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SHINeeが突き詰めた“王道に属さない表現” 2年半ぶりカムバックに至るまでの軌跡

音楽

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リアルサウンド

 2021年の元旦に開催されたSM ENTERTAINMENTのオンラインコンサート『SMTOWN LIVE “Culture Humanity”』にて「SHINee IS BACK」のティザー映像が流れた。そして、1月31日にオンラインで行われたスペシャルライブ『The Ringtone: SHINee is Back』にて、2月22日のSHINeeのカムバックと、約2年6カ月ぶりのアルバムである7thフルアルバム『Don’t Call Me』のリリース告知が行われ、収録曲「Marry You」もお披露目された。

 スペシャルライブ終了後には、ボイスメールを活用したカムバック記念ARSプロモーションもスタートさせ、SHINeeホットライン(+82 70-7103-0525)に電話をかけると、メンバーたちの声を聞いて直接ボイスメッセージも残せることで話題を集めた。SNS上では「#SHINee_THE_RINGTONE」「#더링톤_샤이니가_돌아왔다」のワードがワールドトレンドランキングで1・2位に急上昇し、初披露したばかりの新曲のタイトル「Marry You」もトレンド入りするなど、世界中で話題となった。

 SHINeeは2008年5月にオンユ、ジョンヒョン、キー、ミンホ、テミンの5人組でデビューした。SM ENTERTAINMENTのアイドル達が台頭し始めた90年代〜00年代にかけて、「SMP(SM Music Performance)」と呼ばれるSM ENTERTAINMENT特有の色を持った楽曲やパフォーマンスを指す言葉が現れたが、SHINeeは「コンテンポラリーバンド」というSMPとは異なる独自のテーマを持ってデビューしたグループだった。「コンテンポラリーバンド」には、「音楽・ダンス・ファッションのすべての部分で、その時代に合ったトレンドを体現しリードしていく存在」という意味が込められている。SM ENTERTAINMENTの新人として注目を受け複数の新人賞を獲得したものの、SHINeeのデビュー当時、韓国の男性アイドルは二十歳前後の10代後半でデビューするケースが多く、同時期には男性的と言えるイメージのアイドルが人気を博していた。そんな中、15歳〜19歳とメンバー全員が10代で、当時の男性アイドルの衣装としてはまだ珍しかったカラフルなスキニーパンツに身を包み、「ヌナ(年下の男性から年上の女性への呼称)は本当に綺麗」(デビュー曲「Replay」の韓国語タイトル)と年下の男子をアピールするように歌うSHINeeの姿は、韓国の男性アイドルとしてはかなり異色であった。一方で、デビューEP『Replay』から1stアルバム『The SHINee World』、2ndアルバム『AMIGO』までの楽曲はR&Bやソウルなどが軸になっており、ビジュアル面やコンセプトではフレッシュさをアピールしつつも、サウンド面では「大人っぽい」という正反対とも呼べるような印象を与えていた。ここにシム・ジェウォンや仲宗根梨乃が振付した、繊細で柔らかながらも高難度で複雑なダンスパフォーマンスが加わり、正統派ティーンアイドルのようでいてどこかが違う、独特のスタイルを持ち合わせているのがSHINeeならではの魅力となった。

SHINee 샤이니 ‘누난 너무 예뻐 (Replay)’ MV

 様々な手法で、意図的に王道や定型のスタイルからのズレを見せる表現方法は、今現在まで続くこのグループならではの特色と言えるが、そのイメージを主にビジュアル面から固めたのは、当時スタイリストだったハ・サンベクと、SM ENTERTAINMENTにデザイナーとして所属していたミン・ヒジンだろう。2009年のミニアルバム『Romeo』タイトル曲の「Juliette」は、『ハイスクール・ミュージカル』でチャド役を演じていたコービン・ブルーの「Deal With It」をカバーした曲だが、韓国語バージョンの作詞をメンバーのジョンヒョンが担当しており、歌詞を見たミン・ヒジンが、インスピレーションによって当初の計画にあったイメージを再構築し直したというのは知られている話である。結果的に『Romeo』は、奇抜さとスタイリッシュさの境界を攻めつつも透明感は失わない妖精のようなビジュアルコンセプトと、収録曲順に愛、葛藤、別れからの思慕、そして再会というテーマがひとつの物語になっている構成から、初期SHINeeを代表する1枚と呼んでいいのではないだろうか。

SHINee 샤이니 ‘Juliette (줄리엣)’ MV

 2011年には「Replay」の日本語バージョン「Replay -君は僕のeverything-」で日本デビューを果たし、ロンドンのアビー・ロード・スタジオで記念ライブを行った。1年間日本活動やアジアツアーに注力した後、2012年にはミニアルバム『Sherlock』でカムバック。タイトル曲「Sherlock」は、一つの事件に対して理性的なヒントを意味する「Clue」と、感情的な鍵を意味する「Note」の2曲を1曲にして合体させたという(後のSuperMやNCTでも行われている試みの走り)。ジャネット・ジャクソンなどの振付で知られているトニー・テスタによるダイナミックでパワフル、そしてストーリー性のある振付は、その後のK-POPグループの群舞にも影響を与えたと言われるほど、インパクトが大きかった。

