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映画『マンディンゴ』に蓮實重彦、黒沢清、中原昌也、宇多丸らコメント

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映画『マンディンゴ』に寄せた著名人コメントが到着した。

1975年に公開された『マンディンゴ』は、カイル・オンストットの同名小説をもとに、『海底二万哩』『トラ・トラ・トラ!』『ソイレント・グリーン』などのリチャード・フライシャーが監督を務めた作品。19世紀半ばのアメリカ・ルイジアナ州を舞台に、黒人奴隷を育てて売買する「奴隷牧場」を経営するマクスウェルと、その息子ハモンドの栄光と没落を描く。出演者にジェームズ・メイソン、スーザン・ジョージ、ケン・ノートン、ペリー・キングが名を連ね、脚本をノーマン・ウェクスラー、音楽をモーリス・ジャール、製作をディノ・デ・ラウレンティスが手掛けた。デジタルリマスター版で3月12日から公開。

コメントを寄せたのは、蓮實重彦、黒沢清、中原昌也、宇多丸(RHYMESTER)、SHINCO(スチャダラパー)、荏開津広、磯部涼、渡辺志保の8人。今回の発表とあわせて場面写真が公開された。来場者には表面に『マンディンゴ』フランス版ポスター、裏面に著名人コメントのほか、フライシャー監督語録と解説を掲載した「『マンディンゴ』B4オリジナル解説ポスター・リーフレット」を数量限定でプレゼント。

蓮實重彦のコメント

幼い黒人の子供たちが扇を緩やかに揺らし、年輩の奴隷たちが穏やかに料理を配膳してゆく薄ぐらい食堂での白人たちの晩餐シーン。そこで驚くべきは、今日の合衆国が抱えている人種問題をいまから四〇年近くも前に描ききっていたことではない。ここにあるのは、問題による問題の廃棄、頽廃による頽廃の廃棄、あるいは褐色による褐色の廃棄ともいうべき美学の実践なのだ。それが今日までアメリカで評価の対象とならなかったことこそが問題なのである。
聡明なリチャード・フライシャー監督の真の評価はいま始まろうとしている。誰もがその評価に加担する権利を旺盛に行使しようではないか。

黒沢清のコメント

黒人と白人、親と子、妻と夫、およそあらゆる人間関係が最悪の結末へと至る、震えがくるような歴史暴露映画。と言うか、これは極めて現代的な映画でもあるだろう。フライシャー天才!ゴシック・ホラーのごとき暗黒の映像が最高!そしてスーザン・ジョージ凄まじい!

中原昌也のコメント

エンタメでもなく社会派でも芸術でもなく、ただただフライシャーは映画の本質を把握しているという揺るぎない真実が、ここに息を殺して潜んでいる。マディとスーザンとメイスンとペリキンらの影と陰に。

宇多丸(RHYMESTER)のコメント

『マンディンゴ』が鋭く暴きたてるのは、人種差別のおぞましさだけではない。その裏側には、女性を都合よく利用し尽くす家父長制~マチズモの欺瞞と病理が、ぺっとりと張りついているのだ。
どちらも人を人として見ようとしない思想であること、そして残念ながら、2021年現在の人類が決して脱却できてはいない問題であるという点で、共通している。そしてそこにこそ、本作がいままた観返されるべき理由がある……たとえどれだけ不快な鑑賞体験となろうとも。

SHINCO(スチャダラパー)のコメント

1975年の公開当時の社会情勢と今では比べるのも難しいですが、色々考えさせられながらも、間違いなく心に突き刺さる映画でした。

荏開津広のコメント

アメリカ合衆国南部、1800年代半ば。人種差別と性差別が蔓延る野蛮と迷信の支配下。物議に満ちた映画に描かれた暴力とセックスと愚かさ。でも、2020年代の世界にその欠片も残っていないと私たちは言えるでしょうか?『マンディンゴ』を観ることは、世界と映画について考えさせる何か事故のような体験だと思います。

磯部涼のコメント

この映画が暴くのは奴隷制度の現実だけではない。クライマックスにおける“マンディンゴ”の怒りと哀しみに満ちた視線は、それをグロテスクな名作として消費する我々にも向けられている。

渡辺志保のコメント

問題作と言われる通り、耳を塞ぎたくなる台詞、目を覆いたくなる場面が続き、どこまでも非情で非道な映画作品である。結末では思わず声が出た。本作が提示するもっとも痛ましい点は、実際にかつてのアメリカでは肌の色や出自により同じ人間に価値をつけて売買し、家畜のように扱ってきたという歴史的史実が存在することである。そこから我々が学ぶべきことは何か。人間の愚かさを突きつけられる作品だ。