ライゾマティクスの大規模個展が東京都現代美術館にて開幕 設立から15年の多岐にわたる活動を複合的に展観
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《Rhizomatiks×ELEVENPLAY “multiplex”》(2021)の展示風景
メディアアートのみならず、最先端の広告、エンターテインメントまで、国際的に幅広く活躍するライゾマティクス(Rhizomatiks)。彼らにとって美術館では初となる大規模個展『ライゾマティクス_マルティプレックス』が、3月20日(土)より6月20日(日)まで東京都現代美術館にて開催されている。
ライゾマティクスは2006年に結成されたクリエイター集団。従来のメディアアートの枠を軽々と飛び越え、ハード・ソフトの開発、大学や機関との共同研究なども行い、人とテクノロジーの関係性を追求、多くの人々の心をときめかせる作品やデバイス、建築に広告やショーなど多岐に渡るプロジェクトを手掛けてきた。本展は、設立15周年を迎えるライゾマティクスの活動を新作を含め総合的に紹介するものだ。




床面と壁面を全面プロジェクションされた空間内には、キューブ型のロボティクスとカメラが自動走行で縦横無尽に動き回っている。その空間の手前にあるモニタでは、このロボティクスの動きと、あらかじめモーションデータで取り込んだELEVENPLAYの動きがリアルタイムで合成された映像が流されている。
ライゾマティクスによるARを合成した映像は、Perfumeのパフォーマンスなどで知られているが、本作はその手法をさらに発展させたものだ。

《particles 2021》(2021)は、巨大なレールを転がり落ちるボールの位置情報を正確に取得し、そのボールに向けて正確にレーザーを照射することで空間に像を浮かばせる作品。最先端のテクノロジーを十二分に駆使し、幻想的な世界を作り上げている。
ライゾマティクスは、現在の先端技術を駆使した作品を作るだけにとどまらずその技術の元となる研究を大学や研究機関と共同で行い、自分たちのクリエイティブに必要なデバイスもゼロから作り出している。本展ではライゾマティクスが現在開発中のプロジェクトの紹介や、研究開発中のデバイスも公開している。

《Messeging Mask》は小さな声やささやき声を音声認識できるマスク型デバイス。声をテキスト出力させ、ARやプロジェクションで表示させることで、大きな声を出さなくても共感を増幅させることができる。スポーツ観戦やライブハウスなどで活用されれば、新しい鑑賞体験になるはずだ。

美術館の中庭には、太陽光をエネルギーとして自動走行を行うロボティクスも展示されている。夜間時にはレーザーを照射するという。
そして、これまでに使用してきた機材や、制作したデバイス、過去に制作した映像など公開している。


《echo ware》はセンサや震電子、震電板を備えた服。10m先の物体を震動で伝える機能を持つ。デザインはアンリアレイジによるもの。
ちなみに、本展では、鑑賞者の展示室内の位置情報を取得する実験用デバイスを装着しながら鑑賞することも可能(事前予約制)。展覧会中に取得されたデータは、オンライン展示でビジュアライズされる予定。自分たちが鑑賞することで生まれたデータが、作品の一部になるのは興味深い。

今後の活躍が一層楽しみな彼らの軌跡を一望できる貴重な展覧会、ぜひ足を運び、こころゆくまで楽しんでみてほしい。
取材・文:浦島茂世
【開催情報】
『ライゾマティクス_マルティプレックス』
3月20日(土)~6月20日(日)、東京都現代美術館にて開催
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/rhizomatiks/
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