SHINee 샤이니 ‘Sherlock•셜록 (Clue + Note)’ MV

 2012年以降のSHINeeは、韓国活動と同じくらいの濃度で、日本でも活動を行ってきた。韓国ではSHINeeといえばダンスパフォーマンスのイメージが強い。日本活動でも「Dazzling Girl」や「Get The Treasure」のようなパフォーマンスが印象的なオリジナル曲もある一方で、「Fire」や「Winter Wonderland」のようなボーカルグループとしての新たな側面を前に出したような楽曲も多い。近年はテミンが日本オリジナルのソロ曲の振付を依頼した、菅原小春が韓国活動の振付も手がけたり、「The Story Of Light」につながるファンへのメッセージソング「Sunny Side」を日本でリリースするなど、活動を重ねるごとにその垣根はなくなってきている。

 2013年にリリースした「Dream Girl」のスタンドマイクダンスや「Why So Serious?」のゾンビダンスなど、SHINeeがパイオニアとも言える特徴的なパフォーマンスがこの時期にも多く誕生したが、その頂点に立つのは、先述のトニー・テスタによる「Everybody」だろう。彼らのパフォーマンスの中でも最高難度のコレオと言われ、コンセプト、ダンス、楽曲、すべての面でSHINeeの代表作とも言っていいほどのインパクトと完成度を誇る1曲である。

SHINee 샤이니 ‘Everybody’ MV

 2014年から2015年前半にかけては、テミンの1stミニアルバム『ACE』、ジョンヒョンの1stミニアルバム『BASE』と、メンバーそれぞれのソロ活動が始まった。「Everybody」は見る側にも緊張感と集中力を要求する磨き上げられた刀のような楽曲だったが、次のカムバック曲となった2015年の「View」は、がらりと変わってトレンディでエフォートレスな印象のナンバー。手掛けたのはイギリスの作曲家チーム・LDN Noiseで、近年ではITZYやMOSTA X、NCTや中国のアイドルなど幅広く楽曲提供しているが、「View」ではその洗練されたシグネチャーサウンドとSHINeeのR&B的なボーカルの組み合わせが際立っている。 作詞はジョンヒョンで、メンバーそれぞれのボーカル特性を踏まえ、この曲に関してはある程度の画一性が必要と判断。ライムや音の組み合わせを考えながら作成したという。続く『Married To The Music』では、ファンキーなディスコにコミカルなB級ホラー的ビジュアルという、また新しい組み合わせを見せた。2016年リリースの「1 of 1」は、ニュージャックスイングな楽曲と90’sレトロなビジュアルなど、昨今のK-POPを席巻している「ニュートロブーム」の先駆けとも言える1曲だった。

SHINee 샤이니 ‘View’ MV
SHINee 샤이니 ‘1 of 1’ MV

 2018年にリリースした『The Story Of Light』は3部作。メンバー自身が語ったアルバムのコンセプトは、「『ep.1』は大衆から見たSHINee、『ep.2』はSHINeeから見たSHINee、『ep.3』はファンから見たSHINee」であった。大衆的な親しみやすさというよりは、サブカルチャーとしての「アイドル」らしさとアーティスティックな感性で、常にコンセプチュアルな作品を作り出してきたSHINeeだが、今作のコンセプトはまさに「SHINee自身」そのものだったのだろう。その名の通りアイドルとしてのポジティブな輝きは失わないながらも、「コンセプトを表現するエンターテイナー」として、さながらF1カーを操るトップドライバーのように自らの仕事に徹してきたプロフェッショナルなSHINee。だが、今作ではかつてないほどの困難や悲しみに対する「メタ的な視線」と、自分たちの率直な感情を同時に昇華して見せたという点で、まさに新たな1ページを描いていた。

 2018年にはメンバーそれぞれがソロを発表し、1989年生まれの最年長のオンユから、1991年生まれのキー、ミンホがそれぞれ兵役のために入隊。SHINeeとしての活動ができない間は、末っ子のテミンがソロやSuperMとして精力的に活動を行ってきた。昨年2020年11月にミンホが除隊し、2年ぶりに完全体でのカムバックが今年2月22日に実現した。

 7枚目のアルバムとなる『Don’t Call Me』は、ダブステップの要素を取り入れたタイトル曲の他、シンセウェイブやフューチャーハウスなどSHINeeとしての新たな一面を見せてくれる1枚となっているが、これらのサウンドがどこか不穏さを感じさせるティザーのビジュアルとどのようなケミストリーを起こすのかも期待される。

SHINee 샤이니 ‘Don’t Call Me’ MV

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ「サンダーエイジ」https://nenuphar.hatenablog.com/
Twitter(@djutakata)

■リリース情報
SHINee 7thフルアルバム『Don’t Call Me』
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ストリーミングはこちら

<収録曲>
01 Don’t Call Me
02 Heart Attack
03 Marry You
04 CØDE
05 I Really Want You
06 Kiss Kiss
07 Body Rhythm
08 Attention
09 Kind

「Don’t Call Me」ミュージックビデオ

SHINee Official Website