誌面からスクリーンへ 玉城ティナや八木アリサなど『ViVi』出身女優の目覚ましい活躍
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このところ雑誌『ViVi』モデルが映画やドラマへ出演し、女優として転身するケースが多くみられる。振り返ってみれば、佐久間由衣やトリンドル玲奈、水原希子なども元は『ViVi』モデルだ。雑誌面を華やかに彩ることと、スクリーン上で表情や感情の動きを見せることとは、また違った手法の違いがあることだろう。近年とくに目覚ましい活躍がみられるのは、玉城ティナと八木アリサ、そしてemmaだ。
玉城ティナは、講談社主催のアイドルオーディションで「ミスiD2013グランプリ」を獲得。その後2012年10月号から『ViVi』の専属モデルを担っている。アメリカと日本のミックスである彼女は、誰もの目と心を惹きつけるその容姿を最大限に活かし、モデルだけではなく女優としても活躍の場を増やしていった。2014年『ダークシステム 恋の王座決定戦』(TBS)にて女優デビュー。その後、2018年の『わたしに××しなさい!』(MBS/TBS)や2020年の『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(MBS/TBS)などで主演を務めるなど、着実に経験を積んでいる。
記憶に新しいのは『極主夫道』(読売テレビ・日本テレビ系)で見せた、つっけんどんで無愛想なカフェ店員の役だろう。玉木宏らが演じる眼光鋭い極道たちが来店しても、怯えることなくカジュアルに突っかかっていく様子は見ていて爽快。第2話でスペシャルパフェを頼んだ龍(玉木宏)に対し「その顔でいつもパフェ、ウケる」と軽口を叩いたり、スマホを持って逃げてしまった雅(志尊淳)を追いかけながら「あの金髪、ヤバみの極みの金髪だな」と独特の語彙を披露したり。決して目立つ役どころではないが、作品に色を添えるスパイス的存在として際立っていた。
映画では『暗黒女子』(2017年)や『地獄少女』(2019年)などが代表作。この二作品とも、玉城ティナの日本人離れした容姿がスクリーン上で大いに映えている。『暗黒女子』は終始ダークな学園モノで、玉城ティナが演じたのはブルガリアから来日した留学生。端正な表情で花壇を踏み荒らしたり、人形にハサミを突き立てたりする演技は実に鬼気迫っていた。
『地獄少女』ではスクリーンに映る総時間こそ短いが、要所に入れ込んでくる原作お馴染みの「いっぺん、死んでみる?」のセリフをものにしている。表情の乏しい役が妙に上手く、どこかサイコパス味があって薄ら寒くなるほど。感情の薄いアンドロイドのような役から、『極主夫道』のようなカジュアルな役まで幅広い。
同じく『ViVi』モデル出身の女優として、八木アリサもぐんぐんと露出が増えている。父がフランス人、母が日本人の彼女は2008年に雑誌『ニコラ』の専属モデルとして活動開始。『ViVi』専属モデルとなったのは2011年からで、2016年には同誌の表紙を飾った。
女優としてのキャリアをスタートさせたのは、『左ききのエレン』(MBS/TBS)にて。少々癖の強いモデル・女優の役を演じ話題となった。神尾楓珠演じる朝倉光一や池田エライザ演じるエレンとも臆することなく正面からぶつかり合う。飄々とし、何を考えているのかわからない役どころは、雑誌モデルから女優として転身しはじめたばかりの八木アリサ本人と、妙にリンクして見えるのが印象的だった。まだ名の知れ渡っていない表現者。そこはかとない引力を感じ、画面にもそのままの魅力が惜しげもなく映し出されていた。
ドラマに限らず、映画でもその引力は変わらない。『花束みたいな恋をした』(2021年)や『太陽は動かない』(2021年)など、次々と話題作に出演。坂元裕二脚本・土井裕泰監督の『花束みたいな恋をした』では、菅田将暉演じる麦の学生時代の仲間を演じた。主要キャストではなくスクリーンに映った時間も短いが、艶のある表情や声音は確実にある種の“怖さ”を感じとらせるものだったろう。「気に入った男をとられるかもしれない」という類の女だけがキャッチする、本能に語りけてくる恐怖だ。
端正な容姿や長身を活かした役が多い印象だが、映画『太陽は動かない』で演じたのはごく普通の大学生役。抗争に巻き込まれ、父親とともに生死の境を彷徨うことになる難しい役どころだった。沈みかける船に丈夫な鎖で固定され、猿ぐつわも噛まされて絶体絶命の状況。悲壮感ただよう表情から一転、命を助けられた喜びを一瞬で表現してみせた。まだまだ演技の経験は積み始めたばかりといったタイミングだが、これからスクリーン上で姿を見る機会も増えてくることだろう。
