」「成り上がった人物は成り下がったこともある」「友人でもない団さんに手助けする義理はない」「君には団さんを助けた理由があるんだろうけどね」と突き放す。

 すると栗田は「山岡さんらしくないじゃないの。人を助けるのに義理だの理由だの、そんな物が必要なの? そんなこすっからいことを言わないのが山岡士郎という男だったんじゃないの?」と怒り散らし、エレベーターに乗る。

 エレベーターで「あいつめ、人の気も知らないで。もうあんなヤツ……」と呟き、下階にたどり着く。すると、山岡が階段から走って声をかけ、「究極メニューに役に立つから」といって、手助けを承諾。すると栗田はこれまでの怒りが嘘のような笑顔で山岡の腕を組んだ。

 結局山岡が考案したメニューを出したことで、パーティーは大成功。団は山岡には一言も礼を述べず、栗田の手を引っ張り、どこかへ連れ出す。栗田は不満そうな山岡の顔を見ながら、一緒に消えていった。(30巻)

 後に盟友関係を築く山岡と団社長だが、この時点ではお互いに栗田を巡って敵状態にあった。恋敵への手助けを拒む山岡の気持ちは当然のようにも思えるが、栗田にとっては「無償の人助けをしない山岡」は魅力的だと感じないようで、怒りの対象になるようだった。

待ちに待ったプロポーズで……

 山岡から「団社長の妹・ゆう子と料理人・立村の結婚がまとまったら結婚を申し込む」とプロポーズ予告を受けた栗田。無事に2人の縁談をまとめると、その帰り道で山岡は「で、次は俺の番なんだが。あ~まあその~」と口籠る。

 プロポーズを待っていたはずの栗田は「荒川夫人と三谷夫人から色々教わったわ。上手な断り方を」とまさかの対応。山岡はあっけにとられた後に肩を落とし、「そうだろうな。俺みたいな男じゃな」「幸せになってくれ。俺を断ったのは正解だよ」と呟き、早歩きで立ち去ろうとした。

 ここで栗田が「どうして決めつけるの。まだ何も言っていないじゃないの」と声をかけ、「じゃあ俺が結婚してくれって言ったら、受けてくれるのかよ」と応じる山岡。「受けるわよ」と栗田が返し、2人は結婚することになった。(43巻)

 プロポーズの場面で「断り方を教わった」と言われれば、山岡でなくても「断られた」と思ってしまうもの。栗田が鈍感な山岡に終始想いを寄せていたのは明白だったのだが、それでも一度「断り方を教わった」とジャブを入れる。まさに小悪魔的な言動だった。

結婚直前に海原雄山との仲直りを促す

 大原社主の命令で披露宴が「究極のメニュー」の発表の場となった山岡と栗田。2人は岡星で作戦会議を行う。岡星夫妻、近城と二木、そして荒川と三谷も合流し食事をしながら「これは辛い仕事になるぜ」と呟く山岡。栗田は「もう1つ辛い仕事があるわ。海原雄山氏よ」「本当に後世にまでに残る文化遺産として究極のメニューを作るとしたら、海原雄山氏の協力を得る必要がある」と声をかける。

 栗田は「これが究極と言い切れるものを作るには海原雄山氏の協力を得ることが必要だわ。海原雄山氏は山岡さんより優れたものを持っているただ1人の人間なんだから」と山岡が最も忌み嫌う雄山への協力を求めていく意向を示す。

 これに山岡は「雄山なんかクソくらえだ。この期に及んで君がそんな事言いだすなんて裏切りだよ。結婚も考え直さなきゃな」と激怒する。この後も栗田は雄山の力を評価する言葉を続けた。

 山岡は「俺があの男にどんな気持ちを持っているか知っていながら今になってそんな事を言うなんて」「百歩譲って雄山の助力が必要だとしても自分が憎しみ軽蔑する人間に助力を受けるのはゴメンだ」「披露宴も究極のメニューもクソくらえだ」と言って席を立つ。

 栗田も「私、そんな心の狭い人と結婚するのはまっぴらだわ。私たちの結婚考え直しましょう」と話す。山岡も「そのほうがいいようだね。土壇場になって人の心を裏切る人間とは暮らせないよ」と話し、店を出た。

 この後、心に深い傷を負った経験を持つ岡星冬美が栗田の「配慮のなさ」を指摘し、栗田も「性急すぎた」と自らの非を自覚。結局雄山を頼り、雄山が紹介したキャベツのスープを2人で食べ、互いに反省することで、なんとか仲直りにこぎつけた。仲直りには漕ぎ着けたものの、山岡にとっては突然忌み嫌う雄山との協力や魅力を語られるのは、最も嫌なこと。栗田にも想いがあったのだろうが、山岡は「裏切り」と感じたようだ。

小悪魔的な行動も栗田ゆう子の魅力?

 意図しているか否かは不明だが、山岡にたびたび小悪魔的な行動を見せる栗田。しかしそんな奔放な一面を持つことも魅力であり、それが山岡を射止めた要因なのかもしれない。