ラーヤには“ついていきたくなる”魅力がある。吉川愛が語るディズニー最新作『ラーヤと龍の王国』
映画
インタビュー
ラーヤ役の吉川愛
ディズニー・アニメーションの最新作『ラーヤと龍の王国』が公開されている。本作の主人公ラーヤは、幼い頃にある事件に遭遇し、人を信じることができなくなったまま孤独な旅を続けているが、仲間に出会う中で、再び“人を信じる”ことの大切さを学んでいく。日本版でラーヤを演じた吉川愛は、時間をかけてラーヤと向き合い、彼女の芯の強さや、心の奥にあるさみしさ、そして、裏切られもなお人を信じたいという気持ちを声を通じて伝えたかったという。
本作の舞台は、邪悪な魔物の出現によって国を守っていた“聖なる龍”たちが去り、人々が分裂してしまった王国。主人公のラーヤは、龍の石を守る一族の娘として生まれ、分裂した人々が共生することを願う父の下で育ったが、ある事件によって父が石化してしまい、彼女は人を信じることができなくなってしまう。6年後、石になった父を救う方法を探すため、相棒のトゥクトゥクと旅を続けるラーヤは、最後の龍シスー、そして仲間たちに出会い、変化を遂げていく。
ドラマ、映画、CMでも活躍する吉川は、本作が初めての吹き替えになるが、“役のことを考え、描かれていない部分を想像で埋めていく”ことが、演じる上で重要だと言う。
「どんな作品でも演じる上で、そのことが一番大事だと思っています。だから今回もラーヤのことをもっと知ろうと思って、これまでどうやって過ごしてきたんだろう? とか自分なりの想像をしていきました。こういう生活をしてきたんだろうな、とか、こんな食べ物が本当は好きだろうな、とか。物語の中には6年間の空白があるんですけど、その間に何をしていたんだろう? トゥクトゥクと一緒にどんな孤独な時間をおくっていたんだろう? ということも想像しました。想像したことを直接、伝えることはできないんですけど、自分で想像することで、これまでにラーヤが積み重ねてきたものが少しでも伝わればいいなと思って収録しました」
そんな作業の中で、吉川はラーヤの魅力にどんどん気づいていったという。
「ラーヤは本当に魅力的なんですよ! 意思の強さだったり、孤独だけど、それでも目的のために突き進んでいくところだったり。それにラーヤは、旅を続けていく中で自然と仲間ができてしまう。たぶん、彼女には“人がついていきたくなる魅力”があるんだと思うんです。ラーヤは人のことを信じられない娘ではあるんですけど、孤独な旅を続ける中でさみしいと感じている部分もあるだろうし、かつては人を信じることができる女の子でもあったわけで……共感とは少し違うんですけど、ラーヤの気持ちがわかるし、強さやカッコよさもあって、観ているといろんな感情を感じさせてくれる。それこそが彼女の魅力だし、みんながついて行きたくなる部分なんだと思います」
映画の冒頭のラーヤは、自分の父を救うことだけが大事で、人のことを信じない女性として描かれる。しかし、観客はそんなラーヤをなぜか魅力的に感じるはずだ。
「そうなんです! ラーヤはイヤな人ではないんですよね。だから収録する上で何か特別なことをしたわけではないんですけど、ラーヤはかつては人を信じていたわけだから、また人を信じることができるはずだってことはずっと思いながら演じていました。それに相手によってセリフのトーンを変えることも意識しました。トゥクトゥクに対して話す時は自分のペットに話しかけるように優しく、人間に対して話すときは相手を信じることはできないんですけど、一緒に旅を続けたい気持ちもあるし、本当はさみしさを感じている部分もある……そんな感情がセリフのどこかに入っていればいいなと思いながら演じていきました」
芯が強くて、まっすぐで、自分の目的のためにはまっすぐに進むけれど、心のどこかにさみしさを感じているラーヤの声を、吉川は巧みなニュアンスで演じている。強いトーンで押し切るのではなく、セリフの細かな部分に優しさや、切なさを織り交ぜた演技によって、ラーヤの心の動きがしっかりと伝わってくる。
「これまでは表情や動きも使って感情や思っていることを表現できたわけですけど、声だけで感情を伝えようとするのは本当に難しかったです。こうして普通にお話させていただいているトーンでそのまま演じると“平板”に聞こえてしまうんですよ(笑)。だから、ふだんは使わない声のトーンを出しつつ、感情が伝わるように演じないといけない。ただ、どんな演技もひとつずつ丁寧にやっていかないと自分自身も成長しないですし、今後のためにもならないと思っています。それに作品はこれからもずっと残っていくものじゃないですか。だから私がおばあちゃんになった頃にその作品を観る方もいるだろうし、私はいろんな方の心を動かすことができたらいいなと思っているので、丁寧に演じることが自分の中でいちばん重要なことだと思っています」
冒険を続ける中で、ラーヤは何度も危機に出会い、人を信じることができないことからピンチを迎え、裏切りにあっては傷ついてしまう。それでも彼女は旅を続け、やがて“人を信じる”心を取り戻していく。
「ラーヤは何度も自分自身に問いかけているのかもしれないですね。それにラーヤは根がとても強い娘ですし、自分のことだけじゃなくて、相手のこともちゃんと考えられることができる。それができないと、人を信じることはできないでしょうし、何度も裏切られているのに、最後には“人を信じる”ことができる。それは本当にすごいことだと思います」
吉川は、ラーヤについて時間をかけて考え、想像し、様々な工夫を凝らして声で彼女の感情を表現したことで、ラーヤを演じたことが“特別なもの”になったと笑顔を見せる。
「こうしてる今も、またラーヤの声を演じたいです! もしかしたら、普段の声と大きくは変わらないのかもしれないですけど、やっぱりラーヤを演じる時の声は、自分の中では“特別な声”なんです。ラーヤを演じる時にしか出さない声があるんですよ。だから、またいつか“ラーヤの声”が出せる日をずっと待っています!」
『ラーヤと龍の王国』
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撮影:杉映貴子
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