『アノニマス』香取慎吾とシム・ウンギョンが対峙 “SNSにおける正義”を考えるきっかけに
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「SNSのネット炎上のような、みんなで一斉に叩くやり方じゃ、見えない真実もあるんだ」
SNSの誹謗中傷問題に真正面から向き合った『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)が、ついに最終回を迎えた。しかし「完結」と、ひとことに言い難いものが残る。それは現実社会においても、まだ正解が見えていない問題だから。私たちも、私たちなりの正義を探し続けなければならないのだと、改めて感じるラストだった。
正義の暴走が、真実を見誤らせる
万丞(香取慎吾)の元相棒・倉木(シム・ウンギョン)は、正義感の強い刑事だった。真相を突き止めるために、万丞とぶつかり、それでも屈することなく自らの足で容疑者を追いかけるような……。しかし、その堅い正義感ゆえに、2年前の事件で警察組織から裏切られたことを知り、心がポッキリと折れてしまったのだろう。
心神喪失を装いながら、警察を私的制裁を下す準備を続けてきた倉木。サイバー犯罪の容疑者にもなりうる技術を持った協力者・春川(柳俊太郎)と共に、警察内部のサーバーにアクセスし、情報を集めていく。
その捜査方法は、かつての倉木とは真逆のスタイル。事件の当事者と会うこともなければ、調書に記載されていない様々な事情までは知ることはできない。その様子は、まるでタイムライン上に流れてくる情報だけを鵜呑みにしてしまうネットユーザーと同じだ。
“集合知こそが警察に変わる新しい時代の正義になる”。そう倉木は信じて疑わなかったが、その狭い視野こそが「正義の暴走」の正体。真実を見誤ったと気づいたときには、取り返しがつかないことになってしまうのだ。
死んで良い人間なんて、1人もいない
2年前の証拠を捏造したのは、城ヶ崎刑事部長(高橋克実)によるものだと突き止めた倉木。これまで収集してきた警察の内部情報を全てWebサイト『裏K察』上で晒すと、一斉に城ヶ崎叩きが始まった。
動画配信者は再生回数欲しさに城ヶ崎の家族を執拗に追いかけ回し、ネット上ではアノニマスの正義に加担しようと個人情報を晒す動きも。そして、ついには城ヶ崎が家族を守るべく、自ら命を絶つ選択をする悲劇が起こる。
城ヶ崎の自殺のニュースを聞いても、ネットユーザーたちの反応は、さも「死んで当然」という声が多数上がっていた。誰かを追い込んで一斉に叩き、命を奪われても心が動くことはない社会。これが「新しい時代の正義」と言えるのだろうか。この光景は、現実の私たちが生きる日本と、“ほんの少し”ズレただけの世界線だと思うとゾッとする。
以前、万丞はこう叫んだ。「俺たちがネットの情報に安易に乗っかっていいと思ってんのか」と。その信念を貫くべく、対面の捜査を続ける。城ヶ崎の家族と向き合い、彼の遺書の向こう側にある本音に寄り添いたいと願った。そして、城ヶ崎も駒の1つに過ぎなかったこと、さらにその先に黒幕がいたことを突き止める。
ネットの可能性を握るのは、私たち
万丞とアノニマス(倉木)の真っ向勝負は、対面vsネットの投影でもある。圧倒的な優位に絶つのは、今の時代どうしたってネットだ。コツコツと足を使って集める情報にくらべて、1つのツイートで寄せられる情報の方が圧倒的に多い。今やネットで、どんな情報でも手に入るのではないかと錯覚しそうになるほど。
しかし実際には、ネット上やデータベースにアップされていない真実が、たくさんあるということ。権力を持ってねじ伏せられた事実が、墓場まで持っていこうとした覚悟の思いが、この人にならと託すことができる本音が……そして、アップするほどでもない小さな幸せが、私たちの生活には渦巻いているのだから。
対面がネットでは知り得ない真実を見つけ出せるように、一方でネットが対面以上の温かみを生むこともある。オンエア時には「#アノニマス最終回」がTwitterのトレンド入りを果たしていた。プラスにも、マイナスにも、爆発的な影響力を持つネットと、私たちはどう向き合っていくべきか。主演の香取自身の呼びかけもあり、多くの人がこのドラマを見て、改めてSNSにおける正義について考えることができたのではないか。
倉木は「私は諦めません。ネットの未来には、その可能性がある。私は、私なりの正義を探し続けます」と言い残して姿を消す。それを聞いていた万丞も「俺も、俺なりの正義を探し続けるよ」とつぶやく。
倉木も万丞も同じように傷を負った。それは、対面とネットがどちらかを打ち負かすのではなく、新しいテクノロジーを前に摩擦を生じながらも、「何が正義か」を絶えず模索していくことを表しているのだろう。
その模索が続く限り、アノニマスは何度でも生まれる。願わくば、このドラマが抑止力となって指殺人のない世の中になってほしい。もちろん、ドラマの続編となれば大歓迎だが。
■放送情報
『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』
動画配信サービス「Paravi」「ひかりTV」にて配信
出演:香取慎吾、関水渚、MEGUMI、清水尋也、山本耕史 シム・ウンギョン(特別出演)、勝村政信ほか
監督:及川拓郎、湯浅弘章、大内隆弘
脚本:小峯裕之、玉田真也、入江信吾
音楽:山下宏明、丸橋光太郎
主題歌:香取慎吾「Anonymous (feat.WONK)」(WARNER MUSIC JAPAN)
オープニングテーマ:アイナ・ジ・エンド「誰誰誰」(avex trax)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:濱谷晃一(テレビ東京)、北川俊樹(テレビ東京)、合田知弘(テレビ東京)、稲垣護、佐藤満、高橋潤
制作:テレビ東京/ギークピクチュアズ
制作協力:ギークサイト
製作著作:「アノニマス」製作委員会
(c)「アノニマス」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/anonymous/
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