「芝居の可能性を感じた」渡邊圭祐が初の絶対的“悪”に挑む『ブレイブ ー群青戦記ー』
映画
インタビュー
渡邊圭祐 撮影:友野雄
戦国時代にタイムスリップした高校生アスリートたちが戦国武将と戦うという奇想天外なストーリーの漫画『群青戦記』。2013年から2017年まで週刊ヤングジャンプで連載され人気を博した作品が映画『ブレイブー群青戦記ー』という名で実写化、2021年3月12日に上映される。国内映画初主演の新田真剣佑を筆頭に多くの人気俳優が出演する本作から、作中最もミステリアスな人物と言っても過言ではないキャラクター「不破瑠衣」を演じる俳優・渡邊圭祐さんにインタビュー。
『仮面ライダージオウ』でウォズ役を演じて以降、人気ドラマ『恋はつづくよどこまでも』や『MIU404』など多くの作品に出演している渡邊さん。『ブレイブ-群青戦記-』ではキーパーソンとなる役を演じている。ご自身が演じる不破の印象や同じ年代のキャストが多いという撮影現場について語ってもらった。
大人になって忘れていたことを思い出す映画『ブレイブ ー群青戦記ー』
――映画『ブレイブ ー群青戦記ー(以下、ブレイブ)』のお話をいただいた際、作品に対してどのような印象を受けましたか?
オファーのお話をいただいた際に企画書を読んで、とてもぶっ飛んだ設定だなと思いましたね(笑)。高校生アスリートが戦国時代にタイムスリップして戦国武将と戦うなんて……。これまでに見たことのない戦い方も面白いですよね。時代劇は鎧と刀、弓矢、銃などが主流ですけど、『ブレイブ』は野球やボクシング、アメフトで戦うのも新しいなと感じました。
だけど、そういうぶっ飛んでいる設定だけじゃなくて、心揺さぶられる瞬間もあります。出来上がった映像を見たとき、僕が想像していた以上に強いメッセージ性を感じました。
――どんなメッセージ性を感じましたか?
大人になると見えるものが広がってきて、先のことを考えて行動するようになるんですよね。明日は朝から仕事だから響かないように行動しないと…とか考えるようになっていて。それが大人になるってことだと思います。
一方で、高校生の頃はそんなことを考えていなかったなって。明日の授業のことなんか考えずに部活や課題、学祭の準備に取り組んでいましたし。『ブレイブ』は目の前のことに変な雑念なしに行動していくことの大切さ、後先考えていることで失ってしまっている時間や得るものに気づける映画だと思います。僕自身、後先考えずに行動する思い切りの良さは仕事面でも必要ということに気づけました。
頭が真っ白になるほどの気迫を感じた、松山ケンイチの芝居
――今回渡邊さんが演じられた不破瑠衣は、主人公たちより先に戦国時代へタイムスリップし、歴史の操作を目論むキャラクターです。最初に抱いた不破の印象はいかがでしたか?
世の中の全てをくだらないと思っている人間で、パッと見は相当な“悪”です。『ブレイブ』の中でも唯一の悪と言っていいくらいの悪だと感じました。
でもいざ演じてみると、彼の行動は不破本人からしたら正義だと気づいたんです。はたから見たら悪であることに変わりはないけれど、彼自身は自分が正しいと思うことを選択して行動している。見る角度によってこんなにも見え方が変わるのかと。すごくおもしろい人間だと思います。
――歴史モノの作品に出演されること、不破のような“悪”のキャラクターを演じること、どちらも初挑戦だと思います。『ブレイブ』で不破を演じる際、難しさは感じましたか?
本当に初めて尽くしだったので難しさを感じる以上に楽しく刺激的な日々でしたね。甲冑を着るのも槍を振り回すのも馬に乗ってアクションをするのも初めてで。タイムスリップもしたことないし……それはみんなしたことないか(笑)。
――(笑)。
同じ世代の役者がいっぱいいて楽しさもあり、松山ケンイチさん(織田信長役)や三浦春馬さん(徳川家康)のように人として厚みのある方たちから刺激をもらいました。とてもありがたい存在でしたね。
――ご自身が演じられた中で印象に残っているシーンはありますか?
全てが印象に残っていますけど、一番は織田信長演じる松山ケンイチさんとのシーンですね。信長に不破の思惑がバレいるのではないかと感じるシーンで顔の距離がとても近い瞬間があるんです。少しでも動いたら自分の考えていることが全部バレてしまうのではないかと思うほど、目の動きさえ許されない状況に陥って、瞬きもできなければ言葉なんて出てこない。頭が真っ白になるとはこういうことか、と思わされるくらい信長の気迫を見せつけられました。
――あのシーンは見ている側もドキドキします……。
松山さんの信長はやり過ぎなくらい怖かった(笑)。松山さんご自身はとても良い人なんですけど、『ブレイブ』の中での信長という役にとてもピッタリで。めちゃくちゃ不気味で何を考えているか分からないし、一緒に演技をしているとすごく汗が出てくる。エネルギーを吸い取られる感覚がありました。不破として恐怖を感じたと共に、お芝居の可能性の広がりを感じて楽しかったですね。一番実りのある時間でした。
あと、馬に乗って登場するシーンがあるのですが、撮影中は馬がすごい暴れていて(笑)。映画では微動だにせず乗っているように上手く切り取られていたので、映画ってすごい!と思ったシーンでした。
――不破や今お話された織田信長以外に渡邊さんが魅力的に感じるキャラクターはいますか?
