GEZANが新たなベーシストを募集、音楽が好きならテクニックなどは不問
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GEZANが新たなベーシストを募集している。
カルロス・尾崎(B)の脱退を先月発表したGEZAN。新ベーシストの募集期間は本日3月8日から4月8日までの1カ月間で、音楽が真に好きならば性別、年齢、国籍、人種、テクニックなどは不問とのことだ。詳細はGEZANのオフィシャルサイトで確認しよう。
GEZAN コメント
バンドという集合体は一体なんなのだろうか?
年が明けてすぐ、メンバーだったカルロスが脱退した。グルーヴが壊れたわたしたちは否応なく緊急事態宣言下という静寂の球体の中に放り出された。焦燥と混乱に犯された三体の肉体を受け止めるのに、今の静かすぎる街では役不足で、わたしたちは文字通りもがいていた。
ベッドの上、転がる腐肉は落ち込む以外にやることがない。そんな夜は磨きすぎた思い出が刃物となり、静寂の隙間から心臓を刺す。当然だ。わたしたちはいつか凶器ともなりうる綺麗な思い出を10年以上も積み上げてきたのだから。決まってわたしは通話ボタンを押す。
「もしもし。」
「何しとん?音楽聴こや。」
「ええで。」
そうして題名の付いていない夜に集まり、酒を飲んで、会話にならないところまでいって音にまみれて潰れた。
豊田利晃監督作のナインソウルズのポスターのコピーをたまたま見つけた。
「帰る場所はない。いくあてだけがある。」そのフレーズにつかまれ、その通りだと豊田監督に伝えたら「帰る場所はあるよ。それを認めるのも強さだ。」とメッセージが返ってきた。意味がつかめず曖昧に返事を返したが、今ならわかる。
わたしには帰る場所があった。それは故郷でも家族でも恋人でもなく、GEZANこそが帰る場所だった。そのことがこの二ヶ月で身に染みほどわかった。あけ続けた空の缶ビール、レコードに針を落とし、新しく紡ぐ未来の話をする。リフを弾く、声を出す。その時間だけが本当に救いだった。だから辛いのだ。グルーヴが壊れたことが。
バンドという集合体はとてつもなく不自由で思い通りにはいかない。宅録や打ち込み、ヒップホップなんかに比べてスタジオ代も時間もかかる分、わずらわしいことも増え、まるで人生そのものみたいな不完全な存在だ。わたしはバンドに対して何を今でも執着しているのか?その存在は、コロナで静かになった街の底で、言葉になる前の声でもってしきりに答えを叫んでいた。
わたしたちはベースを募集する。周りにいる名のあるうまいプレイヤーに声をかけてスケールを落とさずうまくスライドさせることを周辺の大人は勧めた。そのこともよくわかる。こんなところで時間を使い右往左往とスタジオの床を這いずり回る時なのだろうか?しかし、わたしたちの求めているバンドはそれとはどうも違うみたいだ。つくづく、スマートにやらしてくんないなと自分のめんどくさい性格を恨む。でもそういうとこ大好き。
バンドを活動するのには逆風のこの時代において「バンドをやりたい」と真に思う奴は本物のバカに違いないだろう。きっと全国のどこかにくすぶってる奴はいるはずだ。かつて組みたくても組めなかった高校生の頃の過去の自分のように。初めてイーグルに会ってバンドを誘った日のこと、初めてスタジオに入った日の心臓の高鳴り、アンプにシールドをぶっ刺してギターを叩いた日のハウリング、マイクからする唾の匂い、全部覚えてる。
カルロスとは十年かけてバンドになった。また十年かけてバンドになればいい。積み上げてきたスケールや人気は虚構。クソだ。そんなものは使い捨てマスクと一緒にとっくに捨てた。一から出会って、また一からお前とグルーヴをはじめる。
人と人が出会う事はどう考えたって奇跡だ。
ドラマーのロスカルはGEZANを見たこともないのにメンバーになった。もっとうまい奴はいたが、誰とハモるかなんてのは蓋をあけてみないとわからない。すぐに上京してきてわたしの家に住みつき、死ぬほど飯を食らい練習して、今では代えなどきかない我々の心臓だ。
他人だった別の人生同士が交差して、衝突し、それでも同じ夢をみる。わたしはバンドのこの一点に焦がれている。起こし続ける当たり前という名の奇跡。テクニックの寄せ集めじゃない。もう一度バンドという存在と必然を信じてみたい。
すでに先のでかい絵は描いてるんだ。異臭のする時代、オルタナティブな未来についての展望、今ここでは言わないが近日告知するから、チェックしてほしい。この数ヶ月はキツかったけど、ただでは転ばないし、こういう時は攻め時なんだとファウストは耳元で囁く。
流れてきたエンドロールには名前はなかった。あったとしても光を見すぎて目なんてとっくにバグっちゃってるからね。読めません。
わたしたちは連絡を待っています。
そう、前メンバーとの最後になるとは知りもしなかったフジロックの年越しライブ、その最後にこう歌っていた。
「でたらめな未来で会おう、どんな時代が待ってても。イメージが君と僕を出会わせた。Absolutely Imagination」って。想像力が新しい仲間とつないでくれる。嘘つきになりたくないから、拡散でもいいし、友達にはこの赤い山賊のこと話してみてほしい。
前メンバーのカルロスのこと、引きずる気持ちも理解はできるが、いつだって未来が輝いてないと嘘だろう?
わたしは懸命に駆けた過去のことを嫌な思い出にしたくない。そのためには明日の自分達がプライドをもって輝いていないといけない。そうしないと紡いでいきた綺麗な思い出を恨むことでしか向き合えなくなる。それは健全じゃないよな。
変えられない昨日より未開の明日に全感覚をベットする。願わくばあなたもそうであってほしい。だって明日もわたしたちは生きていくんだから。
何度でもはじめられることを証明する。
さあ、新しいフェイズをはじめよう。そのチャプターのタイトルは応募してくるやつの名前であって、まだ今は誰も知らない。
ただの仕事でも、青春ごっこでもない。
音楽をしよう。