『知ってるワイフ』心温まるラストに 大倉忠義演じる元春への“もやもや”が“学び”に変わる
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どん底の人生から、再び過去に戻った元春(大倉忠義)は、「一人で生きていく」という新たな選択をしていた。しかしひょんなことからまた、縁のあった人々と出会ってしまう。『知ってるワイフ』(フジテレビ系)最終話では、元春がやり直した世界でそれぞれの人たちが幸せを掴む。本当に失いたくないものについて考えさせられる作品となった。
澪(広瀬アリス)や沙也佳(瀧本美織)を不幸にしてしまったことに責任を感じた元春は、過去に戻ると部屋から一歩も出ずに、澪や沙也佳を避けて過ごす。その甲斐あって、2020年に戻ってからは勤め先も変わり、澪と遠く離れた関西で生活をしていた。しかし偶然、東京への出張が決まり、久しぶりに街を訪れると、なぎさ(川栄李奈)が澪と友達でいないかを確かめるために木田(森田甘路)の元を訪れることに。さらにそこでは偶然、沙也佳とも出くわしてしまった。だが、元春は沙也佳からのアプローチをかわし、事なきを得る。いつもの公園で再会した小池(生瀬勝久)の話を聞くことで、元春の心は少し揺れ動くのだった。
過去に戻ることで本当に大切なものを“取り戻せた”という小池の元には、愛する家族の存在が。この話を聞いた元春はつい、あおい銀行を見に行ってしまい、あんなに避けていた澪とまたも再会を果たす。さらにこの世界線での澪は、なぜか元春の記憶を失っていなかった。なぜなら澪は、元春がタイムスリップしようとしていることに気付き、後を追ってタイムスリップしていたのだ。
これまで元春は、自分が未来を変えれば環境が変わり、思うような未来が手に入ると思っていた。しかし現実は違う。元春が「人生は選択の連続だ」とラストで語ったように、人生は些細な選択が積み重なって環境を、そして人間関係を作っている。元春はそのことに気付き、最後は“周り”ではなく“自分”を変える選択をした。そしてとうとう澪との「笑って暮らす」家庭を築くことができたのだ。
夫婦の不和を描いたこの作品は、些細なすれ違いや声の掛け方次第で、相手とうまくいかなくなってしまう様子を丁寧に描いてきた。それは夫婦だけでなく、会社、友人、家族においても同じこと。津山(松下洸平)との仲違いも、会社でのトラブルも、こうしたコミュニケーションの些細なズレから始まった。この作品には、今の自分の環境に不満を抱く前に自分の行動を見直そうという教訓も含まれている。そして人はこのことを学べば、大方の未来は自分次第で切り拓けるのかもしれない。最終回では多くの視聴者に、元春を通して感じてきた、もやもやした思いを学びに変えられる瞬間が訪れたのではないだろうか。
新しい世界で、津山は元の奥さんと家庭を築き双子に恵まれている。チェロを続けている沙也佳は、花屋の上原(小関裕太)と出会い恋の予感が。木田となぎさには子供ができ、結婚秒読み状態だ。そして澪の母・久恵(片平なぎさ)の体調は良くなった。元春は自身を“不幸の種”と嘆いていたが、最後には全員が幸せになれる未来を作ることができたではないか。
わかりやすいほどのハッピーエンドだが、心温まるラストはやはり良いもので、観ている者にも幸せな気持ちが満ちていく。より多くの家族が、そして自分自身も暖かく「笑って暮らす」家庭であれるようにと強く願える作品となった。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
木曜劇場『知ってるワイフ』(c)フジテレビ
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:大倉忠義、広瀬アリス、松下洸平、川栄李奈、森田甘路、末澤誠也(Aぇ!group/ジャニーズJr.)、佐野ひなこ、安藤ニコ、マギー、猫背椿、おかやまはじめ、瀧本美織、生瀬勝久、片平なぎさ、
脚本:橋部敦子
編成企画:狩野雄太
プロデュース:貸川聡子
演出:土方政人、山内大典、木村真人
音楽:河野伸
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