相良煉(演:福山翔大)と成瀬勇太(演:飯島寛騎)の組み合わせは関係性がすごく魅力的だと思います。もちろん主人公の西野蒼(演:新田真剣佑)や松本考太(演:鈴木伸之)も魅力的ですけど、物語が進むにつれて関係性が変化していく相良と成瀬の関係性は見ていてワクワクしました。
健康管理に徹底した環境。ご飯で士気を高める撮影現場
――本広克行監督とは初めてご一緒されていますが、撮影時の本広克行監督とのエピソードがありましたら教えてください。
本広監督はとにかく飯にこだわる人で。「現場の士気は飯にある」という方なんですよ。だから、昼も夜も弁当は極力なしでケータリングを入れてくださって。キャスト、スタッフさん全員がテンションの高い状態で撮影に臨む現場でした。弁当が出たときは本広監督の機嫌が悪いときなので(笑)、そういう分かりやすく人間味のあるところも素敵な監督だと感じます。
――ご飯のこだわりは演じる上で力になっていると感じましたか?
ご飯からいい状態で撮影に臨めたと思います。アクションが特殊で体力的にもしんどいことの多い現場だったので。本当にいろんな種類のケータリングがあって、おかわりも自由でしたし、アメフト部の人達は喜んで食べていました(笑)。
あと、整体師さんも現場に入っていたんですよ。僕以外のみんなはアスリートのプロフェッショナルという役どころだったので、より良いアクションができるようにと空き時間に体のケアができて。充実した環境でしたね。
――渡邊さんも整体師さんにマッサージしてもらったのでしょうか?
一回だけ使いました。僕の衣装、とてもこだわってつくっていただいた衣装で。京都から布を取り寄せて、甲冑も本格的なものを付けていて、不破の妖艶な雰囲気を衣装からつくり込んでくれたんです。同時に一人で着れないし脱げないくらいすごく着込んでいたのですが、最初は重いとかあまり感じずに着ていたんですよ。
でも、一度せっかくならと整体を受けたら「よくこれで歩けていたね」と言われて(笑)。すごい凝り固まっていたんでしょうね。鍼も打ってくれて、施術が終わった後はめちゃめちゃ体が軽く楽になりました。そしたら、そのあと衣装を着るのがキツくて……一度楽を知ってしまったから、甘えが出てきてしまった。受けない方が良かったのかもと思いましたね(笑)。
――後悔するほど効果があったんですね(笑)。本広監督の演技指導の面ではいかがでしょうか?
ご飯に関して以外は、自由にやらせてくれました。本広監督の求めることも少し言われるけど、基本的には僕ら演者のことを第一に考えてくれる監督でした。撮りたい演技よりも僕らのやりたい演技をやらせてくれる。すごくありがたかったです。
――キャスト同士の仲はいかがでしたか?
キャスト同士の仲も現場の雰囲気もすごく良かったですよ。主演のマッケン(西野蒼役、新田真剣佑)がつくったキャストの空気感を壊さないように、スタッフのみなさんも意識してくださって。
高校生役だから役がノってくるとはしゃぎ過ぎてしまう部分があって、そういうときに軽く「やり過ぎだよ」とスタッフの方に言われることもありました(笑)。学祭でどれだけふざけて楽しめるかって醍醐味だと思うんですけど、そういう空気をキャストだけではなくスタッフのみなさんも含めて全員でつくっていけたと思います。
渡邊圭祐に聞く、4つの「もし〇〇だったら」
――ここからは映画『ブレイブ』と関連する「もし〇〇だったら」という質問を4問お伺いしていきます! 1問目、もし『ブレイブ』の世界に行ったら味方につけたい部活は何ですか?
科学部ですね。頭を使えば近距離でも長距離でも戦うことができる。現代人が勝つには科学を使わないとと思います。
――2問目、もし『ブレイブ』の世界に行ったら渡邊さん自身はどのようなスキルで敵と戦いますか?
うーん……(少し考え込む)。僕自身、学生時代はバスケ部だったんですけど、アメフトのように接触プレーもしないし、野球・サッカー・バレーのようにボールを強く放つこともしないから、できることがないかもしれない……。なので、上手く科学部側に回りたいですね(笑)。
――演技のスキルも活かせそうですが……。
歴史に詳しくないから暗躍できなさそう(笑)。懐に入るのは得意なので、どうにかして武将側に入る生き方をするくらいですかね。
――3問目、もしタイムスリップできるとしたらどの時代に行って、何をしたいですか?
自分の生まれる少し前、30~35年前くらいかな。自分と同い年くらいの両親とお酒を飲みたいですね。当時どんな考え方をしていたのか、自分とどれだけ似ているのか知りたい。時代は違えど、自分と通ずる部分があるのか、ちょっと気になります。
――4問目、もし戦国時代に行けるとしたら行ってみたいと思いますか?
思います。戦国時代じゃなくてもいいのですが、ネットのない時代に行きたいですね。今っていろいろなものが発達し過ぎた結果、全てを見られている感覚になるというか。それがたまに面倒に思うことがあるんですよ。窮屈さを感じるというか。なので、そういうものがない時代に行きたいなって。もちろん行ったら行ったで、ほかの部分で大変なことはたくさんあると思いますけどね(笑)。
――ありがとうございます! それでは最後に映画『ブレイブ』をご覧になる方たちに向けてメッセージをお願いします。
高校生だからこそもどかしく感じる部分もありますが、何かしらの刺激を受けていただけると思いますし、高校生たちの熱量を見ていろいろと大切なことに気がつける映画だと思います。万全の対策をして、ぜひ劇場に足を運んでください。
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撮影/友野雄、取材・文/阿部裕華
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