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アカデミー賞長編アニメ映画賞を予想 『鬼滅の刃』『音楽』など日本作品の評価は?

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リアルサウンド

 第93回アカデミー賞のノミネート作品が3月15日に発表されるにあたり、長編アニメ映画賞部門にエントリーされた日本のアニメ6作品の結果に注目が集まる。日本からは、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』『アーヤと魔女』『音楽』『ルパン三世 THE FIRST』『きみと、波にのれたら』『泣きたい私は猫をかぶる』がエントリー。まず、ノミネートされるには、期限までに米国内での公開という規定を満たす必要があり、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が、米フロリダ州マイアミの劇場1館で限定上映されている。日本のアニメ映画の受賞の可能性について、映画評論家の小野寺系氏に話を聞いた。

「アカデミー賞の長編アニメ映画賞部門は、2001年から始まっているので、アカデミー賞の各部門の中では歴史が浅い賞といえます。これまで受賞した19作品は、ディズニーかピクサーの作品を中心に、アメリカで製作されたものがほとんどです。例外は、2003年に受賞した『千と千尋の神隠し』と2006年に受賞したイギリスの『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』の2作のみ。日本の作品や、日本のスタジオが主導的に製作したアニメ映画が過去にノミネートされたのは、受賞した『千と千尋の神隠し』 以外では6例(『未来のミライ』『レッドタートル ある島の物語』『思い出のマーニー』『かぐや姫の物語』『風立ちぬ』『ハウルの動く城』)に過ぎません。そもそもアメリカ国外の作品がノミネートされること自体が難しかったんです。今回、日本からは6作品がエントリーしていますが、その中で1本ノミネートされたら快挙だといえるくらいの感覚だと思います」

 日本のエントリー作品の中からの有力候補について、小野寺氏は『音楽』を挙げる。

「6つの作品の中だと、先日第45回オタワ国際アニメーション映画祭のグランプリを獲った『音楽』がノミネートされる可能性が高いのでは。ロトスコープという、実写をなぞって描いたアニメなので、他の作品と比べて制作の手法が珍しいという点で注目が集まりそうです。長編アニメ映画賞は、2018年まではアカデミー協会の中のアニメを専門に担当する支部が選定していましたが、2018年からアカデミー会員である監督や俳優など映画人たちが選ぶようになりました。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、TVアニメ版からストーリーを引き継ぎ、またTVアニメ版へと続いていく“途中の話”なので、事情に詳しくない映画人もいる中、TVアニメ版から観なければいけないのかという問題や、一つの映画作品として成立していないのでは?という印象を持たれるかもしれず、受賞するにはかなり高いハードルがあると思います。ただ、『鬼滅の刃』は、2020年の興行成績だけで、その年に映画館で上映された、実写を含む映画全体の世界興収において5位にランクインするなど、劇場アニメ作品の中では突出した興行成績が強みとなっています。話題性という点で注目される可能性はありそうです」

 日本からの6作品のエントリーのほか、海外有名スタジオの作品では、ディズニー&ピクサーの『2分の1の魔法』と『ソウルフル・ワールド』、ドリームワークス・アニメーションの『トロールズ ミュージック★パワー』と『The Croods: A New Age(原題)』、カートゥーン・サルーンの『ウルフウォーカー』、アードマン・アニメーションズの『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』などが並ぶ。実際の最有力候補となる作品について、小野寺氏は以下のように語る。

「今までピクサー、ディズニーの作品が選ばれてきた傾向からすると、大本命は『ソウルフル・ワールド』になるでしょう。前哨戦である第78回ゴールデングローブ賞でアニメ映画賞を受賞したことも大きいですし、ピクサーの製作における代表となったピート・ドクターが監督を務めているという事情などから、同スタジオが『2分の1の魔法』よりも『ソウルフル・ワールド』を推してくる可能性が高い。また、手描きの風合いを3DCGに組み合わせることで、洗練された独自の表現を達成した『ウルフウォーカー』も有力作品といえます。そして、昨年『パラサイト 半地下の家族』が作品賞に輝いたこともあって、これまでノミネート自体が難しかった、日本以外のアジアのアニメ作品にも注目が注がれ始めていると感じます。その意味では、アメリカと中国で共同製作した『フェイフェイと月の冒険』にもチャンスがありそうです」

 エントリー作が正式にノミネートされるのは、長編アニメ映画賞部門では5作品。『鬼滅の刃』はまた奇跡を見せてくるのだろうか。一種の春のお祭りとしてこの行方を楽しみたい。