『美味しんぼ』栗田ゆう子の恋のライバル・二木まり子の奔放な魅力を検証
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『美味しんぼ』中期から栗田ゆう子の恋のライバルとして登場し、山岡士郎と結婚するためあの手この手を尽くした二木まり子。実家が財閥の彼女は、お嬢様育ち特有の「気の強さ」を見せ、栗田や読者を驚かせることも多かった。今回はそんな二木まり子の奔放な行動を検証してみよう。
団社長を「所詮成り上がり」とバッサリ
レストランで、食事をしていた団社長と栗田ゆう子に遭遇した二木まり子。団社長に「私たちデートしたわよね。でもダメ、一生懸命努力して成り上がりましたって感じで私嫌い」と強烈にこき下ろす。
栗田は「まあ失礼な」と怒るが、「私は親戚中金持ちだらけ。金持ちなんか見飽きるほど見てきたのよ。私にとって成り上がりの億万長者というだけの男なんて退屈なだけ」とバッサリ斬る。
雰囲気が悪くなったところに、山岡が現れる。すると二木は山岡の腕を組み「美味しい食事の後、ジャズの演奏会に行くのよね」と笑い、栗田は露骨にムッとする。そして山岡と二木は団社長と栗田の隣のテーブルで食事をすることに。ここで団社長は「最上のキャヴィアを取り寄せた」と話し、山岡と二木にも振る舞う。そしてキャヴィアと薬味を黒パンの上に乗せ、レモン汁をかけて食べ、その後ウオッカを飲む。
その食べ方を見た二木は失笑し、「これだから成り上がりは嫌なのよね」「悲しいかな所詮は成り上がり。本当に最高のキャビアの食べ方はご存じない」「これほど見事なキャヴィアにどうして余計なものを混ぜてキャヴィア本来の味を損なう必要があるの?」と斬る。
さらに団社長が予定していた政財界の要人を招いたパーティーについても「今みたいなキャヴィアの食べ方をしたら、心ある人は団さんのことを、成り上がりは成り上がりと軽蔑するだけよ」「パーティーで団さんがどんなキャヴィアの供し方をするのか楽しみだわ」と笑った。(30巻)
二木の発言にショックを受けた団社長は、パーティーの一時中止を決意をするほど落ち込んでしまう。そしてこの件を聞いた祖父の二木会長は自身がパーティー開催の発案者だったこともあり「まり子は酷いことを言った」と山岡に話している。
賛否両論の発言だったが、生粋のお嬢様であるがゆえの説得力を持っていたことは間違いない。二木まり子、恐るべしだ。
「既成事実」を作ろうと山岡の膝に乗る
栗田に想いを寄せる近城カメラマンと、山岡との結婚を目論む二木は、お互いの利害関係が一致し、協力することになる。
二木は近城の発案で「既成事実」を作ろうと、山岡の家に1人で乗り込む。椅子に座り新聞を読んでいた山岡に対し、二木は椅子を寄せて座るとピッタリとくっつく。さらに「私今までこんな気持ちになったことはないわ」「言葉なんてまどろっこしい」と話し、山岡に抱きつき、膝の上に乗る。
二木が膝の上に乗って既成事実を作ろうとした瞬間、岡星夫妻が家のドアを開ける。結局、二木の「既成事実作戦」は失敗に終わった。(41巻)
仮に既成事実ができたとしても、結婚に繋がるかどうかは不明だったが、影に栗田との結婚を目論む近城がいることを考えると、「関係を持った」ことが栗田の耳に入ることは必至だっただろう。草食系男子の山岡といっても、美女が膝に乗れば、手を出さない可能性は低い。そこに目をつけた二木の行動は、かなり大胆なものだった。
栗田を「カマトト」とバッサリ
