藤原竜也が背負う“青”の意味 『青のSP』が示した学校の“あるべき姿”
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「香里は警察が嫌いだった。人を疑う仕事だから。学校ってところは本来そういう人間がいちゃいけない場所なのかもな」
『青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系)最終話では、香里(明日海りお)の死の背後にある一連の事件がついに決着した(以下、ネタバレを含む)。
1年前に起きた元美術教師の岡部(遠藤雄弥)による涌井美月(米倉れいあ)への暴行未遂事件は、美月と尾崎香澄(鈴木梨央)によって仕組まれたものだった。美月と佳澄は同じ大学を志望していたが、美月の家は経済的に余裕がなく父親は進学に反対。美月は授業料を得るために、佳澄と協力して岡部に自分を襲わせ、慰謝料を巻き上げようとしたのだった。
校長の木島(高橋克実)は、事件を表沙汰にしないという条件で退職した岡部に慰謝料を払わせた。真実を知ろうとした香里は木島の指示によって自転車のワイヤーを切られ、階段から転落して亡くなった。1年後、香里の死の真相を追う隆平(藤原竜也)は、スクールポリスとして赤嶺中に潜入。捜査を重ねる中で岡部の関与が発覚する。全てを失った岡部は木島を襲い、なおも美月と佳澄に復讐するために赤嶺中に乗り込む。
夢のために手を汚すしかないと訴える美月と佳澄を、隆平は「御託を並べるのもいい加減にしろよ」と一喝する。「自分たちさえ良ければ、他人の人生はどうでもいいのか?」。岡部や木島を犯行に走らせ、香里を死に追いやったのはまぎれもなく自分たちなのだと言い聞かせる。香里が美月を気にかけていた理由も明らかになった。裏口入学に嫌気が差し、大学に入り直した香里は「ズルして手に入れたものなんて何の値打ちもない」という教訓を伝えたかったのだ。
隆平の身を挺した活躍によって事件は解決した。「あの子たちに守る価値はあった?」と尋ねる香里に笑顔でうなずく隆平。ただし、それは必ずしもスクールポリスが必要であることを意味しない。『青のSP』が伝えようとするメッセージは、学校を警察のコントロール下に置くことではなく、むしろその逆である。学校は本来、生徒と教師が人格的な触発を通して学び教え合う場所だ。そこに実力行使する警察の入る余地はない。「スクールポリスが必要のない学校を作っていきたいです」という涼子(真木よう子)の言葉は、学校のあるべき姿を示していた。
出演者とスタッフについて触れておきたい。藤原竜也を中心に真木よう子、山田裕貴のトリオと、宝塚退団後初のドラマ出演で香里を好演した明日海りおが作品の軸を担い、名バイプレイヤーを揃えた職員室は終始、安定感があった。カンテレが制作を担当する火曜夜9時枠の充実ぶりを象徴するようなキャスティングだった。
生徒たちも米倉や鈴木のほかに、池田優斗や鈴木悠仁らが各回のメインで個性を発揮した。特に、真田一樹役の中川翼と三村翔子役の吉柳咲良は全話を通じて隆平のパートナーとして活躍。中川は第1話で衝撃の逮捕シーンを演じたのち、最終話でも岡部に挑みかかるなど、キレのよい演技で話題をさらった。実は、中川は映画『僕だけがいない街』で藤原演じる悟の少年時代を演じていた(同作には、鈴木梨央も雛月加代役で出演している)。未来の名優に出会える学園ドラマの醍醐味が本作には詰まっていた。
警官の制服、若さの象徴、愛する人を失った悲しみ。青が意味するものはさまざまだが、生徒たちと全力で対峙する隆平の正義感こそ、この色にふさわしいように思える。青空のような可能性を秘めた10代と真摯に向き合う限り、大人たちも青さを失わずに生きていくことができるのだろう。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
『青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:藤原竜也、真木よう子、山田裕貴、泉澤祐希、たくませいこ、渋谷謙人、智順、兒玉宣勝、金沢雅美、音尾琢真、石井正則、須賀健太、遠藤雄弥、明日海りお、峯村リエ、升毅、山口紗弥加、高橋克実
脚本:大石哲也、山岡潤平、小島聡一郎
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:河西秀幸、国本雅広、高橋史典
演出:国本雅広、白川士、高橋貴司
制作:カンテレ、ケイファクトリー
(c)カンテレ
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