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HYDE、ツアーファイナル公演レポート到着 映像作品として発売&6月より全国ツアー開催も決定

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「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」

今年でソロ活動20周年を迎えるHYDEが、その幕開けとして2020年末から年をまたいで開催したツアー「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」のファイナル公演が3月6日、7日に大阪城ホールで開催された。

開演時刻と同時に紗幕が落ち、立ち現われるステージ。ファイナルのスタートを飾ったのはここまでの6都市9公演同様、「UNDERWORLD」だ。荒廃した近未来都市〈NEO TOKYO〉が描かれた緻密なステージセットを背に、椅子代わりのドラム缶に腰掛けてフロアタムを打ちつけながら不敵な歌声を轟かせるHYDEの姿が露になるや、会場いっぱいに声なき歓喜が一斉に広がる。続いて「AFTER LIGHT」に突入し、通常のライヴではシンガロングが巻き起こる場面に差しかかるとHYDEは「エブリバディ、ハミング!」と口を開けずに声が出せる方法を示唆。恐る恐るといった様子で客席から届いたか細いハーモニーに途端に相好を崩した。その後もことあるごとに「クラップ! クラップ!」「鳴らしていこうぜ!」と客席を煽っていく。

オーディエンスは声を出せない代わりに持ち込みが許可されたタンバリンなどの楽器類や、予め歓声を吹き込んだヴォイスレコーダー、その他音の出るオモチャなどを駆使して演奏を盛り上げる。まるで会場全体で楽曲を奏でているような特別な一体感が実に心地好く、ライヴとは観客と一緒になって作られるものなのだとつくづく知らされた。ライヴは即興芸術だと常々口にしているHYDEだが、このファイナルで大阪城ホールに響き渡った音色もまたこのとき限りの奇跡の芸術なのだろう。そして芸術とはこんなにも人々の心を満たすものだと「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」によって改めて教えられた気がする。

「ようこそ、“ANTI WIRE”へ。大阪、待たせたね。待たせたぶん、溜まった毒をいっぱい出して、気持ちよくなって帰ってもらおうかな。せっかく久しぶりに会えたんだから、一緒に楽しもう!」そんなHYDEの呼びかけに熱狂はますます色を深めていく。アコースティックライヴを謳った今回のツアーは、何をおいても特筆すべきは1曲1曲に宿った尋常ではない熱量だろう。コロナ禍による制限も多いなか、今できる最高のパフォーマンスとは何かを追求した結果、HYDEが出した答えがこのアコースティックスタイルのライヴとなったわけだが、1曲1曲に施された大胆かつ最強のリアレンジはもはや“アコースティック”と聞いてイメージするそれとははっきりと異なる。例えば「DEFEAT」など最新リリース曲でありながら、持ち味であるヘヴィにして剣呑な疾走感を削ぎ落とし、フリースタイルジャズを想起させる洒脱でスリリングなアンサンブルと艶めいたヴォーカルがオリジナルの印象をあっさりと塗り替えてしまいそうだ。

エスニックな音像と呪術的な歌声が聴く者を延々とトランス状態に導いた「SET IN STONE」。ライヴの鉄板チューンとしてアグレッシヴにオーディエンスを駆り立ててきた「ANOTHER MOMENT」はひたすら流麗なバラードに、中島美嘉への提供曲として話題を呼んだ「KISS OF DEATH」のセルフカヴァーは洒脱な肌触りをたたえたシティポップに生まれ変わり、「DEVIL SIDE」のデモーニッシュな凶暴性はボッサ風の官能的なアレンジの前にすっかり影を潜めて新しい輝きを燦々と放つ。しかも、どの曲をとってもまったく違和感を覚えないのだから見事としか言いようがなく、HYDEをして「どのアレンジも大好き、音源が欲しくなるよね。ホントいい20周年だなと思って」と言わしめるほど。HYDEとともにリアレンジを練り上げた彼自慢のバンドメンバーによる卓抜したスキルとセンスの賜物でもあり、どんなアレンジを加えても揺るがないメロディと確立された世界観もまたそれを可能にしたのだろう。各地で演奏されるたび、よりしなやかに、いっそう自由に成長してきたリアレンジバージョンの集大成が朗々と鳴り渡って、オーディエンスを陶酔させる。

「もともと1年前にやろうと思っていた計画はとうに白紙になって、2つ目の計画もちょっと考え直しました」ファイナル公演初日のライヴも終盤に差しかかった頃、HYDEはゆっくりと、そう明かした。新型コロナウイルスに対する受け止め方は本当に人それぞれで、こうしてツアーを開催することにマイナスな意見もあるかもしれないけれど、文句を言っていたって誰も助けてくれないし、自分の身は自分で守らなきゃいけない。1年前はどんなウイルスか全然わからなかったからステイホームが必要だと思ったけど、今はいかに安全にみんなで生き残っていくかが大事だと思っていると語った次の言葉だった。2つ目の計画とは昨年末から今夏に向けてアグレッシヴな楽曲を次々にリリースし、夏にはアルバムを出してツアーをしたいと考えていたという。だが、冷静に現況から鑑みるに自身が求める激しいライヴの開催は難しいと判断。アメリカのロックシーンに本気で挑むリミットをあと2年と定めていたものの、それも今は厳しく、だったら2年後にやりたいと思っていたことを今やろうと気持ちを切り替えたと告白する。

