FANTASTICSがレトロな80年代サウンドをプレイバック 今、当時のカルチャーを学ぶ理由
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爽やかな歌声と洗練されたパフォーマンスを特徴としたダンス&ボーカルグループ FANTASTICS from EXILE TRIBEは、LDHのいわゆるJr.EXILE世代の中でも、かなり特異な進化を続けているグループだ。結成後初の単独ホールツアーの頃からメンバー全員による演劇パートを大幅に取り入れており、現在では佐藤大樹の映画・ドラマ出演を筆頭に各メンバー単独でのメディア出演も多く、一人ひとりが個性を発揮。さらに昨年にはメンバー全員による初の主演ドラマ『マネキン・ナイト・フィーバー』も放送され、今年からはFANTASTICSとしてのツアーとは別に舞台『BACK TO THE MEMORIES』が予定されているなど、総合的なエンタテインメント集団としての動きを年々強めている。
そんな中、彼らの最新曲「Play Back」が3月17日に各配信サイトにて配信リリースされた。同曲は先日最終回を迎えた彼らの冠番組『FUN!FUN!FANTASTICS』(日本テレビ系)の主題歌であり、80年~90年のエンタテインメントについて当時のカルチャーを形成したゲストから学ぶという番組内容に連動して制作。前シングルにおいて新境地を開いたシンセウェーブ「High Fever」とラテン調のハードコアテクノ「CANNONBALL」からの流れも汲みつつ、文字通り80年代の世界観を“プレイバック”させるべく、一層レトロに振り切ったディスコサウンドが展開されている。
一聴して真っ先に思い出されたのは、いまだにテレビCMやTikTokなどで耳にする機会の多いDead or Alive「You Spin Me Round」、それと数年前のリバイバルヒットが記憶に新しい荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」だった。あの楽曲全体を通してボーカルと同じかそれ以上に主張するギラギラとした音色は、先に挙げた2曲にも共通するがまさに80年代後半、つまりバブル崩壊前後の日本で流行していたユーロビートのそれだ。
ただ、こうして大胆なまでにレトロに徹した音色の中でも、そこに2人のボーカルが乗ってくると瞬時に彼らの志向する“スタイリッシュ”さが感じ取れるようになるのが面白い。恐らくそこには、跳ねたリズムの中でグルーブを作り出す詞の小気味よい語感と譜割り、そしてやはり2人のボーカリングが大いに貢献している。展開ごとに表情を変える八木勇征の歌声が全体の手綱を取っている中で、時には初のラップパートにも挑戦しながらボーカルラインを心地良い到達点まで連れていく中島颯太の澄んだ歌声。この安定したコンビネーションは、FANTASTICSのパフォーマンスの機軸を作り上げる大きな武器の一つである。さらに言えば、ここに彼らの真髄と言える独創的なダンスパフォーマンスが加わることで、楽曲自体の印象もまた変わってくるだろう。この点は今後の情報解禁が待たれるところだ。
この曲や『FUN!FUN!FANTASTICS』、それに連動した舞台『BACK TO THE MEMORIES』での表現を通じて、華やかだった80年代に時を巻き戻すーーそれは、ただ単に一夜の熱狂に酔いしれるためではなく、あくまで “温故知新”。つまりその先の未来を作り出すためなのだと「Play Back」は歌う。ボーカル2人の歌声をドラマチックに交差させながら〈こうやって僕らの今を/心に刻もう/いつか振り返った時に/鮮やかに/蘇るように〉と歌うCメロは特に顕著な部分だ。つまりこの“今”もまた、いつかどこかの未来における“古き良きあの時代”を成し得る歴史の一部分なのだと、この曲は宣言している。高いパフォーマンス力を有しながら同時にドラマ、冠番組、舞台演劇と一つひとつ柔軟にこなしていくFANTASTICSがそれを示してくれるのは、実に頼もしいことでもある。
今月のホールツアー、4月の舞台、またその後の動きに関しても様々な展開が期待されるところではあるが、まずはこの懐かしいサウンドの中で、FANTASTICSならではの世界観を堪能しよう。
■日高 愛
1989年生まれの会社員。