声優 中村悠一、『呪術廻戦』五条悟などで見せる表現の振れ幅 “おいしいキャラ”任される理由とは
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エンタメ作品には往々にして、“おいしいキャラクター”というものが存在する。とびぬけて強かったり、強烈な個性があったり、物語の鍵を握っていたりするそれらのキャラクターは、時に主人公を差し置いて活躍しては人気をかっさらっていく。「物語のおいしいところ」を持っていく人気キャラ、だからこそ実力がなければ背負えないその役を数多くこなしている声優がいる。それが中村悠一だ。
『おおきく振りかぶって』の阿部隆也や『CLANNAD-クラナド-』の岡崎朋也(ともにTBS系)、『マクロスF』(MBS・TBS系)の早乙女アルトなど話題作の人気キャラを相次いで務め、以降第一線で活躍し続けている中村。その声は、落ち着いていて癖がなく耳なじみのいい「ザ・イケボ」。余裕のある男前ボイスは、『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』(TOKYO MXほか)のブローノ・ブチャラティや『Re:ゼロから始める異世界生活』(AT-X、TOKYO MXほか)のラインハルト・ヴァン・アストレアなど、頼もしい実力派キャラクターとの相性がいい。
端正な役だけでなく、『おそ松さん』(テレビ東京ほか)ではナルシストな次男・松野カラ松や、『うたの☆プリンスさまっ♪』(テレビ東京ほか)での乙女な女装アイドル・月宮林檎、『ドリフターズ』(TOKYO MXほか)の荒々しい武将・島津豊久などクセの強いキャラクターもこなしており、幅広い演技を見せる。
そして、他にはない、なんらかの能力と強い個性が掛け合わさると、冒頭に述べたような「おいしいところ」を持っていくキャラクターが生まれることがある。「未来視」の能力を持つ『ワールドトリガー』(テレビ朝日系)の迅悠一や、物語の鍵を握り暗躍する『フルーツバスケット』(テレビ東京ほか)の草摩紫呉なども、中村が演じた“おいしいキャラ”と言えるのではないだろうか。
そして、“おいしいキャラ”と言えば今最もアツいのは『呪術廻戦』(TBS系)の五条悟だろう。アニメが放映されるたびにTwitterでトレンド入りするほどの超人気作となった『呪術廻戦』の中でも、圧倒的な人気を誇る五条を演じているのも中村だ。
「六眼」という特別な目と「無下限術式」という無敵に近い術式を持つ五条は、「僕 最強だから」と公言してはばからず、そして実際周囲も認める最強術師である。その姿も長身で目隠しを外せば碧眼の美形という、ビジュアルも中身も設定てんこ盛りのチートキャラだ。普段の軽薄な振る舞いと、本気を出した時のギャップが五条の魅力の一つだが、この振れ幅を中村は見事に表現している。
中村は声優活動だけでなく、2020年にはフリーライターのマフィア梶田と組んだYouTubeチャンネル『マフィア梶田と中村悠一の「わしゃがなTV」』を開設。先日、梶田と交流のある星野源がゲストで登場したことでも大きな注目を浴びた。構成作家に『ポプテピピック』など手がける漫画家の大川ぶくぶを迎えているほか、スタジオやスタッフも揃え、単独で運営する手作り感のあるチャンネルではなく、しっかりとした「番組」として作り込まれているのが特徴だ。投稿動画はゲーム実況や開封動画が中心で、もともとゲーマーとして有名な中村の趣味と特技を活かした内容となっている。トークと仕切りの上手さも発揮されているので、声優の中村悠一しか知らない人も、ぜひ一度チャンネルを覗いてみてはどうだろうか。
動画やラジオなどで飄々としたイメージの中村だが、過去には自身を「執着がないタイプ」と分析している(※1)。作品ごとに違った役を演じる声優という仕事において、こだわりは時に邪魔になる。声の持ち味は生かしつつ、柔軟にキャラクターに寄り添っていけるところが、長く、幅広いキャラクターを任されてきたゆえんなのかもしれない。これからもぜひ“おいしい役”をかっさらって、世の中を魅了していってほしいものだ。
※1:https://www.cinemacafe.net/article/2017/02/03/46795.html
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。Twitter(@erio0129)