栗田との結婚を目論む団社長は、レストランで「僕は君と結婚したい。邪魔者は排除する」「栗田さんは山岡さんに惹かれているようだ。今までは紳士的に振る舞ってきたけどもう我慢できない」「君を勝ち取ってみせる」などと、プロポーズする。
数日後、栗田は荒川と三谷に相談。栗田は「困っちゃったわ」と語るが、2人は「あんないい人いない」「困ることあるもんか、もう決まりよ」と決めつける。するとそこに近城カメラマンと二木まり子が現れ、近城が「僕と結婚してください」「邪魔するものは叩き潰す」「誰にも渡さないからね」と結婚を迫った。
立会人を自称した二木は、困り果てる栗田に「栗田さん、近城さんの誠意に答えるべきだわ。近城さんと結婚するの? しないの?」とけしかける。栗田が「そんな…」と戸惑いを見せると、「何よ。カマトトぶるのは止めなさいよ。成熟した大人の女として答えなさいよ」と激怒した。(42巻)
山岡への想いがありながら、団社長や近城と食事を重ねていた栗田。そんな彼女に、二木は不満を抱いていた様子。「カマトト」発言は少々過激ではあったが、栗田の不安定な状況を適切に表現していた。二木の発言にスッキリしたのは筆者だけではないはず。
近城の元同棲相手を殴る
山岡と栗田の結婚が決まり、二木は近城への想いを栗田に告白し、協力を求める。そして近城も、山岡に二木との交際を手助けするよう頼んだ。
悩んだ山岡と栗田はオーストラリア取材に近城と二木を同行させ、そこで気持ちを伝える機会を作ることにする。山岡や栗田は特になにもしていなかったが、近城と二木はかなりいい雰囲気になっていた。
そんななか、宿泊先のホテルに入ろうとしたところで、景子という女性が「あら、勇」「何よ、仕事なの?」と声をかける。近城が「仕事だよ」と返すと「それが危ないのよね。私と暮らしていたときも仕事だと言っては他の女と…」と意外な過去を明かした。
怒った二木は「東西グラフ」の仕事を栗田に任せ、写真は「そこにいる破廉恥男が撮るわよ」「編集部には突然体調が悪くなったと言い訳するわ」と話し、荷物をまとめる。「話を聞いてくれ」と引き止める近城に「何よさっきの下品な女は。あんな女と暮らしていたような不潔な男とは一刻でも一緒にいるのはごめんだわ」と話し、去っていく。
その後二木が日本に帰っていないことが判明し、心配する一行。山岡は「最悪の事態を考えていたほうがいい」とまで発言する。二木の行方がわからないまま究極対至高の対決が行われ、料理の見直しをするため材料探しにでかけることになった究極側。そこへ突然二木が現れる。
そして近城に対し「帰ろうと思って空港に行ったら、あの女と会ったのよ。向こうは私のことを覚えてなかったみたいだけど近寄って引っ叩いてやった」と話す。「ひえー」と驚く近城に「そしたらスッキリしちゃった。なんでくだらない女のことでイジイジ悩んでいたのか」と、気持ちを切り替えたことを明かす。
近城は「こんな気持ちになったのは初めてだ。二木さん結婚してくれ」とプロポーズ。二木は「栗田さんのときは?」「全く何人の女性を泣かせてきたの?」と憤る。山岡は「死刑だな、こいつは」と畳み掛けるが、二木は「近城さんみたいなエネルギーが有り余っている人も魅力的だわ」と話し、結婚を承諾した。(44巻)
好きな相手を「不潔」と罵ったうえ、気に入らない相手をぶっ飛ばしてしまう気の強さ。二木まり子の直情的な性格が現れたエピソードだった。
気の強さが魅力?
お嬢様で気が強いが、好きな相手には尽くす二木まり子。読者のなかには、結婚するなら栗田よりも二木と感じた人も少なくないと聞く。雑誌の編集者としてバリバリと仕事をしたうえ、恋にも積極的で強気。彼女の魅力は、そのあたりにあるのかもしれない。