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杉咲花×トータス松本、息を呑む約8分間の芝居 『おちょやん』親子の対面があまりに悲しい

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リアルサウンド

 『おちょやん』(NHK総合)第15週「うちは幸せになんで」が月曜から火曜、水曜と日々凄みを増していってる。

 縁を切った相手とは言え、千代(杉咲花)にとってテルヲ(トータス松本)は実の父親。鶴亀家庭劇にとって大事な初の取材中に、稽古場の外でテルヲが借金取りに殴られている。なくならない借金、取材への迷惑、どこまでも邪魔でしかない……けれど、黙って見過ごすわけにはいかない。そんな葛藤する気持ちが、千代の頬を流れる一筋の涙には表れていた。

 木曜に当たる第74回は、オンエアの15分間の内、その約半分(8時8分から15分まで)が警察署の接見室での千代とテルヲ2人の長芝居となる。千代の前ではあほな父親でいるテルヲだったが、一平(成田凌)や千之助(星田英利)、岡安、福富の面々にまで「よろしゅう頼んます」とテルヲは頭を下げて回っていた。それはまるで人生残り少ない自分がせめて千代にできる、最後の罪滅ぼしかのように。千代が面会にやってきたのも、宗助(名倉潤)から娘を思うテルヲの気持ちを聞いていたからだった。シズ(篠原涼子)から「悔いだけは残さんようにしなはれや」と言われていたこともきっとあるだろう。

 それでも千代の心は冷めきったままだ。憎いや嫌いをとっくに通り越した感情。千代の後ろ姿からゆっくりと引いていき、物々しい接見室の全体を映した画が、冷たく張り詰めた空気を痛いほどに伝えている。逮捕の時から他人の振りをして千代に迷惑をかけまいとしてきたテルヲだったが、こんなことをしても何の償いにはならないと告げ帰ろうとする千代に一言だけと本音が溢れる。

「わいとサエのもとに生まれてきてくれて、ほんまおおけにな」

 そう話し始めるテルヲはやがて、千代を奉公に出した“あの日”を後悔していると告げる。最も許せないのは自分自身だと。その言葉を千代は背中で受け止め、むせび泣く。時折、宙を見上げ、ため息を吐き、下唇を噛みしめながら。テルヲは千代に「どうか幸せになってくれ」など、到底言える立場ではない。みつえ(東野絢香)が千代を思って話す“普通の幸せ”も、テルヲのこれまでの悪行がなければとうの昔に手に入れていたのかもしれない。ヨシヲ(倉悠貴)が千代を恨んでいるのも“あの日”があったからだ。金網越しに怒りをぶつける千代と、手を合わせて必死に「堪忍や」と謝るテルヲ。これほどまでに悲しい親子の対面があっただろうか。

 テルヲの償う気持ちを聞き、千代の心には「お母ちゃん……うちどないしたらええ?」と迷いが生まれている。許せない、憎い……けれど、の先にある答えは。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00~8:15、(再放送)12:45~13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30~7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/