伝説的演劇ユニット“綾ベン企画”の舞台をWOWOWがドラマ化！
『WOWOWオリジナルドラマ　川のほとりで』特集　

綾⽥俊樹×ベンガルの舞台“綾ベン企画”の最強タッグが再び！
『閉鎖病棟－それぞれの朝－』の平⼭秀幸監督がオリジナルドラマ化

映画においては、元祖・名バイプレイヤーズと呼んでいい存在。劇団・東京乾電池の綾田俊樹とベンガル。このふたりは、綾ベン企画という演劇ユニットを結成して、既に20年以上が経つ。彼らの近作「川のほとりで3賢人」をベースに、まったく新たなオリジナルストーリーで紡ぐのが、『WOWOWオリジナルドラマ　川のほとりで』だ。

トシちゃんとBB。対照的な性格ながら、名コンビのホームレスふたりを主人公に、多摩川のほとりで暮らす人々の悲喜こもごもを、じんわり胸に沁み込んでくるエピソードを通して描く。オフビートにして、痛快。すっとぼけていながら、情に厚い。愉しさと哀感が絶妙に入り混じった人間模様に、気がつけば癒されている。

全6話の監督を務めたのは、舞台「川のほとりで3賢人」も手がけた映画監督、平山秀幸。『閉鎖病棟－それぞれの朝－』をはじめ、数々の名作を世に送り出してきた平山監督が、綾田俊樹とベンガルのコンビならではの妙味を引き出し、ありそうでなかったハートフルな世界を創り上げている。

何もないような暮らしの中から見えてくる、大切なもの
今の時代だからこそ見るべき人生讃歌！

トシちゃんも、BBも、「自活するホームレス」という誇りを抱いて生きている。そんなふたりの生活様式が、朝から夜まで、しっかり具体的に描写される。知られざるホームレスの世界は情報性も高く、興味深い。

だが、それ以上に、河川敷で暮らす人々の人間模様が、心を打つ。世俗を捨て、あえて極限のシンプルライフを選択した人たちの喜怒哀楽には、まわりくどい建前はないけれど、かけがえのない奥行きがある。自分の過去は決して語らないからこそ、キャラクターそれぞれの人間性がニュアンス豊かに浮かび上がってくる。

何もないような暮らしの中から、大切なものが見えてくる。より素直に。より繊細に。限られた人生という時間を、満喫していこう。なぜか、そんなふうに思えてくる。激しさも、ドラマティックさもないが、だからこそ伝わってくるものがある。

河川敷の生活にスパイスを加える豪華な役者陣と
バラエティ豊かな脚本家たち

一話完結方式で、毎回、多彩なゲストが登場。トシちゃんとBBと交流し、それぞれ異なるテイストのエピソードを盛り上げる。

ホームレスに取材する小劇団の若い女優に扮した成海璃子が幕開けを飾り、観る者を『川のほとりで』ワールドに鮮やかに誘えば、続くepisode2には小泉今日子が登場。誇大妄想？と思われる謎の女性ホームレスを体現、スラップスティックでアバンギャルドな魅力で主人公たちを翻弄する。

名優、岸部一徳が河川敷のリーダーを演じる回は、しみじみとした人情劇で思わず落涙。長塚圭史が脚本を手がけ、山田裕貴が謎の青年役で出演するepisode5は幕切れも鮮やかで、人生の機微に富んでいる。

最終話のepisode6は、平山秀幸監督自らシナリオを手がけ、それまでの物語がすべて集うような“同窓会”的な展開。大御所女優、倍賞美津子の降臨もフィナーレにふさわしい。その一方で、綾田俊樹とベンガルだけで繰り広げる、シンプルで挑発的、野心的な回もあり、各話ごと、見逃せない作りになっている。舞台感覚と映像ならではのニュアンスが見事に融合した全6話の世界は、やみつきになること間違いなし。はやくもシーズン2を期待したくなる出来映えだ。

TEXT：相田冬二