玉城ティナや八木アリサと比較すると演技経験は少ないが、モデルのemmaも同誌出身の女優として徐々に存在感を強めている。KANA-BOON「フルドライブ」やKing Gnu「あなたは蜃気楼」などのPVに出演するほか、配信ドラマ『妖怪人間ベラ』で主役のベラを演じるなど、少しずつ露出が増えている。雑誌モデルデビューを果たしたのは2013年『装苑』。その後『NYLON JAPAN』や『JILLE』などで紙面を飾り、2014年に『ViVi』専属モデルとなった。約7年間もの間活躍し、2021年3月23日発売の『ViVi』5月号をもって専属モデルを卒業する彼女はイギリスと日本のミックスであり、そのノーブルな印象の佇まいは、紙面だけではなく画面上でも映える。
KANA-BOON「フルドライブ」PVでは、二人の男性に追い求められる女性を演じたemma。蛍光色をベースにした花柄のボトムスに蛍光ピンクのカーディガンが目を引く。全力で走り、追いかけられる手からギリギリのところで逃れ続ける疾走感は、曲と合わせるとさらに清々しい。終盤にはアクロバティックな一面もみられ、彼女のアクション作品への可能性も垣間見える仕上がりだ。また、King Gnu「あなたは蜃気楼」のPVでもemmaは表情で我々を魅了する。怪しげなバーに臆することなく入っていく様子、黄色のヘッドプロテクターをつけて戦い勝利した笑顔。凛とした風貌と意思の強さが見え隠れする目線が妙にマッチしている。そこに無邪気さや奔放さも感じることから、どんな作品に出演しても画面の奥行きを広げる女優として成長していきそうだ。
現在彼女の出演作品は配信ドラマ『妖怪人間ベラ』並びに映画『妖怪人間ベラ』(2020年)のみに留まっている。ほとんど声を発することのない役だが、妖怪としての感情や憤りを無表情のまま表現しなければならない難しさを乗り越えてみせた。emmaの綺麗に整った横顔を見ていると、行き過ぎた美しさはどこか恐怖や不安の元になるのかもしれないとさえ思えてくる。
モデル出身の女優は、もはや珍しくはなくなった。『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)や『嫉妬』(テレビ朝日系)など、各ドラマで名バイプレイヤーとなりつつあるトリンドル玲奈。『監察医 朝顔』(フジテレビ系)や『“隠れビッチ”やってました。』(2019年)で主演を務めたほか、津村記久子原作で話題となっている映画『君は永遠にそいつらより若い』(2021年)でも主人公を演じる佐久間由衣。映画『ヘルタースケルター』(2012年)や『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017年)で鮮烈な印象を見せつけた水原希子など、モデルと女優の境界線はどんどん薄くなっている。この先、誌面とスクリーンともに、彼女たちだからこそできる表現がみられることを楽しみにしている。
■北村有
平成元年生まれフリーライター。
2018年独立後、キャリア関連記事やドラマ・映画記事、インタビュー記事を中心に執筆。Twitter
■リリース情報
『極主夫道』4月21日(水)Blu-ray&DVD発売
【Blu-ray BOX】
価格:29,040円(税込)
4枚組(本編3枚、本編(最終話)+特典映像1枚)
カラー/ステレオ/リニアPCM/片面1層/16:9<1080i High-Definition>
【DVD BOX】
価格:23,595円(税込)
6枚組(本編5枚、特典1枚)
カラー/ステレオ/ドルビーデジタル/片面1層/16:9ビスタサイズ
<特典映像>
●メイキング
●各種PR番組
●公式SNS動画集
※仕様・内容は予告なく変更となる場合あり
出演:玉木宏、川口春奈、志尊淳、古川雄大、玉城ティナ、MEGUMI、安井順平、田中道子、白鳥玉季、中川大輔、片岡久迪、水橋研二、本多力、新津ちせ、橋本じゅん、滝藤賢一、稲森いずみ、竹中直人
原作:おおのこうすけ『極主夫道』(新潮社『くらげバンチ』連載中)
脚本:宇田学ほか
監督:瑠東東一郎ほか
チーフプロデューサー:前西和成
プロデューサー:中山喬詞、小島祥子、清家優輝(ファインエンターテイメント)
共同プロデューサー:池田健司(日本テレビ)
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:読売テレビ
販売元:読売テレビエンタープライズ
発売元:バップ
(c)おおのこうすけ/新潮社・読売テレビ