「それが20年前に作ったアルバム『ROENTGEN』の第二弾、『ROENTGEN II』を作ること」HYDEが告げると場内は万雷の拍手に包まれた。記念すべき1stソロアルバムにして、この上なく静謐な世界観をたたえた異色の傑作『ROENTGEN』。誰のためでもなく自分の欲しいものが欲しいと、自分好みの家具を、設計図の作成から材料の手配まで、何もかも自分でいちから手掛け、組み立てるようにして作られたという本作は今なおファンの間で熱狂的に支持されている。20年前の初期衝動が呼び覚まされたのか、20年を経てじっくりと培われた音楽的欲求が新たに芽吹こうとしているのか、今から楽しみでならない。そんなふうに彼が気持ちを切り替えることができた要因のひとつとして、この「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」も少なからず作用しているのではないかとも勝手ながら憶測する。

開催が発表されたとき、今ツアーの設定をHYDEは「映画でいう『Episode.0(エピソードゼロ)』、ここから物語が始まり、『Episode.1』となる“ANTI”につながっていく。つまり僕の世界観の始まりの物語が今回のツアー」だと語っていた。ならば今まさに向かおうとしている『ROENTGEN II』への取り組みは“ANTI”とは別ベクトルで繋がる次の物語、『Episode.1'(エピソードワンダッシュ)』となるのかもしれない。

さらに翌7日のステージでは、それに先駆けてソロ20周年記念として1stアルバム『ROENTGEN』を引っ提げたオーケストラツアー「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」が来たる6月末より開催されることがHYDEの口から発表された。当時はアルバムを作れれば満足で、ツアーをする予定はもともとなく、それにまつわるライヴもほぼほぼ行なわれていないという。はたして20年の時を超え、この2021年に『ROENTGEN』はどんな音色で鳴り響くのだろうか。きっとその頃にはHYDEが思い描く新しい物語の一端を垣間見ることができるだろう。思いがけないうれしい知らせに色めき立つオーディエンス、“ANTI WIRE”が終わってしまう寂しさもひととき和らいだようだ。

「ああ、美しいな。この光景が見られるだけでも幸せ者だなと思います。この1年、何もかもが変わったね。こんなことが待ってるなんてまったく思いもしなかった。でも、この状況は、これまでの当たり前の生活がなんて尊くて幸せだったのかと気づかせてくれた。いつか、あの頃のような日々が来ると信じて、魂を込めて歌います」。そうしてファイナルを締めくくったのは「ORDINARY WORLD」だった。2019年リリースのオリジナル4thアルバム『ANTI』でもラストを飾るDURAN DURANの名曲のカヴァーだ。客席一面にオーディエンスが掲げたスマートフォンのライトが白く瞬いて揺れる。サビの和訳がスクリーンに映し出され、最後にHYDEは“I(=僕)”を”We(=我々)“に替え、観客一人ひとりに力強くメッセージを手渡した。

「ありがとう。みんなのおかげで無事にツアーが終わろうとしています。今回のツアーはこれまでと意味が全然違いました。みんなも会場に来るだけで大変だったり、スタッフもいつもとまったく心構えが違う状態だし、メンバーもそう。でも、この1つの目標に向かって僕たちは歩んで来ることができて、僕は今回はコロナに勝てたと思っています」目を潤ませ、名残惜しそうに何度もキスを投げたあと、HYDEはそう晴れやかに告げると、再会を約束してステージを後にした。凛としたその背中の向こうには彼が築き上げていくだろう新しい未来が果てしなく広がっていると思えた。

最終日の終演後には「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」が映像化され、5月26日(水)にリリースされることや、ツアー「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」のスケジュール詳細も告知された。この先も続々と届くだろうニュースを心して待ちたい。

取材・文:本間夕子

【開催情報】
「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」
2021年6月25日(金)・26日(土) 会場:中野サンプラザホール
2021年6月30日(水)・7月1日(木) 会場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)メインホール
2021年7月21日(水) 会場:札幌文化芸術劇場 hitaru
2021年7月25日(日) 会場:静岡市民文化会館 大ホール
2021年8月7日(土) 会場:千葉県文化会館
2021年8月9日(月・祝) 会場:仙台サンプラザホール
2021年8月11日(水) 会場;川口総合文化センター リリア メインホール
2021年8月14日(土)・15日(日) 会場:パシフィコ横浜 国立大ホール
※詳細は後日発表

【リリース情報】
Blu-ray / DVD「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」
2021年5月26日(水) 発売

●初回限定盤(Blu-ray2枚組)
価格:11,000円(税込)
初回限定盤豪華デジパック仕様
・DISC1:「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」ライヴ映像
・DISC 2:2020-2021 HYDEドキュメンタリー映像 / 本編未収録ライヴ映像

●通常盤(Blu-ray1枚)
価格:6,600円(税込)》
・DISC1:「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」ライヴ映像

●通常盤(DVD1枚)
価格:5,500円(税込)
・DISC1:「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」ライヴ映像

<DISC1:ライヴ収録予定楽曲(全形態共通)>
1.UNDERWORLD
2.AFTER LIGHT
3.LOVE ADDICT
4.DEFEAT
5.SWEET VANILLA
6.MISSION
7.BELIEVING IN MYSELF
8.ZIPANG
9.LET IT OUT
10.MAD QUALIA
11.SET IN STONE
12.ANOTHER MOMENT
13.EVERGREEN
14.WHO’S GONNA SAVE US
15.LION
16.KISS OF DEATH
17.DEVIL SIDE
18.REVOLUTION
19.HELLO
20.I’m so happy
21.GLAMOROUS SKY
22.ORDINARY WORLD
購入者特典:後日発表

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